幻影旅団は最高だ。HUNTER×HUNTER「ヨークシン編」名場面たっぷりのシーズンをおさらいしてみた
“全力で戦ったキャラはその後登場しなくなる”法則
岡田:
あと今回『HUNTER×HUNTER』の法則みたいなものを話してみたいんだけども、「全力で戦うと死ぬ、または役を失う」という法則があるので、これは前回のヒソカ対カストロ戦や、団長対ゾルディックのじいさんとか、キメラ=アント対ネテロ会長もそうなんだけど、とにかく全力を出し切った。
全力を出し切ったキャラクターというのはその『HUNTER×HUNTER』の中で役を失っちゃうんだよね。だからクラピカみたいに延々生かされて、解説役になる。なんだか、野球選手とてはパッとしなかったんだけども、以後解説員として役に立ちますみたいな生き延び方もあれば、ネテロ会長みたいに華々しく死んじゃうという場合もある。
つまり全力で戦って全てをさらけ出して見せて、そのキャラに謎がなくなってしまうと、作中ではポジションを失ってしまいます。なので、ゴンとキルアはいいんだよ、何回負けても修業して強くなるというキャラクターだから。でもゴンとキルア以外のキャラクターっていうのは、巧みに全力で戦闘するのをひたすら回避しているんだよね。
とんちをやったり、もしくはいきなりドッジボールをやったりというのが、『HUNTER×HUNTER』のすごくうまいところなんだよね。クラピカは、さっきも言ったように、対ウボォーギン戦で全力を見せちゃったから、今使い道が段々解説役みたいになってしまっていることだと思います。
あと僕が面白いと思っているのは、単行本の2冊くらいに渡って主役はゴンの父親のジンというところなんだよ。長い少年漫画の歴史で、父親から息子に主役が移ったことはあるよ、『ドラゴンボール』とか、でも息子から父親に主役が移ったことは、空前絶後だと思うんだよね。
あと、幻影旅団に関してなんだけども、僕は幻影旅団が主役で、すごく良かったと思ってる。とにかく心情変化を見せちゃって、本当は悪いやつなんだけど、ゴンやキルアに対して友好的な目線を送っちゃったから、実はね幻影旅団は設定としてもう腐ってるんだよ。
もう賞味期限過ぎてて、そんな幻影旅団がよりによって、なぜクルタ族を皆殺しにして目を奪ったのかっていうのがもう謎なんだよ。たぶん作者にも説明できないから、クラピカの復讐って永遠に叶わないと思うんだよね。
次回は、「グリードアイランド編」をやります。グリードアイランドというのは、実は僕が『HUNTER×HUNTER』の中で1番、『HUNTER×HUNTER』らしい面白い回だと思ってるんだ。作者としてもやりきった感があるんだよね。たぶん「グリードアイランド編」が1番面白いんだけど、その次の「キメラ=アント編」がすご過ぎたんだよね。
あれは奇跡の成功みたいなものなんだよ。そのせいで今の「暗黒大陸編」がすごく苦しんでいる。その理由は、「十二支ん」というキャラがなんにも面白くなくて、誰も好きになれない失敗キャラ設定だ、とかいっぱいあると思うんだけどね。では、少年漫画として1番ゾクゾクして面白くて完成形に近かった「グリードアイランド編」をやってみます。とにかくクライマックスの、ゴンとヒソカがドッジボールで味方同士になって戦うという、まさかの展開なんだよ。全力戦闘をやらせないために、ここまでするか、というのを見せてくれる怒涛の展開劇になっています。