話題の記事

幻影旅団は最高だ。HUNTER×HUNTER「ヨークシン編」名場面たっぷりのシーズンをおさらいしてみた

幻影旅団の理念は株式会社と同じだ!

岡田:
 幻影旅団の理念だよね。幻影旅団というのは、「トップの命令は絶対なんだけども、トップの命は絶対ではない」という考え方、つまり俺の命令は絶対なんだけども、それは「俺を絶対に守れ」という意味ではない、そうではなくて、俺が決めたことをより貫く、例えば、俺が死んだら誰かが後を継げばよい、頭より足が大事な場合もある、というんだけども、実はここに流れている論理というのは、株式会社の論理なんだよな。

 株式会社っていうのは、社長が大事じゃないんだよ。そうじゃなくて社長が命令した通りのことをみんなが実行するのが大事で、社長が倒れたり、もしくは社長がその命令以外のことをやったり理念以外のことをやったら社長を首にして、組織として生き残ることが目的なんだ。

 幻影旅団とか蜘蛛とか言ってるから良くわかんないんだけど、実は組織の方が大事だと言っている。その意味ではマフィアと全く同じなんだよね。人情にそこそこ厚くて、組織の方がなにより大事で、トップの命令が絶対だからと言って、そのトップの命を守らければいけないとうことではない、どちらかというと株式会社とかマフィアに近い。

 だからマフィアを肯定的に描けなかった理由はここにもあるんだよ。幻影旅団というのは実は、現代組織そのものであって、同時に理想的なマフィア組織でもあるから、マフィアを悪者にして描くしかないんだよな。あるべきマフィア像として描いちゃったから。

 同じようなシーンなんだけども、ここもそうだよね。団長がさらわれて、どうするのかっていうのでみんな揉めるんだよ。

 そこでフランクリンが、「俺たちにとって最悪のケースってのは何だ?」って言ったら、「団長が殺されててみんなが操作されている。鎖野郎は捕まえられずに、復讐できずに逃げている」「それが間違ってるんだ、お前ら。最悪なのは、俺たち全員が殺られて、蜘蛛が死ぬことだ」

 例えばこんなケンカをして蜘蛛が仲間割れすることもいけない。と言っている。これもなんか、売り上げが大事じゃなくて、会社の存続が大事だという株式会社の論理なんだよね。だからこれを読んでいたら、僕らは悪の論理みたいなものを読まされたり、もしくは超能力者いわゆる念能力を持っているような特有の人の論理を読まされているような気になるんだけど、そうじゃなくて現代の論理、現代の倫理が描かれていることがわりと多い。僕はそういうところが好きなんだよね。

 面白いのは団長が占いを自分でしてもらったところで、泣いちゃうところがあるんだ。なんで泣くのかっていうと、この占いの中で「大切な暦が一部欠けて」っていうことで、初めてこの団長クロロはウボォーギンが死んだということがハッキリ分かるんだよね。この段階で思わず泣いちゃって、その後この女の子に対して、「死後の世界ってあると思う? 霊魂の存在を信じる?」ってパパッと聞きだすんだよ。

 そこで実は誰よりもウボォーギンの死を嘆いていたというのを見せるんだけども、でもそれは他のキャラクターみたいに「悔しくないのか」みたいな問いかけをせずに、1回だけ流す涙とその後のリアクション、「死後の世界を信じるか」ということで、なんかこう持って行くというのがですね、この冨樫っぽい物語の作り方として、僕は好きですね。

なぜ悪の集団である幻影旅団に読者は惹かれるのか

岡田:
 今回の主役は幻影旅団だから、読者が好きにならなきゃいけない。それでツンデレに階層をつけているのが、好きなんだよ。役割分担というのかな、例えば、マチやシズク、シャルナークというのは、セリフはあるんだけど感情のないキャラクターなんだよ。ノブナガは、早いうちからゴンのことを気に入ってくれて、心を開いてくれるキャラクターだし、パクノダはゴンとかキルアと一緒にたくさんいたから、徐々に徐々に心を開いてくるキャラクターなんだ。

 団長とかフェイタン。これは最後まで心を開かないキャラクターなんだ。1つの集団の中に、早いうちから心を開いてくれる、徐々に心を開いてくれる、最後まで心を開いてくれないという階層を設けることで、見てる人が本来悪いやつの集団の幻影旅団のことをだんだん好きになってくるんだね。

 集団の中にツンデレ役割を分散させているところが作劇上すごく面白い。フィンクスっていうなんかこうスフィンクスみたいなものを被ってたのが、今回この話の中心で、とりあえず彼がゴンとかキルアをどう見てるのかという目線変化が幻影旅団のキャラづけになってるんだよね。

 なので、お話全部が終わったら、フィンクスも「俺もお前たちのことがそろそろ好きだよ」みたいなことを言ってですね(笑)。大体こんなことを言うと、「殺すぞ。殺すぞ」と言っていたフェイタンもなんとなく許す目線になっている。つまり幻影旅団の成長がある、変化があるということで、この辺が幻影旅団の面白いポイントだよね。

「マンガ」の最新記事

新着ニュース一覧

アクセスランキング