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「税抜価格の10~15倍の値段で請け負ってます」──巷で耳にする“プラモデル製作代行”ってどんなお仕事? 業者さんを直撃してみた

 依頼人に代わってプラモデルを高い技術力で美しく完成させる「プラモデル製作代行」という仕事が存在するのをご存知だろうか?

 パッケージに描かれた完成予想図に、胸踊らせてキットを購入したものの、慣れない塗装や細かい作業の連続に挫折してしまった人も少なくないはず。大きなスケールのモデルになれば完成まで途方もない時間と根気、なにより長年培われた熟練の“技術力”が要求されることに気がついたときには後の祭り。
 完成予想図からかけ離れた“残念すぎる作りかけのナニか”を目の前に、呆然と立ち尽くすなんてことも。

展示されたモデルと自身の組み上げたモデルの差に、愕然とすることもしばしば……。

 「作る楽しみも含めてプラモデル」という主張にも頷けるところはある。しかし、プラモデルを作っているだけで楽しかった子供時代ならばいざ知らず、仕事と家庭に忙殺され、作る楽しみにすらありつけないオトナたちが存在するのも事実だ。

 ニコニコニュース編集部は、そんなオトナたちのニーズに応えるプラモデル製作代行業の全貌について、中野ブロードウェイに店舗を構える『プラビット』の店長・上條晃宏氏にインタビューをおこなった。『プラビット』では、ガンプラやガレージキットフィギュアであれば「キットの税抜定価の10倍~15倍くらい」の金額で製作代行を請け負うという。

 本記事はインタビューを通して、具体的な依頼方法報酬金額、それぞれの得意分野を持った各地の熟練プロモデラーとの連携方法など、一般には馴染みのない「プラモデル製作代行」という職業にスポットを当てるものである。

撮影・文/トロピカルボーイ
編集/腹八分目太郎
聞き手/ニポポ(@tongarikids


プラモデル製作代行ショップをオープンさせるまで

ニポポ:
 まずはこの「プラモデル製作代行」というビジネスで独立するに至った経緯を教えてください。

上條店長:
 元々模型を作るということは子どもの頃にやっていて好きだったのですが、大人になってからはあまり触れていなかったんです。ある時、部屋にプラモデルを飾りたいなと思い立って、小さなガンプラを買ってみたんですね。ところが、組み立てるだけで丸一日かかってしまって、さらにそれがとても家に飾っておけるレベルではないという酷い出来だったんです。本当に捨ててしまおうかと思ったくらい(笑)。

ニポポ:
 (笑)

上條店長:
 そこから「上手くなりたい」という向上心が生まれ、インターネットや書籍で勉強するうちに、「製作代行」というサービスがあるという事を発見し、これは自分で作るより上手い人に作ってもらったほうがいいんじゃないかと思うようになり、興味を持ち始めたんです。

ニポポ:
 僕はてっきり上條店長が「俺に任せろ!」的なモデラーさんだったのかと思っていましたが、ユーザー目線からのスタートだったんですね!

上條店長:
 そうなんですよ。同時にガンプラの完成品がネットオークションで高額取引されているということも知りまして、それらのクオリティーがもう本物なんじゃないかと思えるほど素晴らしいものだったので、完成品模型の需要がある事を見出したのです。

ニポポ:
 一度大きなニュースになったものは100万円を超える額で落札されましたもんね!

上條店長:
 「人の手が加わることで、価値が上がっていく」というこのケースは大きなきっかけになりました。ネットオークションでは完成品を直接見ることはできないので、お店を構えて実際に素晴らしい完成品を並べたらもっと多く人に完成品の楽しさを伝える事ができるのではないかと考えたのがプラビットをオープンさせるきっかけです。

お店の黎明期~軌道に乗るまでの流れは!?

ニポポ:
 立ち上げ当初はお客さんに対するアプローチという難しさがあったんじゃないですか?

上條店長:
 当初はこの中野ブロードウェイに来られるお客様をターゲットにしていました。来店される方のみに向けたお店だったんですね。ところが想定していた程の集客が無かったんです。製作代行の依頼はほぼゼロ。並べている完成品が幾つか売れる程度。ハッキリ言ってショックでしたね。

ニポポ:
 それこそ久しぶりにプラモデルを作ってみた時のクオリティーくらいのショックですよね。

上條店長:
 本当にそれくらいのショックでした。もうお店も出しちゃってますから簡単に引き下がれません(笑)。当初の予定では、製作代行の依頼と完成品の販売が半々くらいになるイメージで見積もっていたのですが、当初は完成品販売が9割という状況でした。

ニポポ:
 当初は9割が完成品販売で、1割が製作代行とのことですが、このバランスは現状でどのように変化していますか?

