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やりこみゲーマーはなぜ苦行に挑み続けるのか──「普通に辛いです」それでも縛りプレイに身を捧げる理由【おやつの人インタビュー】

『ロマサガ』を何度もプレイし続けていて飽きないのか

──おやつさんって、控えめに言ってかなりの回数『ロマサガ』シリーズをプレイされているわけじゃないですか。正直なところ、飽きないものなのでしょうか。

おやつ:
 さすがにもう目的なしに漠然とプレイすることはないですね。ただ、いまゲームをプレイする場合は、動画化を見据えてのものなので、その場合は、目的がハッキリ設定されているわけで。そのゴールに向かって進んでいくだけなので、飽きるというのはありません。

──なるほど。縛り条件によってプレイ内容も変化しますし、動画化という目的もあるため、飽きは感じないと。

おやつ:
 あと、みなさんが想像しているほど(『ロマサガ』シリーズを)何回もプレイしてはいないと思います。

──そうなんですか?

おやつ:
 RTAの際には、最初から最後まで走りきる必要があるため、何度もプレイしますが……。

──(食い気味に)いやいや、ちょっと待ってください! 何度もくり返すのは普通ではないと思うんですよ(笑)。

おやつ:
 でも、縛りもRTAもなく普通のプレイはそこまで多くないです。いちばんプレイしている『ロマサガ3』ですら、主人公全員でクリアしていないですから。

8人の主人公からひとりを選び物語がスタートする『ロマサガ3』。
(画像は「ロマンシング サガ3 | SQUARE ENIX システム」より)

──……本当ですか?

おやつ:
 本当ですよ(笑)。8人いる主人公のうち、エレンとモニカでは多分クリアしていないような気がします。

──てっきり『ロマサガ』シリーズはしゃぶり尽くす勢いで遊んでいるのかと……意外でした。

おやつ:
 これは誇張でもなんでもないのですが、とくにシリーズものを投稿している期間は、動画編集に時間をとられてしまうので、ゲームを起動するのは攻略情報の裏取りや編集用素材の撮影くらいです。

 恐らく、ゲームをプレイしている時間より、動画編集や攻略サイトを眺めている時間のほうがずっと長いと思います。

──なるほど。失礼を承知で申しますと、おやつさんのおっしゃる「そこまでプレイしていない」の言葉に対して、脳が理解を拒んでしまっています(笑)。

 ……さて、お話を戻しまして、これまで何度も『ロマサガ』シリーズをプレイしてきたおやつさんが感じる『ロマサガ』の魅力ってどんなところなんでしょうか。

おやつ:
 まず自由度が高く、プレイヤーによっていろいろな進めかたが可能なので、やりこみに向いているところでしょうか。加えて、先人の研究により攻略情報が豊富で、チャート作成や動画編集の際、参考にできる文献も多いんです。

 あとは、主人公が変わったりデバックルームに行けたりなどの、バグがおもしろいのも好きな理由のひとつですね。

──バグですか。本来であればあまりいい印象を持たれることのない要素だと思うのですが、そこも含めて魅力だと。

おやつ:
 そうですね。バグに愛されているゲームだと思っています。

 昨年『ロマサガ3』のリマスター版が発売された際も、発売日に生放送でRTAを走ったのですが、思わぬ現象に遭遇してなかなかクリアできなかったのはいい思い出です。

縛りプレイに興味を持ったのはやりこみレポートやスーパープレイ動画を見て

──続いては、おやつさんが縛りプレイに目覚めた経緯について掘り下げていきたいなと。ゲームの縛りプレイやRTAに興味を持ったのにはどのようなきっかけが?

おやつ:
 大学生のころ、ゲームのやりこみレポートやスーパープレイ動画をまとめたサイトがあって、そこで過去に自分がプレイしたことがあるゲームをものすごい難しい条件を設けたうえでクリアする様を見て、衝撃を受けたことがきっかけです。

 当時、ちょうどレトロゲーを遊んでいたこともあって、こんな遊びかたもあるんだ、自分もやってみようかなと。

──そんな狂人の巣窟のような場所が。恥ずかしながら、いまお聞きしてネットで調べるまで知りませんでした。

おやつ:
 有名なところだと、「庭」とも呼ばれていた「Ultimagarden」が流行っていて、当時やりこみプレイをしている人たちがたくさん集まり、自分のプレイ内容をレポートにまとめて公開していたんです。

──そのサイトで「こんな世界もあるんだ」と知ったあと、おやつさん自身も実際に挑戦してみたんですか?

