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洋ゲ―を単純に翻訳するだけじゃない! “ローカライズ”って何?『Detroit』日本版スタッフが語る海外ゲームローカライズ事情

エンディングが先に到着、ト書きが一切ない等、ケースバイケースの作業はまるで謎解き!

サイトーブイ:
 もうふたりとも当たり前だと思いますが、英語はもちろん。

谷口:
 いいえ(笑)。

石立:
 英語能力よりも、たぶん日本語能力がローカライズでは重要ですね。

谷口:
 当然英語のニュアンスを汲み取ってというところは必要なのですが、そっちよりも日本語が書けないと無理かな。割とみんな、英語ができればいいんじゃないの? 的な感じに思われがちなんですけれど、いかに日本語を自然にするか。耳で聞いた時にいかに理解しやすいようにするかという技術が一番必要です。

中野:
 ひとつの文ではなく、文脈でつないで考えていかなきゃいけないものなんですか。

谷口:
 ものによるんですけれど、いわゆるゲームの中でしゃべってる会話は頭からケツまでというのは、流れで考えないといけないんですけれど。そこが結構難しいところですよね。でも結構バラバラに来たりする場合もあるので。

 一部だけ来てやってみて、またしばらく経ってから次の続きが来た時に「全然話が合わないよ!」とかもなったりするので、そういうところも結構想像力が必要だったりもするんですよね。

サイトーブイ:
 どういう段階で来るんですか。

谷口:
 開発会社ごとなのですが、ステージを集中的に作って、できたから「はい」みたいな感じで来ることもあるし、本当に全部ストーリーの塊として全部来る時もあるし、本当にそれもケースバイケースです。

中野:
 極論、まだ知らないところも先に来ちゃうこともある。

谷口:
 エンディングから来ちゃったりすることもあります(笑)。

一同:
 (笑)

谷口:
 「そこまで話わかんないし!」みたいな(笑)。

サイトーブイ:
 わからないけれど、とりあえず作るしかないみたいな。

谷口:
 そうですね。一応、いわゆるト書きみたいなものが入っていたりとか、ストーリー概要みたいな資料は来たりするので、それを基に考えるしかない。

中野:
 あとから先の部分が来てしまって、エンディングがちょっと違ったなと直すみたいのがあるということですか。

谷口:
 直すことはありますね。来てみたら、なんかその後から先のが来た時に直すとか、あとはゲームに実装してみたら「全然違った!」と思って変えたりとかもしますね。

サイトーブイ:
 想像していたのと違ったな……(笑)。

 もうちょっと出来上がっているところに対して全体の解釈をした上でやっているのかなと思っていたので。

谷口:
 映画の翻訳が羨ましいです。

世界三大 三代川:
 翻訳する時には出来上がっていますもんね。

石立:
 ゲームは文量が多いのと、世界同時発売が普通になっているので、こういうペースで作業をしないと間に合わない。

世界三大 三代川:
 セリフだけじゃないじゃないですか。メニューまわりを表示したりとか。

谷口:
 それを「オンスクリーンテキスト」と言うんですけれど、それとセリフまわりってまた別の難しさがあるんですよね。オンスクリーンテキストなんか、それこそト書きが一切なかったりするので。

石立:
 要はすべてデータなので、すべてのセリフ、すべてのテキストに対してIDがつけられていて、そのIDをプログラム側で引っ張ってきて表示するわけですよ。

谷口:
 そのIDの中に“Description”とか書いてあると、「あ、これはアイテムの詳細か!」とか。

石立:
 だいたい一番最初に、テキストのカテゴリみたいなのがメニューの画面なのか、アイテムの説明みたいなのが書いてあったり。

谷口:
 『Detroit: Become Human』だと単語が書いてあって、その横のタグのところに“choiceなんちゃらかんちゃら”、“choiceなんちゃらかんちゃら”って書いてあるので、「あ、これは選択肢ね!」みたいな感じで予想していく(笑)。

サイトーブイ:
 そんな謎解きをしながら作っているんですか(笑)。

谷口:
 そうです、謎解きですね(笑)。

石立:
 たまに酷い会社だと全部通し番号になっていて。

谷口:
 数字だけで「なんだよこれ!」みたいになって。

中野:
 どう引用されるかわからない。

谷口:
 だからとりあえずなんとなく訳して、実装した時に「全然違うじゃん!」って直したりとか。

中野:
 極論、それを試すまではみ出ているかわからない時があるんですね。

洋ゲ―を楽しくプレイできる環境に感謝! 想像以上にローカライズ作業は大変

石立:
 テキスト系のはみ出しとかは比較的直しやすいんですよ。一番取り返しがつかないのが音声。

中野:
 合わない?

石立:
 合わないとか、役者さんをまた呼んで録ってもらうわけだから、スケジュール的にうまくいかないとか。あと音声って意外にメモリを消費するので、開発的にできるだけ早く音声をフィックスして。

 他のところに音声で消費するメモリはこれくらいだというのを確定したいんですよね。その余った部分でまた1メガとかのメモリをグラフィックのエフェクトにあてるか、みたいな作業をやるので。

世界三大 三代川:
 なるほど。大変ですね。

サイトーブイ:
 想像以上の大変さがありますね。

石立:
 でもゲームは機械でやるものなので、機械は本当に曖昧さを許容しない。

サイトーブイ:
 ローカライズするものが増えていくと、開発側もそういう作り方とか慣れていくものなんですか。

谷口:
 いいえ(笑)。慣れるところもありますし、もちろんノウハウも溜まっていくんですよ。

 そこはもちろんその先も使い続けていくんですけれど、ゲーム自体も進化するし彼らのプログラムとかもベースになるものとかも変わっていったりするので、その都度ちょこちょこ変更していったりとかですかね。

石立:
 10年単位で見たら制作環境は良くなっていると思うんですけれど、その代わり作業量が10倍とか20倍になっているので。

サイトーブイ:
 そうですね。人は10倍、20倍には……。

谷口:
 なりません。コピーロボットがほしいですね(笑)。

サイトーブイ:
 どのくらいの人数でやっているんですか。

石立:
 この作品だと、ほぼ谷口ひとりです。

谷口:
 この作品はですけれど。でも通常のAAA(トリプルエー)という大型タイトルだと、プロデューサーがふたりくらいついて、スペシャリストもふたりか3人みたいな感じですね。

石立:
 ただその3人が専念できるわけでもないんですよね。複数の作品が常に動いているので。結構みんな2、3タイトルくらいは掛け持ちしながらやっています。

サイトーブイ:
  タイトルを減らすか、人を増やすかしてください。

一同:
 (笑)

谷口:
 でもタイトルが減ったらみんな怒るでしょう(笑)。

サイトーブイ:
 絶対怒りますよ(笑)。

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