「税抜価格の10~15倍の値段で請け負ってます」──巷で耳にする“プラモデル製作代行”ってどんなお仕事? 業者さんを直撃してみた
納品プラモには保証が!? 利用者の傾向も知りたい!
ニポポ:
このプラモデルに対する「購入後1年間の修理保証」ってどういった内容なんでしょうか?
上條店長:
プラモデルは非常に繊細で壊れやすいという一面もあります。製作代行を頼まれる方の多くは基本的にプラモデルをご自身では作らない方がほとんどですので、完成品の扱いが分からない場合もあります。完成品を触っているうちにパーツが折れてしまったり、壊してしまったという場合の修理費、これを1年間1万円分を上限に保証しますよというものです。
ニポポ:
Zガンダムなんて変形させたくなっちゃいますもんね!
上條店長:
塗装済みでは変形はちょっとマズいですね(笑)。
ニポポ:
しかし、これは安心ですね! 先程、頼まれる方のお話ありましたが、利用者の傾向などありましたら教えてください。
上條店長:
昔に作っていたという経験者の方が多いですね。久しぶりにやろうとしたけれど、時間がない、技術がないという方。あと家で塗装しようとしたら家族からクレームがという方。失敗や苦い経験があるからこその依頼というものが多いです。
ニポポ:
僕もヨメにめちゃくちゃ怒られました(笑)。
上條店長:
ウチもそうです(笑)。エアブラシを購入するくらいなら頼んじゃおうという方もいらっしゃいます。
ニポポ:
そうなんですよ! エアブラシは買ったけど上手く扱えないなんて問題もありますし。依頼される方にはこだわりもあるかと思いますが、モデラーさんの指名なんて出来るんですか?
上條店長:
出来ます。モデラーによって得意不得意な製作ジャンルがありますので、まずはお客様のご依頼によって、一番ご要望にお答え出来るモデラーを私が推薦させて頂きますが、違うモデラーさんに頼むというのも、リピーターさんの楽しみ方の一つにもなっています。モデラーさんによって作風が変わりますからね。
モデラーさんについて教えて。あと製作期間は?
ニポポ:
今『プラビット』さんで頼めるモデラーさんは何名くらいいらっしゃるんですか?
上條店長:
模型製作で生計を立てているプロのモデラーさんを中心に全国に約10名です。
ニポポ:
『プラビット』さんにいる多彩なジャンルのモデラーさんって、ここまでどうやって集めたんですか?
上條店長:
当初はホームページなどインターネットで模型製作をしている方々に私からお願いしていました。もちろん断られてしまうこともありましたが、今ではモデラーさんからやらせて欲しいという連絡をいただくことも増えています。模型技術を副業にという方もいらっしゃいますし。
ニポポ:
そんなモデラーさんに依頼する製作期間はどのくらいになるのでしょうか?
上條店長:
おかげさまで現在多くの製作依頼を頂いておりまして、ご依頼いただいてからお渡しまでに平均2~3ヶ月頂いております。
プラモデルならではの苦労話も!?
ニポポ:
僕も趣味でプラモデルを作るんですが、古い戦艦のプラモデルなんかは説明書が既にハードモードだったりするじゃないですか、ここに穴をあけろとか、火で炙って曲げろとか、切れ端を火でとろけさせてワイヤーやアンテナにしろとか。
上條店長:
古いプラモや海外のプラモは作るのが非常に困難だったりしますね。
ニポポ:
海外プラモなんか左右のパーツがどう考えても合わなかったりしますもんね!
上條店長:
「ズレてる、合わない、歪んでる」この三重苦(笑)。あと古いプラモだとデカールが劣化しているという問題もあります。
ニポポ:
やっぱりこういったプラモだとお見積額も上がりますか?
上條店長:
そうでうね。やっぱり現行品と比べると時間をかけないといけませんので。
ニポポ:
昔、企業の応接室にあったような巨大な帆船なんかだとお高くなったりしますか?
上條店長:
木製の帆船模型はちょっと特殊なので、現在はお断りしています。帆船模型の製作が得意なモデラーさんがいないのが理由です。
ニポポ:
となると木製帆船模型モデラーさんにとっては、ここビジネスチャンスですね!
上條店長:
ご応募お待ちしております(笑)。帆船の依頼はたまにあるんですよ。
特殊な依頼やジオラマ製作を受けることも!?
ニポポ:
特殊な依頼もありますか? 僕のイメージだと、瓶の中に帆船が入ってて、これどうやって作るんだよ!? みたいなのが昔ありましたけど。
上條店長:
実際に瓶の船を専門に作っているモデラーさんもいます。その方の作品とうちの客層のマッチングを考えているのですがそんなに需要が多いわけではないので現状では依頼に至っていませんが。
ニポポ:
実際にいるんですね!僕が買いますよ!
