HUNTER×HUNTER「キメラ=アント編」ゴンがアリの王と戦うどころか、会ってすらいないのすごくない?
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ニコニコニュースではこれ合わせて、アニメ制作会社ガイナックス・元代表取締役社長の岡田斗司夫氏が『HUNTER×HUNTER』をシーズン毎に徹底考察した記事を掲載。
本記事では、「キメラ=アント編」について考察した部分を紹介します。
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※本記事は2017年7月6日に公開した記事を編集、再掲載したものになります。
キメラ=アント編はHUNTER×HUNTERの最高傑作
岡田:
「キメラ=アント編」は、『HUNTER×HUNTER』の今のところ最高傑作だと僕は思っています。あの完成度は奇跡なんだけど、実は偶然とも思っています。ここにストーリーの流れを大体まとめてみました。まず、「グリードアイランド編」のラストで、ジンに会えるはずが、カイトに飛ばされて合流。ここでキメラ=アントの女王の身体の一部を入手して、新たな脅威が来たとわかる。
次に女王アリがいろんな生物を捕食して、つまり摂食交配、食べた生物の特徴を持った子供を産卵するということがわかる。これが人類の天敵として設計された敵役なわけだよね。師団長コルトや不思議なコアラなど、人間っぽさを残したアリたちが出てきて、これは将来素直に駆逐できないなという伏線も張られる。
とてつもなく強い親衛隊ネフェルピトーという奴にカイトが殺され、ゴンとキルアは修業エピソードで島流しになる。島流しになると僕が言ったのは、事実上ここで、ストーリーラインは2つに分かれて、実はそのキメラ=アント側の誰が主導権を握るのかという、お家騒動の話しに比べれば、ゴンとキルアが修業のために、ナックルとシュートという奴と戦う話は、そっちの方の温度が大分違ってくるんだよね。
そして王がついに産まれて、キメラ=アントが分裂する。各師団長を倒すという個別エピソードに移って転換ポイントですね。それから「軍議」という将棋みたいなゲームの名人でコムギという女の子が登場して、ラストへと流れていく。
冨樫義博は『キン肉マン』タイプの漫画家
岡田:
これが前半の大きい流れなんだけども、前半の3つのエピソード、つまり人間っぽさを残したアリたちというのが、後半うまく機能してないんだよね。冨樫さんという漫画家は、完全な構成を決めて、その順番でエピソードを出すといういわゆる『バクマン』『デス・ノート』タイプの漫画家ではなく、『キン肉マン』タイプの漫画家というのかな。
ものすごい設定考えてどうなるのかっていったら、「俺も分かんない。どうなる!?」って言って、「続きは来週までに考える」って言って、とりあえず寝てしまうタイプの漫画家。それは「天空闘技場編」と「グリードアイランド編」の念能力の設定のバラバラさからわかるように、「キメラ=アント編」でも最初に出した伏線が、もう本当にこれどうするんだという状態になってるわけだよね。
特にジャイロという悪の象徴みたいなキャラクターが出てきて、これが街の中に消えていった話になっていて……ファンの間では、次にジャイロが出てくるのはいつなんだという話になってるんだけどね。俺、思うんだけど、もう出てこないと思うよ。
作者にしてみても、「うん、もう今更あれ出せないよ」というキャラクターの1つになっていると思うんだよね(笑)。「ジャイロもう出ないよな」(コメント)そうでしょ。後で矛盾が出てくるよりは、一番面白い手を常に探しているから、どうやってもこうやって捨ててしまう設定が出てくるんだよね。