上條店長:
 今は完成品販売が3割、製作代行が7割です。

ニポポ:
 ちょっと待ってください! 狙い通り以上のバランスが生み出されていますが、この転機となった手法を教えてもらえますか?

上條店長:
 目をつけたのがインターネットです。ホームページ改革に乗り出し、中野ブロードウェイに来られたお客様だけではなく、全国のプラモデルや模型、フィギュアを作ることに困っている人たちへ向けて発信しました。それと完成品販売は在庫を仕入れなければならないので、売れないと過剰在庫のリスクがあります。対して製作代行はオーダーメイドになるので、在庫を持たずに作ったものはお客様にすぐにお渡しができて効率がいいんです。なので、完成品販売よりも製作代行の方へシフトする事にしました。これを念頭にホームページ改革とホームページ集客に切り替えていきました。

(画像は『プラビット』公式ホームページより)

実際にプラモ製作を依頼するにはどうしたらいいの? お値段の目安は?

ニポポ:
 「オーダーメイド」との言葉がありましたが、実際に依頼はどのようにおこなえば良いのでしょうか。

上條店長:
 まずは製作してほしいプラモデルや模型のキットがあるかと思いますが、このキットの「メーカー」と「スケール(何分の1スケールといった大きさ)」、そして「キットの名前」この3点を教えて頂き、次が大事なんですが、「どのように仕上げたいか」を教えていただきます。色は説明書通りでいいのか、自分のオリジナルカラーにしたいのか、といった部分ですね。

 先日、飛行機プラモデルの製作依頼があったのですが、カラーリングを上から見て、右がグリーン、左がピンクというツートンカラーにしたいというオーダーもありました。他にもメーカーから発売されていない色に塗り替えてほしいというリペイントという依頼も増えつつありますね。

ニポポ:
 リペイントはお客様自身が自分で塗って「失敗した!」とかで持ち込んじゃってもいいんですか?

上條店長:
 そうでうね。失敗してしまった物でもリペイントは可能です。リペイントの依頼が多いのはミニカーですね。後は市販されているフィギュアのリペイント。以前依頼があったのはドラゴンボールのブロリーのフィギュアで元々グリーンの髪色なんですが、これを黄色にして欲しいというものがありました。「ねんどろいど」という小さいキャラクターフィギュアの髪の毛の色を変えてほしいという依頼も最近増えています。

ニポポ:
 確かにドラゴンボールの市販フィギュアにダメージ加工を施したり、筋肉の造形がかっこよく見えるギミックを施したりすることで、値段が上がるという現象もあるみたいですね!

上條店長:
 そのようにリペイントをしてレンタルショーケースやオークションなどで販売されている方もいます。

ニポポ:
 プラモの話に少し戻りまして、現在販売中のプラモデルで説明書通りのカラーリングをお願いした場合、お見積額ってどのくらいになるのでしょうか?

上條店長:
 キットによって値段が全然違うので、ザックリになってしまいますが、ガンプラやガレージキットフィギュアの場合は、キットの税抜定価の10倍~15倍くらいが目安です。4000円で売っているガンプラであれば、4万円~6万円くらいの間で全てのパーツを塗装して組立をした状態でお渡しいたします。

店内にはお買得品コーナーも。

ニポポ:
 僕自身が過去にぶち当たった難問なんですが、「自分で作ったミニ四駆がいまいち早くならない!」といった可動ありきのキットが持ち込まれるということもあるんですか?

上條店長:
 ないことはないですが、ミニ四駆ではボディ塗装の依頼が大半です。ミニ四駆のボディ塗装の場合、走らせるかどうかを確認するんですが、プラモデル用の塗料は塗膜が非常に弱いので、走らせる事はお勧めしていません。最近はラジコンのボディの塗装や戦車のラジコン製作等、ラジコンの製作の依頼も増えています。

ニポポ:
 車なんかだと、「自分が乗ってる車と全く同じカラーリングにしたい!」なんて思いもあったりしますもんね。

上條店長:
 非常に多いです。プレゼント用にそのご本人が乗っていた車のカラーで塗装して作ってほしいという相談も増えていますね。

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