おやつ:
 はい。公開されていたやりこみレポートを参考に『FF6』の低レベルクリアに挑戦してみました。

(画像はAmazon「ファイナルファンタジー6」より)

──実際にプレイしてみてどうでしたか?

おやつ:
 やりこみプレイじたいが初めてで、慣れていないこともあり、苦労する点も多かったのですが、先人の知恵のおかげでなんとかクリアできました。

──おお、すごい!

おやつ:
 いや、全然すごくないですよ。レポートに詳細な攻略情報がまとまっていたので、本当にそのチャートをなぞるだけでした。

 クリアできたときも、すごいことを考える人もいるんだなあと、実際にクリアできたことに対して驚きの気持ちが強かったくらいです。

──いまでは自身でチャートを作っているおやつさんですが、初めてチャートを作ったのはどのゲームだったんでしょうか。

おやつ:
 自分でオリジナルチャートを作るようになったのは、動画を投稿し始めてからになるんですが、恐らく『ロマサガ3』のTAS動画で、分身剣チャートだったと思います。

 自分で作ったと言っても、完全オリジナルというわけではなく、すでに存在していた分身剣チャートをもとに自分なりに最適化を目指して作ったものでした。

──やはり初めての経験というのは記憶に残りやすいと思うんですが、何か印象に残っていることはありますか?

おやつ:
 完走した感想で言うと、達成感はもちろんありましたが、本当にこれが最速なのかなという想いがまずありましたね。自分が気付いていないだけで、もっと最適化ができたんじゃないかと。

 いま改めて見直すとやはり最適化が甘いですね。その後、また違う分身剣チャートを出したんですが、10分以上タイムが早くなっていたので。

動画作りを始めたきっかけ

──いろいろなお話を根掘り葉掘り聞いてきましたが、最終的には“おもしろい動画を作りたい”信念に行き着きますよね。ここからは、そんな動画作りを始めたきっかけについてお聞きできればと。

おやつ:
 これも大学時代なんですが、単位を取りきって、わりと時間に余裕ができた時期がありまして。その際に、まだYouTubeのサーバーを利用していたころのニコニコ動画で「超絶へたくそマリオ3」という動画を見かけたんです。

 当時はゲームプレイ動画といえば、TAS動画やスーパープレイ動画がほとんどを占めていたんですが、その動画は初心者が『マリオ3』を普通にプレイするものでした。珍しかったのか反響もかなりあって。

 それを見て、これなら自分でもできそうだなと思い、『マリオ2』を普通にプレイした動画を出してみたのが、動画投稿のきっかけでした。

──普通のゲームプレイ動画よりTAS動画やスーパープレイ動画のほうがメジャーというのは、いま現在からすると考えられない環境ですね。そして、おやつさんが普通にプレイしている動画というのも、いまとなっては貴重な映像な気がします。

おやつ:
 いま見返すと、字幕も実況もない、編集もほとんどしていない動画なのですが、当時は普通にプレイする投稿者が少なかったこともあり、最初から数万人の方に見ていただけたんです。

 動画にコメントが流れて視聴者の反応を見られるのが楽しくて、その後も動画を投稿していくようになりました。

──投稿した動画のコメントで視聴者の反応はチェックされるんですね。

おやつ:
 します。みなさんの反応を見るのが楽しい瞬間ですし、つぎの動画を作るうえでのモチベーションにも繋がります。

──おやつさんの投稿動画を時系列で追っていくと、投稿開始からしばらくするとTAS動画が主流となり、その後、縛りプレイ動画へとジャンルが変化していきます。これについては何か理由があるのでしょうか?

