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「上場って何のためにすると思います?」投資家・村上世彰が高校生に説く“経済の回し方”【N高投資部レポート】

 授業が全てオンラインで行われるネットの高校として話題のN高等学校、通称“N高”。

 学校法人角川ドワンゴ学園が運営するN高には、社会や経済の仕組みを実践的に学ぶために、生徒が部活動として株式投資に挑戦する「N高投資部」が存在します。
 「N高投資部」で特別顧問を務める投資家・村上世彰氏は2019年に入部した一期生へ株式投資の運用資金として生徒一人に20万円、総額1000万円を提供しました。今年3月に一期生が投資部を卒業し、4月からは二期生の取り組みが投資部で始まっています。

 5月に新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出ているさなか、村上氏は生徒に向けて、オンライン講義「【N高投資部】村上世彰 特別顧問 講義~投資を始める高校生へ~」を実施。

 講義には一期生もゲストとして登場し、村上氏に「コロナ関連事業への投資」「学業との両立」などの質問を行いました。また、生徒たちに向けて「お金について真剣に考える機会があれば相当勉強になる」「投資の本質はお金を増やすこと」と生徒たちにアドバイスを送りました。

オンライン授業の様子。特別顧問の村上世彰氏(右上)と部員たち。

“投資の本質”って何だろう?

村上:
 生徒さんから質問が来ています。「投資の本質とは何ですか?」。良い質問なんだけど、質問者さんはどんなふうに思っているのかな?

生徒:
 僕としては「企業を助ける」という意味での投資だと感じているんですけど、短い期間で投資をするとなると少し違ってくるのかなと思います。

村上:
 彼は何を言ってくれたかと言うと、「投資は企業を助けるものだよ」という意見ですね。投資について他に意見のある人はいますか? 本質でもなくてもいいんです。 投資とは何なんだろう?

生徒:
 社会の経済をぐるぐる回すための、潤滑剤的な役割なんじゃないかなと思います。

村上:
 なるほど……僕がどう考えているのかと言うと、投資の本質は「お金を増やすこと」だと思っています。少し歴史的な話をしましょう。一番最初にできた株式会社は、オランダ東インド会社【※】と言われています。この会社は、船で商品を輸送するときに大きなリスクをとっていましたから、それに対してお金を募りました。そのお金のおかげで船は商品をたくさん積んでヨーロッパに戻ってくることができたので、会社は商品を高い値段で売ることが出来ました。

※オランダ東インド会社
1602年3月20日にオランダで設立され、世界初の株式会社といわれる。商業活動のみでなく、条約の締結権・軍隊の交戦権・植民地経営権など喜望峰以東における諸種の特権を与えられた勅許会社であり、帝国主義の先駆け。アジアでの交易や植民に従事し、一大海上帝国を築いた。

 そして、その利益について、お金を出した人に配分をしました。でも、航海のたびにお金を募るのは大変だなっていうことで、会社になったんですね。そして、そのお金を会社の株主になった人に分配をしようとして……これが株式会社のはじまりだと言われています。

 投資は「お金を出してどれだけ戻ってくるか」がすごく重要だと思います。でも、自分勝手に投資だけしておしまいっていうことにすると、なかなか社会にお金が回らないので、いろいろなルールができました。

村上世彰氏。

 それが会社法です。日本の会社法というのはドイツを参考にして作っているんですけど、そのうちルールがいっぱいできて、だいたい世界で全部一緒のようなルールになっています。そこにちょっと難しい言葉だけど、コーポレートガバナンス【※】というルールもできた。「株主にはどのようにお金を返すべきか」「経営の委託を受けた経営者はどのように経営すべきか」そういったルールがきちんと決まっていったわけですね。

※コーポレートガバナンス
企業経営を管理監督する仕組み。株式会社の場合、会社の所有者である株主の利益を最大限に実現できているかどうかを管理監督するシステム。

 僕は投資というと、「お金を出して戻ってくる」「そのお金はうまく使われて欲しいな」っていうイメージを持っているんだけど、それぞれどんなふうに考えていただいても結構です。

