北九州市のド派手な新成人は「どんな美容室」で「どんなオーダー」をしているのか?現地の人気ド派手ヘアサロンに乗り込んで取材してきた【成人式】
成人式。それは、未成年が大人の仲間入りをした事を祝う伝統的な祭事だ。
そして、この時期に必ず話題に挙がるのが、北九州市のド派手な成人式である。
ニコニコニュースORIGINALでも過去に現地取材をしており、フリーダムな若者達に圧倒されたことを鮮明に覚えている。同時に、あることが気になってしかたなかった。
「ド派手な髪型ってどこでセットしてくれるんだ?」
“ド派手な衣装”に関しては、テレビやネットニュース等、多くのメディアが取り上げてきた。レンタルショップがあるとか、生地から作る人もいるとか、内容はそんな感じである。
中には料金の未払い問題など笑えないものもあるが、衣装をゲットするまでの基本的な流れはなんとなく想像できるはずだ。
では、ド派手な髪型はどうだろう。
「一般的なヘアサロンでやってくれるのか」「どんなオーダーをしているのか」「料金はおいくらなのか」分からない事だらけだ。まったく想像がつかない。想像の余地がない。
上記の疑問を解決すべく、我々はド派手成人式のメッカ・北九州市の小倉へ飛び立った。目的地は『TRIBE(トライブ)』というヘアサロンだ。
このサロンを訪ねた理由はいたって単純。文句なしにド派手なのである。
インタビューを快諾してくれた、オーナーのMAC氏は小倉にサロンを開業して20年のベテラン。これまで多くの新成人を見守ってきた、いわば“生き証人”的な人物だ。
色々な意味で「ド派手な成人式」に注目が集まる今日。本記事ではその舞台裏を、ちょっとアホで憎めない若者達のエピソードと共にお伝えしたい。
また、ニコニコニュースでは 1月12日の『北九州市 成人式』当日に、会場付近から生中継を行う。こちらも併せて楽しんでもらえれば幸いだ。
▽クリックで番組へ▽
取材・執筆:金沢俊吾
取材・編集:腹八分目太郎
撮影:トロピカルボーイ
──本日は「北九州成人式のド派手ヘアー」のことや、こちらのヘアサロンについてお聞かせ頂ければと思います。
MAC:
よろしくお願いします。
──さっそくですが、ド派手ヘアーについて聞かせてください。
MAC:
どうぞどうぞ。
──MACさん的に印象に残っている成人式のド派手ヘアーってどんなものがありますか?
MAC:
印象に残ってる……どういう意味で印象に残ってるものがいいですか?
──ぶっ飛んでるやつでお願いします。
MAC:
ぶっ飛んでるって意味なら、「富士山になりたいんですよ。」って言ってきた奴がおって。
──富士山になりたい?
富士山になりたかった男
MAC:
これだね、富士山。10年ぐらい前かな。
──噴火してる!
MAC:
何で富士山のなりたいの? って聞いたら、「富士山、日本一やないですか。」って。
──理由が分かりやすくていいですね(笑)。
MAC:
それで富士山作ったんですよ。ちなみに、その時の料金はまだ払ってもらえてないです。
──ええ、踏み倒しちゃったってことですか? それじゃ日本一になれないですね……。炎の部分は付け毛ですか?
MAC:
これはピンクのドレッドを作ったんです。富士山の部分はタボ毛っていう、ドレッドの材料で作っています。 富士山をカパッとはめてるんです。
──これはまず、型を作るんですか?
MAC:
いや、このときは型も何もないんです。タボ毛を単純に固めていく。
──ヘアメイクの上に造形物を被せたスタイルということですね。
MAC:
そういうことです。
イノシシになった男
──そこに飾られてるイノシシがずっと気になってるんですが、これも成人式で使われたものですよね?
MAC:
これは針金で型取って作りましたね。
──あれ? 中に何か入ってますか?
MAC:
LEDです。
──LED? 光るんですか?
MAC:
リモコンで光るんですよ。
──すごいな……。これ、目玉とかは自分で買いに行かれるんですよね?
MAC:
そうです。手芸屋さんに買いに行きます。イノシシになったお客さん、半年以上前から「成人式の髪の毛どうしよう、どうしよう」って悩んでたのに結果3日前まで決まらんで、「イノシシにせえ」っちゅうて、忙しい間をぬってこれ作ったんです。
──じゃあ3日間でこれを作ったんですね。
MAC:
うん。それだけ苦労して作ったのに、イラつくことがあって。当日、料金を伝えたら「え? 払うんですか。は? 」って言われて。
一同:(笑)
MAC:
「え、じゃあいつ払うの?」って聞いたら。「いやあ……」みたいな。そこから「金払うのは当然だろう」って話をして。
──なんなんですか、それ……。富士山の人といい、お金払ってもらえないってよくあることなんですか?
MAC:
大体5年に1人ぐらいかな。そんなもんだよ。
──このイノシシの彼はまだお店に来てるんですか?
MAC:
説教されて以来、来てないですね。今年のハロウィンのとき、「あのイノシシ貸してください」って連絡きて、「顔も出さんやったやつがいきなりそれか」って、それは無視した。
──よく連絡してきましたね。
MAC:
でも、こいつ、小学校からずっと来てたんですよ。
──MACさんのことお兄ちゃんみたいに思ってそうですね。
MAC:
セットとかも、ずっと100円でやってあげてたんです。成人式の前に「もう成人なんやから、100円セットもなし」って言ったら、「へえ? 」って。
── (笑)
MAC:
「へえ? じゃねえよ!」って言ってやりましたけど。
パイナップルになった男
MAC:
これも見てよ。
MAC:
そうそう。フルーツのカットするの割と好きなんですよ。
──フルーツのカット。
MAC:
これも本人が「パイナップルになりたい」って言ってきて。
──ちなみに、理由は……。
MAC:
「なんとなく」って言ってた。
──なんとなくで、パイナップル。
MAC:
茶色いトゲみたいなやつも一個ずつ丁寧に染めて表現したんですよ。
LEDで光るバラの女
MAC:
これも面白いでしょ。
──すごい。きれい。
MAC:
このバラはLEDが入ってたんだけど、光る間もなく、グシャグシャになった。
──ええ、何があったんですか?
MAC:
当日の朝、赤色が他の奴と被ったって、そいつと喧嘩したから(笑)。
── え? 赤が被ったっていうのが喧嘩の理由ですか?
MAC:
赤髪同士で喧嘩。
──髪がぐちゃぐちゃになるまで取っ組みあうって、よっぽどですね……。
MAC:
みんな目立とうとしてる中で、赤い髪が自分だけと思って会場に行ったのがすごいわ。
一同:(笑)
千手観音になった男
MAC:
12月28日に「千手観音にしたいんですよ」って言われて、やったのがこれ。
──手が生えてる!
MAC:
基本的にこのシーズンってスケジュールがほとんど埋まってて、正月の三が日しか空いてなかったから、実家で酒飲みながら作りましたよ。時間があればもっと手を増やしたかったんだけどね。
──ちなみに、この方はなぜ千手観音になりたかったんですか?
MAC:
特に理由はなさそうだったね。
──みなさん、カットの理由が単純だったり特にないってところがいいですね。
MAC:
基本的に何となく来てくれれば、それを何となく形にしていくだけで。なんでも「いいっすよ」で作るのが僕のがポリシーでもあります。
──かっこいい。ちなみに千手観音はおいくらで引き受けたんですか?
MAC:
これは過去最高額。お正月料金も込みで15万円だったかな。
──15万円!! よければこの流れで料金設定のことをお聞きしてもいいですか?
MAC:
もちろんです。