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高見泰地六段が初のタイトル戦登場 丸山忠久九段ー高見泰地五段:第3期 叡王戦本戦観戦記

 「叡王戦」の本戦トーナメントが2017年11月25日より開幕。3期目となる今回から新たにタイトル戦へと昇格し、ますます注目が集まっています。

 ニコニコでは、佐藤天彦 第2期叡王と段位別予選を勝ち抜いた15名による本戦トーナメントの様子を、生放送および観戦記を通じてお届けします。

画像は 叡王戦 公式サイト より

丸山の雁木

 近年はタイトル戦に20代棋士が登場することが多い。力をつけ、30代や40代の強豪を破ることが増えたためだ。2017年度は7棋戦中、6棋戦で20代棋士が挑戦権を得た(そうした状況だから、羽生善治竜王の竜王復位にすごみがあるのだが)。
 タイトル戦に昇格した叡王戦も、そうした2017年度の棋界を象徴するかのように、若手の高見泰地五段が準決勝に勝ち上がった。全棋士参加棋戦でここまで勝ち上がったのは初めて。
 対する丸山忠久九段は40代に入ってもタイトル挑戦する強豪棋士だ。その丸山でも、タイトル戦に出られるチャンスがいくらでもあるわけではない。それに高見のように後輩の突き上げも厳しい。世代間対決でもある対戦は意外な戦型になった。

 大きな勝負を前にしていても、丸山はいつも通りの様子だった。対して、高見は明らかに緊張していた。控室にいても、手持ち無沙汰な感じで落ち着かない様子だった。
 開始数分前に駒を並べ終えると、高見は扇子を広げてジッと見入っていた。それは高見の師匠である石田和雄九段が「祈活躍」と揮毫したもの。対局中はお守りのように握りしめることもあった。2014年の秋、高見は石田九段の家に泊めてもらったことがあり、その際に白扇を渡し、後に揮毫してもらったのだという。今回、初めて使ったそうだが、「これを見たことで冷静になれた」と高見。
 本局の二人は、後手番のときに2手目△3四歩から自分の得意戦法に引っ張り込もうとする傾向がある。丸山が後手なら一手損角換わり、高見が後手なら横歩取りが予想された。

振り駒の様子

 振り駒の結果は歩が3枚。高見は天を仰ぎ、手を後頭部に回して抱え込んだ。叡王戦本戦では3局連続で後手番だ。ただ、最近の高見の横歩取りは勢いがある。叡王戦本戦では渡辺明棋王と豊島将之八段を破り、朝日杯で行方尚史八段にも勝った。

第1図

 15時対局開始。先手の丸山は▲2六歩△3四歩▲7六歩△3四歩に▲6六歩(第1図)と進めた。変哲もない手順だが、丸山が指したのは初めてとあれば話は別だ。雁木を目指した丸山は「研究会でよく指されるので1回使ってみたかった」と言う。本局から4日後の竜王戦でも雁木模様の将棋を指していた。流行形に参入するつもりなのかもしれない。ニコニコ生放送では解説の深浦康市九段が「丸山九段が二段のころ、雁木を指されたことがある」というエピソードを披露していた。
強敵を破って勢いに乗っていた高見としては、得意戦法をサラッとかわされた格好だ。それでも雁木の将棋は経験がある。さほど時間を使わずに指し進めた。

組み合わせの悪さ

第2図

 高見は和服での対局は初めて。グレー系でまとめ、渋くて似合っている。丸山はタイトル戦などで、和服を着ての対局は経験豊富。ガッチリとした体型が際立って見えた。将棋もタフで粘り強い。
 早めに▲6八角と引いたのが丸山の工夫。当初、高見が△7三銀としたのは、右銀を攻めに繰り出す展開を企図したもの。だが、第2図で銀を繰り出しても、▲6八角と前もって攻めに備えた丸山の注文どおりになる。
 そこで、視点を変えて△6四歩としたのが機敏だった。△6五歩と歩をぶつける展開なら、6八角の弱点を突ける。丸山は▲5七銀と6筋を固めたが、「駒組みの組み合わせがまずかった。角が重くて使いにくくなってしまった」と反省していた。
 常識的に見える第2図の▲4八銀が疑問手で、すぐ▲3六歩△6四歩▲3五歩△同歩▲同角と動くべきだったという。丸山が▲4八銀にかけた時間は1分未満。何気ない駒組みが大きな勝負どころだった。これが現代将棋の厳しいところだ。この後、丸山は角を使うことなく終局してしまう。