 今回、皆さんに配った20万円は日本の上場株式への投資に限ればどう使うかはみなさんの自由です。でもやっぱり、増やしてほしいです。きょうは投資部の一期生が5人参加してくれています。5人のうち、一人以外はみんな減らしちゃったんだよね(笑)。ちょっと一人くらいいじめてみようかな……どれくらい減らしたか言ってよ(笑)。

生徒:
 (笑)……12万円くらいです。2019年9月ぐらいまでは調子が良かったんですが、そこからはずっとマイナスでした。

村上:
 申し訳ないけど、今日は悪い例として呼んでいます(笑)。どんな失敗をしたか、みんなに説明して。

生徒:
 あるゲーム会社の株を購入したんです。昨年9月の頭に全額そこに突っ込みまして……その翌日に株価が上がるようなニュースがあったので。でもなかなか購入した株の値段が上がらないわけです。それで焦ってしまって、購入した株を売ってしまいました。自分の気持ちの制御ができていなかったことが、失敗の原因だと思います。

村上:
 もうちょっといじめますね(笑)。同じ会社に投資をして失敗したこともあったよね。なんで何度も同じところに投資したの?

生徒:
 その会社の株主総会に行きたい気持ちがあったりとか、業界が読めてなかったりとか……。僕は投資を個人でやっているので、20万円という資金では株価を動かすことはできません。そういった状況の中で情報を掴めなかった。

 大企業の経営者たちが、自社にどのように資金を投じようとしているのか、また自分たちがどうやって利益を上げようとしているかが想像できなかった。今思えば、それが一番の原因だと思っています。

村上: 
 投資にものすごい時間を使っていたよね。ちゃんと他の勉強をしてましたか?

生徒:
 学校な勉強は……残念ながらあまりしていません(笑)。

村上:
 それはダメですよ(笑)。勉強はちゃんとすること。きちんと勉強をしながら、お金について学べる良いチャンスなので、あまりハマらないでやっていただければと思います。
 投資部では失敗してもいいし、成功してもいい。さっき自分の失敗を話してくれた生徒は、「もうダメかもしれない」って怖がっていたよね。そういう気持ちになってもいい。お金って場合によっては怖いものにもなる。

 僕の周りにいる上場企業の経営者の方でも、何百億円も持っていたのに破産した人が何人もいます。それでも次のチャレンジをしてる人もいっぱいいる。失敗しても何度もチャレンジしてもいいし「お金ってこんなに怖いものなんだ」と懲りてやめてしまってもいいんです。

新型コロナ関連の銘柄に投資するのは難しい?

村上:
 新型コロナウイルス関連に投資したい人はいるかな? 

生徒:
 新型コロナの影響を受けて映像事業が注目されてきているので、それに関係する会社に投資したいなと思っています。

村上:
 もうひとりくらい新型コロナ関連で、こんなことを考えているんですっていう人はいない?

生徒:
 新型コロナ関連で通信系が伸びてくると思います。それこそネットミーティングやクラウドサービスの開発会社あたりに投資できたら面白いと思っています。

村上:
 なるほど。他には?

生徒:
 私の場合は航空機の会社です。たとえばボーイングとエアバスに投資してみたいと思っています。コロナの影響で観光などで移動する人が減ったので、航空会社の株が半分ぐらいに下がっています。これからだんだん自粛が解除されていくうちに株が上がっていくと思ったので。

村上:
 面白いね。でも僕は航空会社が一番生き残りが難しくて、危ないと思うんだけど(笑)。でもいいんです。「下がってるから航空会社の株を買いたい」という人も結構いますから、これは勉強するだけでも面白いと思う。

 今日参加してくれている一期生で感染症にすごい興味を持っている生徒さんがいました。自分が何をどう興味を持ったのか、ちょっと話してくれる?