おやつ:
 これは自分が作りたいTAS動画をだいたい作り終えたというのが理由ですね。また、TAS動画ではできなかった寄り道要素を入れた攻略やカット編集をはじめとする演出に挑戦してみたくなったというのもあります。

 ただ、PS2のTASにも挑戦しようかと考えているので、今後またTAS動画メインに戻ることがあるかもしれません。

動画作りのうえで影響を受けた人たち

──攻略チャートを作る際にはまず先人の研究を参考にするとおっしゃっていましたが、動画作りのうえで影響を受けた方がいらっしゃったらお聞きしたいです。

おやつ:
 思い浮かぶ方は3人いて、「FF5 モンク縛り」のばけぼのさん、「FF6 極限低歩数攻略」のエディさん、そしてbiim兄貴です。

 ばけぼのさんは、TAS動画で解説するための編集がメインだった当時、こういう編集もありなんだと思わせてくれた投稿者です。

──いま、ニコニコ大百科(詳細はこちら)でどんな縛りか調べてみたんですが、めちゃくちゃえぐい縛り内容ですね……。それこそ工夫の余地が少なく、絵的に地味になってしまうレベルで厳しい縛り内容です。

おやつ:
 そうなんです。縛りの内容じたいはシンプルでテイク数もかなり多いんですが、それを編集でおもしろく見せているんです。

──おもしろく見せる編集という面で影響を受けた方なんですね。

おやつ: 
 エディさんは、「ひたすら楽してFF6」の更新案を提示していただいたこともあり、多大な影響を受けました。

 これにあたり、「エディさんのせいで再走することになった」というコメントもあったのですが、じつは更新の大部分は別のプレイヤーが発見したものだったりするので冤罪なんです。

──冤罪(笑)。

おやつ:
 なんでしたら、エディさん自身も再走することになっているので、ある種、被害者側とも言えます。

──なんて不憫な……ここ、記事にまとめる際にしっかり書いておきます。エディさんも被害者と。

おやつ:
 あ、でも最近は自分からバグを掘り下げて、自縄自縛になっているので、半分くらいは自業自得な部分もあると思います(笑)。

──(笑)。ちなみに一度作った記録が更新されるってどんな気持ちなんでしょう。

おやつ:
 記録は抜かれて当然だと思っていて、むしろ記録を抜いて抜かれて切磋琢磨されていくほうが、そのゲームじたいが注目されていいんじゃないかと思っています。

 ですので、記録更新じたいは嫌な気持ちはまったくありません。逆に、動画のネタを提供してもらえてありがたいくらいです。

──ふむふむ。

おやつ:
 biim兄貴はある意味いちばんお世話になっているかもしれません。biimシステムのレイアウトは使いやすくて、動画を作る際に重宝しています。

 あと、特定の誰かというわけではないのですが、解析情報、やりこみレポートを残してくれた先人たちには感謝の気持ちを伝えたいです。

 私は自分で戦術やバグなどを発見するより、すでに発見されているものを組み合わせて攻略を考えたり、改良したりするほうが得意なので、これらの研究成果がなければ動画を作ることはできませんでした。

安心と信頼のbiimシステム。

苦労している様子もエンタメのひとつ

──TAS動画ではできなかった表現を目指したという縛りプレイ動画、やはり苦労している部分をいかに見せるか、というのが腕の見せどころなのかなと思うのですが。

おやつ:
 そうですね。苦労している投稿者を見たい、その様子を楽しみにしている方もいるでしょうから、エンタメのひとつだと思っています。

──視聴者に苦労している様を見せるためのテクニックってどのようなものがあるんでしょう?

おやつ:
 画面分割がいちばん伝わりやすいと思っています。ただ、「【ロマサガ3】閃きだけで最少戦闘回数クリアに挑戦 」で実際に編集してみたのですが、非常に大変だったので、できればやりたくないです。

ひと目でわかる地獄絵図。

──できればやりたくない(笑)。

おやつ:
 実際のゲームプレイより編集のほうが大変です(笑)。

 分割以外ですと、テイク数を表示するというのもわかりやすく大変さが伝わりますね。ただ、テイク数を数えるのも分割編集ほどではないにしろ大変なんです。でも、見ている方もどのくらいかかったかは知りたい情報だと思うので、こちらを多用しています。

──テイク数が多いと盛り上がりますもんね。動画の編集はおやつさんがやっているんですか?

おやつ:
 はい。編集は自分で全部やっています。

──1本の動画を作るのにどのくらいの時間をかけているんでしょう。

おやつ:
 どのくらい編集をするかで時間は変わってくるのですが、最近投稿した「ひたすら楽してロマサガ3リマスター」ですと、1パートに対して10~20時間くらい編集だけでかかっています。動画1分につき、実時間1時間でできれば早いほうだと思います。

──うひゃーー! そんなにかかってしまうんですね。動画は大変だ……。しかも「ひたすら楽してロマサガ3リマスター」は、週1ペースで更新されていましたから、毎週20時間くらい編集で持って行かれていたという……。

おやつ:
 投稿日が金曜の夜中だったのですが、金曜日に入ってギリギリに完成することが多かったです。おこがましいかもしれませんが、週刊誌に連載中の漫画家の気分でした(笑)。

──いや、もう想像以上に大変な作業ですね。画面分割の編集を入れると、時間どうなっちゃうんです? 