高見会心の攻め

第3図

 高見は金矢倉などに組み替えず、コンパクトな囲いから速攻を繰り出す。本局だけでなく、全体的に近年の傾向だ。本局では、レーザービームのような後手の角の利きがとても受けにくかった。急所を突かれて、先手陣がゆがんでいく。
 第3図と▲8八歩と受けたところで夕食休憩に。当初、丸山はヒレカツ定食を注文していたが、残念ながら店が臨時休業。結局、親子丼(上)を注文した。親子丼の上に卵の黄身が載っていたり、味噌汁が付いていたりして普通の親子丼よりグレードアップする。
 うな重を頼んでいた高見は、休憩になってもしばらく対局室で考え続けた。「はーはー」と息が聞こえてくる。盤側にいても、これだけはっきり聞こえることは珍しい。緊張と疲労が感じられ、これからの戦いはどうなるかと思った。しかし、その心配は杞憂だった。好手順を発見していたからだ。
 対局が再開されると、まず△6二飛と回る。△7五歩を受ける▲8六金に△6七歩成となり捨てたのが巧妙だ。▲6七同銀と駒が中央に向かった瞬間に△8二飛(第4図)と戻れば、先手は8筋を受ける適当な手段がない。丸山は▲8七歩△8八歩▲7八銀と辛抱したが駒損でつらい。
 深浦九段が「いやー、見事ですね。△6七歩成はこんなに厳しいとは気づきませんでした」とうなった。高見会心の攻めが決まり、後手優勢がはっきりした。

第4図

高見快勝

第5図

 後手は大きな駒得をしたが、歩切れなので不安もある。丸山は後手の大駒を押さえ込むことに期待をかけていた。そうなれば、まだ楽しみはある。だが、高見は冷静だった。第5図の△5一玉と玉座に戻ったのが最後の決め手。▲1五角と打つ筋に備えて、後手は怖いところがなくなった。こう丁寧に指されては、逆転のきっかけが生じない。
 △5一玉から▲3四歩△4五桂▲同銀△6六桂と進んで、丸山投了となった。投了図以下は▲4四銀△同歩▲3三歩成と攻めても、△6七銀の反撃が厳しい。

投了図

 勝った高見は六段に昇段。局後のインタビューで「この1年で同期が先に六段に上がったのが悔しく、それが力になった」と述べた。高見は1993年度の生まれで、斎藤慎太郎七段や八代弥六段、三枚堂達也六段、高野智史四段と同学年にあたる。特に八代六段、三枚堂六段と仲がよく、ライバルでもある。三人で最初に四段昇段したのは高見だが、六段昇段は二人に抜かされた。三枚堂六段には上州YAMADAチャレンジ杯の決勝で敗れた。そうした背景での発言であり、喜びもひとしおだったろう。
 「師匠の叶わなかったタイトル挑戦を弟子にしてほしい」という石田九段の思いも果たした。高見は「ここまで来られたことで、いままで自分がやってきたことは無駄じゃなかったんだと思えました。七番勝負は悔いないよう準備して臨みます。戦っている間も自分は成長し続けられると思うので楽しみです。すべてに感謝の気持ちを忘れず、でも時にはちょっと強気に、自分のポテンシャルを信じて頑張ります!」と意気込みを語った。

(観戦記者:君島俊介)


■第3期 叡王戦本戦観戦記
金井六段、初のタイトル戦進出 行方尚史八段ー金井恒太六段

現代将棋の恐ろしさ 丸山忠久九段ー小林裕士七段

画像は 叡王戦 公式サイト より

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