生徒:
 僕はエボラ出血熱に興味を持っています。中学時代に図書館でピューリッツァー賞の写真を見たときに、彼らを救うことはできないかなって考えて、「投資で儲かったお金は感染症対策に寄付したいんだ」と村上さんに伝えました。

村上:
 僕はとても感動しました。そういう気持ちを持ってもらうことは、ものすごく大切だと思う。他に新型コロナ関係で薬品とか、抗体検査とかワクチンだとかで投資をやってみたい人はいる? 

生徒:
 薬を作ることで注目されている富士フイルムとか、そのへんに投資したいと考えています。日本の新型コロナは落ち着きつつあると思うんですけど、今度はアフリカとか新興国で流行ってくるんじゃないかなと思うんです。そのときに日本の製薬会社が画期的な薬を作って、新興国に薬を輸出すれば、もっと株価が上がるんじゃないかなと思ってます。

村上:
 なるほど。僕はこの一ヶ月ぐらい、新型コロナのことにすごく時間を割いているんですよ。実施されている検査があまりに少ないことが気になっていて、もっとデータをいっぱい取って検証するべきだと思っています。だから、抗体検査ができる機器を東京都に寄贈しました。自分も抗体検査をしましたが、残念ながら抗体はなかったです。自分の会社の人たちにも検査してもらいました。

 東京大学や慶應義塾大学といった大学がこの抗体について研究をしている部分でいうと、東京の0.5%~1%の人の人が抗体を持っているようです。つまり10万人前後が感染したということ。ところが実際に東京でかかっているという人は5000人くらいとなっている。これは数字が合っていないからおかしいと、個人的に思っています。この数字の差をきちんと分析して今後の対策に生かしていくべきで、そこに著しい興味を持っているんです。

 ただ、新型コロナって変異しちゃうんですよ。だから、また新しいコロナが来る可能性があるけれど、そのときのためにどう準備をするか? 今回学んだことを生かせなかったらそのときには国が崩壊してるかもしれない、じゃあどういう検査をしてその数字をどうやって生かすべきなのか……みたいなことは、頭の中でぐるぐる考えています。

 僕は最近、お医者さんとばっかり話しています。抗体検査の機器を寄贈したりしているせいか、いろいろなお医者さんから連絡があるんですよ。そういうわけで、事情に詳しくなっているので新型コロナ関連に投資をすることはむちゃくちゃ難しいんじゃないかと個人的には思っています。でも、社会問題と投資の関係を考える非常にいい機会だと思っています。

「意味のない上場はやめてくれ」村上氏の言葉の真意とは?

村上:
 僕からみなさんに質問です。「上場企業【※】」というものが世の中にはあるけれど、何のために上場すると思いますか? 上場の大きな目的って何だろうか?

※上場企業
株式や債券などの有価証券や商品先物取引の対象となる商品(石油、砂糖など)を取引所(市場)において売買可能とした企業。

生徒:
 企業の資金調達のためです。

村上:
 他には?

生徒:
 信用とか知名度が上がるのかなって思います。あとは上場すると経営が見やすくなるので、世間が注目しやすくなったりするのかなって思いました。

村上:
 ふたりの生徒から「資金調達」「ステータス」というふたつの答えが出ました。では、お金もステータスも十分にある会社は何のために上場しているんでしょうか? たとえばマイクロソフトやソフトバンクは何のために上場していると思いますか?

生徒:
 株主という外部の発言力のある人間を招くことによって、新しい風を吹かすためでしょうか……?

村上:
 それはあるかもしれませんね。ちょっと偉そうな自慢話をさせてください。僕は意味のない上場はやめるべきだと思っています。過去に自分が投資したところに「意味のない上場はやめてくれ」と言って、10社以上は上場をやめています。

 僕はそういう意味のない上場をしている会社に投資をすることが結構あります。みなさんは目立った会社、もしくはここは将来伸びるんじゃないかというところに投資をすることもあるし、バリュー投資もあるかもしれないですね。

 では質問です。意味のない上場をやめて、株主にお金が戻ってきました。株主はそのお金をどうするでしょうか?

