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なぜ沖縄に基地が置かれたままなのか? 安全保障と向き合う必要をジャーナリストらが提言「沖縄がどのような経験をしてきたか歴史を知ることが大切」

軍事的理由はないが、政治的理由から沖縄に基地を置かざるを得ない

前泊:
 もう一つこれは2011年の日経新聞ですけれども、アメリカの海兵隊がオーストラリアに駐留をする。

前泊:
 これも何かと言うと中国の射程外に抑止力を置くということです。そうすると「沖縄の海兵隊って何のためにあるんだ」ということです。つまり沖縄は射程内に入っているので、あまりにも近すぎる。そしてアメリカ側の例えばカート・キャンベル外交官や、ジョセフ・ナイ元国防次官補もそうですけれど、「沖縄という一つのカゴにあまりにもたくさんの卵を持ちすぎている」と言いました。つまりそこに軍隊を集中させていると、一発でだめになってしまうじゃないかという話がありました。

堀:
 リスクが高いですよね。

前泊:
 大きすぎる。だから分散するということで、ハワイに移したり、グアム、サイパン、ケニア、あるいはオーストラリアという、外の方に米軍の配置を変えてきているんです。こういう状況も見ながら「沖縄にいなければいけないと」いうことが、何故か呪文のように唱えられている。

 このことについては、日本で最も軍事的な専門家とも言われている、当時の民主党政権の最後の防衛大臣の森本聡さんが最後の会見で、「沖縄に基地を置く軍事的理由はないけれども、政治的理由から置かざるを得ない」というような趣旨の発言をしたんです。沖縄は大騒ぎでした(笑)。

堀:
 言っていましたね。

前泊:
 つまり沖縄に基地を置くというのは、「軍事的には要衝の地ではないけれども、他が引き受けないので沖縄に置かざるを得ない」と言ってしまったのですね。これは正直な話だと思います。

前泊:
 このときに問題となったのは「誰が他国軍隊の基地を置きたいと思うのか」ということですよね。例えばこれは、石原慎太郎さんが運輸大臣を担当していたときに言ったことなのですが「在日米軍は番犬である」と言うのです。番犬が日本を守るために100匹います。その100匹のうちの75匹を沖縄に集中させている、これはちょっと多すぎると。しかもその番犬がよく訓練されておらず、よく噛みついたりするんです。

 「それをちゃんと鍛えて送り込んでくれ」という話をしたら、「そんなことをしたら戦争のときに使い物にならない」と言うのです。だから「野蛮なくらいがちょうど良い海兵隊」という言われ方をします。アメリカに行ったときにシンクタンクに言われてびっくりしたのですけれど、海兵隊に行く人は、刑務所に行くか、レッドネック【※】になるか、それから海兵隊に行くか、この3つしかチョイスがないんだ。そういう人が集まっているんだということを言われてびっくりしたんです。

※レッドネック
保守的な貧困白人層を指す表現。

堀:
 先日、沖縄の海兵隊の皆さんに取材をしたときに「景気と連動しているんだ」と言っていました。景気が悪いときには、働き口がないという中で、若い海兵隊員たちが沖縄にやって来る。沖縄は18歳、19歳の若い海兵隊員たちが、一つの入り口として研修を受けに来るような場でもあるのですが、その子たちが悪さをする。まさに、映画の中で描かれていた状況と同じでしたよね。

ユンカーマン:
 そうですね。何も知らない若者たちなんですよ。場合によっては現地のアメリカではまだ酒も飲めない年齢なのだけれども、沖縄では自由に酒が飲めるし、夜遊びも出来る場所になっています。

堀:
 今の神保さんと前泊さんのお話を聞いて、監督いかがですか。

ユンカーマン:
 僕は10年前に『映画 日本国憲法』という映画を作ったのですが、その中で「基地による帝国主義になっている」という発言を、チャームズ・ジョンソンさんという人が分析してくれました。そういう環境の中で、日本に基地があるということなんだけど、世界にそういうネットワークがあるということもアメリカでは意識されてないです。800から1000以上のアメリカの基地が世界中にあるということが知られていません。それを描くのが難しいことなのです。

 またイタリアで問題になっている新しく建設する基地は、辺野古の問題にとても似ているようなところがありました。ディエゴガルシアという島で、全員島から追い出されて基地を作りました。そういうようなところで、より象徴的なのが沖縄です。一番よく描いたのが沖縄の基地なのです。基地だけじゃなくて核兵器の実験をビキニ島でやったということは、地元の権利なんか一切考えないということなんですよね。

 そういうような現状の中では完全に軍事目的を、地元の人たちの人権、人生、健康より優先するというようなことが、アメリカの軍隊の考え方なんです。僕は逆にそれが世界中の基地の問題を取り上げているんだと思います。『うりずんの雨』を作ったときは、一つの島で32くらいの基地がある沖縄を丁寧に描くことによって、逆に世界に広がる。基地による帝国主義の本質が見えてくるんじゃないかなということで、そういう方針で映画を作ったんです。

アメリカ側から見る沖縄の位置付け

堀:
 今の話を含めて神保さんが最初に問題提起をされた「沖縄の今の安全保障上の位置付けというのは何なのか」というところですよね。改めてアメリカは沖縄というものの価値について、どういうスタンスでいるのか教えて頂けますか。

神保:
 まずユンカーマンさんのこの映画が英語版になってアメリカでも放送されるって聞いたんで、すごく僕は喜んでいます。要するにアメリカも民主主義の国ですよね。だから民意というものがあるんだけど、アメリカの一般の人はね沖縄問題なんてほとんど知らないわけですよ。本当にこの実態が歴史も含めてきちんと伝われば、多くの人が「それはちょっとひどいな」って思うようなことなのですが、なかなかアメリカではそうした情報が出ていない。

 だからアメリカ政府の政策としては、「沖縄に基地があるのは日本政府との協議の上」ということになるわけです。それはアメリカが民意、あるいは総意として「それをしたい」って思っているわけではなくて、むしろ知られていないことによって普通のアメリカ人が聞いたら「ちょっとこれはひどいんじゃないか」ということが起きているっていうのが一つ。

 ただ先ほどの前泊さんの話にもあったけれど、沖縄にまず基地が集中しているということもあるし、嘉手納という空軍の要になっている基地がある。

神保:
 それからこれは本来の趣旨とは反するんだけども、明らかに日本のためではなくて完全に中東とのテロとの戦いのためというのがあります。アメリカの仮想敵国というのが中国、北朝鮮というのがありますが、今すぐにということじゃないと、どうしても仮想敵国を無理やり作らないといけないところがあって作ったわけですよね。

 結局もともと沖縄はベトナムに行くための前線基地だったけども、今度は中東、ヨーロッパ以外のための前線基地であり中継基地になっている。だから先ほど米兵が番犬ですぐ噛みつくという話もありましたが、それはそれで沖縄の人にとっては大変な負担なんですよ。

 一方で送られている兵隊さんたちというのは、変な話、前日まで一歩間違えば、いわゆる路上爆弾で周りの皆が死んだのを経験してきた人が、やっと安心出来る場所として来たという場所になってしまっています。だからといって乱暴な振る舞いが許されるということではないけれど、要するに非常に不幸なセッティングになってしまっています。若者たちは若者たちで、非常にある意味では不幸な立場に置かれているわけですよ。

堀:
 難しいですね。だから米軍の世界戦略を見る中での沖縄の位置付けと、そして米軍が抱えている問題と、いろんなことがごっちゃになってお話をすると途端に問題が見えにくくなるし、解決策も見い出せなくなってくるのですね。

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