おやつ:
 画面分割に加えて、音MADの編集も加えた「【ロマサガ3】閃きだけで最少戦闘回数クリアに挑戦」のパイロヒドラ戦のパートは、画面分割の部分だけで5時間くらい、MAD全体では20~30時間くらいはかかっていたかと思います。パート10全体で多分60~80時間ぐらいです。ただ、これは特別というか、別物ですね。

 普段の動画作りにおいて大変なのが、ゆっくり解説を入れる作業なんです。文章さえ最後までうってしまえば、あとはだいたいテンプレ化されているので早いんですが、苦手なこともあって文章を考える時間がいちばんかかっていますね。

MAD部分の編集だけでも20~30時間にも及んだらしい。

──解説にそこまでこだわって時間をかけるのには何か理由が?

おやつ:
 自分の書きたいことを書いてしまうと、情報量がギチギチになってしまうんです。そうすると、どこが大切なのか、どこを見ればいいのかわからなくなってしまうので、ときには細かい説明をバッサリ切り捨てちゃうこともあります。

──あえて説明を簡略化していると。

おやつ:
 はい。そのゲームを昔プレイしていて、動画で久しぶりに触れた人でもなんとなくわかる。そのくらいの理解度で楽しめる解説を心掛けています。

「ひたすら楽して」シリーズの生まれ

──“縛りプレイ=苦行という常識を覆す”をテーマに、ゲームクリアを目指す「ひたすら楽して」シリーズですが、やはり、「楽して」という文言と実際の苦行とのギャップを見せるエンタメ的な意図があったんでしょうか。

おやつ:
 ある程度エンタメ性は意識していましたが、シリーズ1作目の「ひたすら楽してFF5」を投稿した当時、並行して投稿していた「【ロマサガ3】閃きだけで最少戦闘回数クリアに挑戦」に比べると、実際のプレイも編集も圧倒的に楽だったのはあります。

あくまでおやつさんの中で、かつ比較級であるが、本当に楽だったらしい。

──比較すると実質楽だったと。確かに『ロマサガ3』ではテイク数100超えの戦闘が当然みたいなところありましたが、「ひたすら楽して」だと、ひと桁だったり戦闘によっては1発クリアできていたり、桁がふたつくらい違いますもんね。

おやつ:
 そうですね。『FF』シリーズは、搦め手のような攻略方法が豊富で、それにハメてしまえばあとは勝利確定にできる戦闘が多いので、本当に楽でした。

──縛り条件を考える段階から「ひたすら楽して」を銘打つ予定でチャートを作っていたんですか?

おやつ:
 じつは、「ひたすら楽して」というタイトルは後から考えたもので、縛りを設ける段階から考えていたわけではないんです。

──そうだったんですか!?

おやつ:
 『FF』のやりこみプレイには多くの先駆者がいらっしゃるので、事前調査の段階でいろいろとリサーチをしていたんです。

 そのなかでもとくに、「極限低レベル攻略」をされていたにゅすけさんのレポートを参考に、「さらにそこからおもしろい条件を入れられないかな」と考えてオリジナリティを出したのが、のちに「ひたすら楽してFF5」と名付けるシリーズの条件設定でした。

──つまり縛り条件を考えているときも、実際のプレイ中も、「ひたすら楽して」という見せかたを思い描いていたわけではないと。

おやつ:
 はい。熟考に熟考を重ねてつけたタイトルではなく、動画制作中にタイトルをつけなきゃなってなったときに、「じゃあひたすら楽してでいってみようか」くらいの感覚でつけたものなんです。

──わりと軽いノリでつけていたとはビックリです。そういえば、パート1冒頭に挿入される嘘字幕OPでの「多分これが一番楽だと思います」は、いまやおやつさんの代名詞でもある言葉になっていますよね。

おやつ:
 ああ、『エースコンバット』の。そうですね、いつの間にかそんな感じに。

──あのOPってなんで作ろうと思ったんですか?