生徒:
 他のもっと有力な企業に投資する。

村上:
 そうすると、経済ってどうなるかな?

生徒:
 回っていく……と思います。

村上:
 ある会社に投資して、お金が戻って別の会社に投資する。そこがよくなる、また戻ってくる。僕はその繰り返しが「お金の循環」だと思っていて、これが僕が一番主張していることなんですよ。みなさんは今回僕から20万円をもらいました。その20万円で投資をしますよね。投資をしたらよくなった、売ってまた別のところに投資をする。そうやって、一年間、ぐるぐると投資を続けてくれると思います。

 アップダウンを狙う投資もあるし、短期だったり長期だったり、いろいろとあるけど、投資に色はないので、よく考えたうえでどんなふうにやるかを、ぜひ考えて欲しいと思っています。

村上さんは投資と学業の両立はどうしていましたか?

村上:
 もうひとりぐらい質問いこうかなと思います。

生徒:
 今までの方とちょっと方向性の違う質問になるんですけど、村上さんが学生時代から投資をされていたというのを見て、学業と投資をどういうふうに両立しておられたのでしょうか? 日常生活に投資をどう組み込んでいたのかが気になります。

村上:
 僕にとって投資は本当に好きで好きで仕方がないものなんです。だから、やらなきゃいけないからやるものじゃないんですね。僕は調べることがすごく好きでした。調べると世の中のことももわかってくるし、「だから金の価格は上がったんだ」「だから石油の価格は下がったんだ」みたいなことがわかるとワクワクしてくるのね。

 投資をやることによって学業の時間が圧迫されたというより、投資を中心にして自分の生き方が回ってたのかなと思っています。でも、これをみんなに「同じようなことをやれ」と言うのは酷だと思う。

 楽しみがあって、かつ、それを自分の仕事にできて、勉強もできたほうがいいじゃない。別に今はどこの大学行くっていうのはそんなに重要じゃないけれども、勉強しておくことで基礎知識を得るというか、ひょっとしたら投資を通じて世の中のことをわかり、基礎知識を得られるかもしれない。

 それってすごく意味のあることだと思うので、勉強はちゃんとしながら、ぜひ「投資ってこんなに面白いんだ」「でもこんなに怖いこともあるんだ」「社会ってこんなに面白いんだ」ということが、みんなの中でこの一年間を通じて出てきてくれたら、すごく嬉しいです。

 N高投資部の活動について、「なんでこんなことをするの?」「1000万円損するんじゃないの?」とか言われました。自分にとって、これはビジネスというよりは、社会貢献というか……自分の特別な時間をみんなと共に過ごしながら、いろいろなことが学べると本当に思っています。

 成長しようと、投資に対して結果的にネガティブになろうと、それは構いません。でもお金について真剣に考える機会があれば、相当勉強になると思うんだよね。では、5人いたN高投資部一期生のうち、ただ一人儲けた先輩から一言「勝たなきゃダメだよ」って二期生のみなさんに言ってください(笑)。

生徒:
 投資部を卒業したあとも自分のお金でちょっとやっています。新型コロナで株式市場は結構騒がれていてちょっと探っていたんですけれど、実はちょっと損しちゃっているんです(笑)。いま僕は1、2年後を見越して投資活動をしています。しかし、投資部の皆さんは期間が決まっているものなので、自分が置かれた状況と、新型コロナや社会の状況を考えて、どこまで先を見るかを考えて投資をしてみてください。

▼『村上世彰、高校生に投資を教える。』7月17日発売▼

―関連リンク―

・「N高投資部」公式サイトはコチラ 

・「村上財団」公式サイトはコチラ

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