上條店長:
他にも面白い依頼は多いですよ。例えばプラレールのリペイント。元々は赤とクリーム色の列車なんですが、これをホワイトに変えて欲しいという依頼。ラインを出すのが大変でしたね。
ニポポ:
僕『プラモ狂四郎』という作品が好きなんですが、古い1/144ガンダムをお父さんの時計のベルトを駆使したりして、パーフェクトガンダムに改造するエピソードがあるんですよ。このようなオリジナル改造を依頼するパターンもありますか?
上條店長:
あります。それこそ古い直立不動のロボットプラモデルを「可動式にしたい」という依頼がありまして、同じくらいのサイズのキットを使って全身関節を入れ込むという改造もありました。
ニポポ:
無いパーツを作って欲しいという依頼に答えることも可能だったりするのでしょうか?
上條店長:
たまにあります。フルスクラッチというのですが、フルスクラッチでパーツを製作すると非常にお値段がかさんでしまいます。なので、私がご提案するのは、他のキットから使えそうなパーツを流用するという方法ですね。
ニポポ:
最近では3Dプリンターの案件なんかもあったりしますか?
上條店長:
はい。3Dプリンターで出力されたフィギュアの塗装依頼も増えました。ただ3Dプリンターの多くは積層【※】という樹脂が何層にも重なった状態で立体物が出来ていて表面がザラザラしているのです。このプラモデルでいうところの「バリ」のような表面のザラザラや凹凸をなくす磨き作業がとても大変なので製作費は結構高額になる事が多いです。
※積層
せきそう。3Dプリンターでは、ごく薄い層を少しずつ積み上げてモデルを造形していく。この積層のピッチ(間隔)が小さいほど造形物の密度が高くなり強度が増し、表面も滑らかになる。
ニポポ:
僕、趣味でジオラマを作ることもあるんですが、ジオラマの依頼なんかも受けてもらえるものですか?
上條店長:
大丈夫です。ジオラマの場合はキットを作るだけでなく、「どの様なシーン」を作るかが大事ですので、これを形にするのが非常に難しいです。電飾を入れたいとか、回したいとかオーダーも様々です。お客様の頭の中にあるイメージをしっかり引き出す必要があります。
ニポポ:
これはちょっと難しい問題かも知れませんが、お渡し時にお客様の「イメージとズレている……」なんてことがあった場合どうしたら良いでしょう?
上條店長:
大前提として、まずお客様のイメージとズレが無いようにしています。そのために打ち合わせを綿密に行い、ヒアリングもしながら製作に取り掛かります。それでも発生する可能性のあるイメージ違いの多くは「色」なんですね。色というのは人の手で塗料を混ぜて作るので、説明書の通りに塗料を配合しても全く同じ色は作ることはできません。その為、色味の多少の誤差についてはご了承いただきたいと思います。ただ、明らかに「イメージと違う」という場合があれば、「全額返金保証」をお使いいただくことも可能です。
ニポポ:
素晴らしいですね! そこまで保証が出来るのは自信の賜物ですね。
上條店長:
基本的には私がお客様自身になり切るくらいの形でイメージを合わせていきます。
ニポポ:
なるほど! やっぱりそこには元々上條店長に生まれた「利用してみたい」という利用者目線が光っているのかもしれませんね!
今後の拡張予定やアイディアなども?
ニポポ:
これから事業展開として考えているプランや、攻めて行きたいというポイントやアイディアがあれば教えてください。
上條店長:
今は店舗も小さいので、製作代行の依頼を受けてからキットをモデラーさんの作業スペースに送るというスタンスを取っていますが、いずれは自社で工房をもって、工房の中でモデラーさんが製作をしてもらえるようにしたいですね。そうすれば製作シーンを公開することも出来ますし。
ニポポ:
それは素晴らしいですね! 出来ればパン屋さんみたいにガラス張りで製作風景が見ていられるようになるといいですね! 有料でも見に来ますよ!
上條店長:
あとはプラモ製作が趣味の方が自分の作品を販売できるスペースも設けたいですし、企業様やテレビ制作会社様の方からの製作依頼にスピーディーに答えられる体制を整えたいですね。
取材は『プラビット』店舗にておこなわれ、インタビュー中にも多くの利用客の姿があった。なかには「色んなお店にプラモの制作をお願いしてきたけど、プラビットのクオリティーが一番高いよ」と、我々取材陣に語気強く主張する常連客の姿もあったことを、この場を借りて明記しておく。
この記事を通してプラモデルに一度でも触れたことのある「つくる喜び」を知るかつての少年少女たちに「プラモデルを楽しむ喜び」が再燃することを願いつつ、締めくくりとしたい。
▼プラモデル・フィギュアの祭典
「ワンダーフェスティバル」会場からの
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