おやつ:
 理由はシンプルで、動画の最初の掴みとしておもしろいネタを入れたいなと思ったんです。

 当時、嘘字幕シリーズが流行っているほどではないですが、一部の界隈では人気で、ルール説明をする際にいい感じの構成だったので組み込んでみました。

見てるだけじゃなくてこっち(動画投稿の世界)にきて

──最近、ちらほら生配信もされていますが、今後は生放送にも力を入れていく気持ちはあるんですか?

おやつ:
 生放送で新しいゲームをプレイしているのは、今後のやりこみ動画を作るため、そのゲームを知るためにやっているところもあります。

──では活動じたいの軸が動画メインというのは変わらないと。

おやつ:
 これまで通りそうですかね。ただ、レトロゲームばかりだといつかはネタが尽きてしまうので、新しいゲームも取り入れていろいろと勉強していきたいと思っています。

 つぎにやろうとしているシリーズが「ひたすら楽してオクトパストラベラー」なんですが、それも生放送でプレイしてみて感触がよかったので動画化しようと思ったんです。

(画像はAmazon「オクトパストラベラー – Switch」より)

──えっ!? つぎのシリーズって『オクトパストラベラー』予定なんですか? それ言っちゃって大丈夫なやつです?

おやつ:
 大丈夫ですよ。『オクトパストラベラー』は周囲の評判を聞いて、やりこみに向いているゲームだとは思っていたんです。でも、どういうゲームか触ってみないことにはやりこみのネタも思いつかないので、生放送でプレイしてみたんです。

──なるほど。いや~~「ひたすら楽してオクトパストラベラー」楽しみです!

おやつ:
 ありがとうございます。じつは「ひたすら楽してオクトパストラベラー」は、biimシステムを使わずに作ろうかと思っているので、私的にも楽しみです。

──ええっ、それって何か理由が?

おやつ:
 biimシステムは、右枠に説明を入れて、下にはゆっくりがしゃべる文章を入れてとテンプレ化されているので、投稿者として楽なんですが、そればかりになってしまうと編集の幅も広がらないので、新しい見せかたに挑戦したいと思っているんです。

──ゲームのやりこみ系の動画ってbiimシステムってイメージが強いので、どんな見せかたになるのか想像もつきません。

おやつ:
 確かにニコニコではbiimシステムを採用している動画は多いんですが、YouTubeではあまりメジャーではないんです。

 視聴者の方の反応も違って、YouTubeは幅広い方が見ているので、ニコニコならもう不文律なネタも「これ何のネタ?」と聞かれることも多いです。

──そういう意味でも新しい挑戦だと。いまのお話も記事で書いちゃって大丈夫ですか……?

おやつ:
 大丈夫ですよ。ほぼ決まっているので。とは言いつつ、やっぱりダメだわってbiimシステムで作っているかもしれませんが(笑)。

──(笑)。では最後になりますが、視聴者の方や縛りプレイの世界に興味がある方に、先駆者であるおやつさんからメッセージをお願いできないでしょうか。

おやつ:
 さきほど申し上げた通り、10分の動画を作るのに編集だけで10時間から20時間かかってしまうくらい、動画を作るのは大変です。

 シリーズものを投稿しているときは、毎週この日までに編集をやらなきゃと締め切りに追われる気分にもなるんですが、それでも完成したものを投稿して、視聴者の方々から反応をいただくことはとても楽しいことです。

 私自身、おもしろい動画を見ることが好きなので、みなさんもぜひ動画を作ってみてください、というのがいちばん伝えたいですね。見てるだけじゃなくてこっちにきていっしょにやりましょうよ、と。

(了)


 レベルを上げない、装備も整えない、ときには自らの行動すら制限する……縛りプレイは普通に辛い。人間であればそう感じるのは当然だ。

 しかし、おやつさんは縛りプレイに挑み続ける。“おもしろい動画”を作るため、視聴者に届けるため。

 そのようにおもしろいを追求しているからだろう。おやつさんの動画は多くの方が視聴し、多くの反応に溢れている。そしてその反応がおやつさんのモチベーションになり、つぎの縛りプレイ動画投稿に繋がっていくわけだ。

 そして、おやつさんは誘う。「見てるだけじゃなくてこっちにきていっしょにやりましょうよ」と。妖精ではない、まるで悪魔の囁きのように。

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