HUNTER×HUNTER「グリードアイランド編」の名シーンをおさらい。ビスケとの出会い・レイザーとドッジボール・恋愛を語るヒソカ
ニコニコチャンネル「HUNTER×HUNTER」では5月25日(金)00:00より、7日間限定でアニメ第12話までの無料が決定!
ニコニコニュースではこれ合わせて、アニメ制作会社ガイナックス・元代表取締役社長の岡田斗司夫氏が『HUNTER×HUNTER』をシーズン毎に徹底考察した記事を掲載。
本記事では、「グリードアイランド編」について考察した部分を紹介します。
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※本記事は2017年6月19日に公開した記事を編集、再掲載したものになります。
グリードアイランド編は「友情・努力・勝利」
岡田:
「グリードアイランド編」は、少年ジャンプで、一番正当なジャンプ漫画に近いんです。とりあえず、「友情・努力・勝利」というのがちゃんと守られている。友情は新キャラのビスケによる念の訓練ですね。努力はカードを集めるというクエスト。勝利はバレーボールとか対ゲンスルー戦。
なぜこれを特別に言うのかというと、これまでの『HUNTER×HUNTER』では、「グリードアイランド編」まではこの「友情・努力・勝利」というのを巧みに避けて表現していたんですよ。それまでは「努力するまでもなく一瞬で勝負がついた」とか。
友情は、グリードアイランドに到着したゴンとキルアが、大先輩の心源流のウイングさんの師匠であるビスケと出会って、彼女の元で一流の念使いに成長するまでの修業エピソードですね。次の努力というのはカードを集めるというやつで、念の修業がある程度完成して、ゲームの攻略に入ります。
いよいよグリードアイランドというゲームがどういうふうに面白いかっていうのがわかるようになってきて、他のプレイヤーと次々と関係を持って、彼らと一緒にカードをゲットするという話です。これも『HUNTER×HUNTER』では実はこの「グリードアイランド編」でしか描かれてないんですよね。
勝利、というのは誰も手にしたことのない指定カード“一坪の海岸線”を手に入れるために、ドッジボールをそれもヒソカを味方にしてまで、プレイして勝利する。最後に爆弾魔のゲンスルーというグリードアイランドの最大のボスキャラと戦うということ。少年ジャンプ漫画の見本みたいなストーリーに沿って出てくるんですけど……。
僕がやっぱり好きなのは、ビスケの特訓シーンなんですよ。こういうセリフ「戦いながら相手を分析する戦闘考察力」というのが出てくるんですけど、このあたりの言葉使いとかが、ものすごく気持ちよく決まっていく。
実際に戦っているゴンとキルアを見ながら、彼女が考えているのが、こういうことですね。「さまざまなタイプと戦わなければならない念での戦闘。そこでもっとも大切な戦闘技術とは思考の瞬発力」だと。「(瞬時に)あらゆる場合を想定して対応する戦闘における思考の瞬発力が必要だ」と分析しているんですね。こういうすごく大事なセリフが1話の中に、山のように出てきて、これぞ『HUNTER×HUNTER』を見ている快感だなと思うんです。
その中で、ビスケが説明する「身体のどの部分に、オーラを固めるのか」という話。それまでは「オーラがある・ない、オーラを纏う、オーラを目に凝縮する」みたいなことを言われていたのに、オーラが身体全体にあるとしたら、右手に30%集めて、残り70%を別のところに集めるという、(オーラの)動かし方をどんどん習い出す。これをビスケは「無限に速くしろ」というふうに言って、全体の攻防力を50:50にして、腕の方にだけ集中させる、これを「流」というんですけど、これを限りなく行う。すると、全然拳が見えない。
この構図の上手さですね。はじめは、ビスケに対してカメラが左側の位置から撮ってて、次にカメラが右側の位置になってる。これは何かというと、同じセリフ、「流」を限りなく速く行うというビスケのセリフですけども、これを言ってる時の読者の目線というのは、ビスケ側にあるんですね、だからゴン達は向こうにある。しかしこっちのコマではゴンが手前にきている。意識がゴン側に行ったからですね。
説明する側と、説明される側の視点の切り替えというのをカメラ位置、これは映画ではタブーの映像技術なんですけど……それを切り替えることによって、読者に見やすくわかりやすくしている。