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なぜ永瀬拓矢は藤井聡太を研究会に誘ったのか?【叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー vol.12】

 6月23日に開幕した第4期叡王戦(主催:ドワンゴ)も予選の全日程を終え、本戦トーナメントを戦う全24名の棋士が出揃った。

 類まれな能力を持つ彼らも棋士である以前にひとりの人間であることは間違いない。盤上で棋士として、盤外で人として彼らは何を想うのか?

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 ニコニコでは、本戦トーナメント開幕までの期間、ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』作者である白鳥士郎氏による本戦出場棋士へのインタビュー記事を掲載。

 「あなたはなぜ……?」 白鳥氏は彼らに問いかけた。

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セクシーな男(松尾歩八段)【vol.11】


叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー

七段予選Aブロック突破者 永瀬拓矢七段

『なぜ永瀬拓矢は藤井聡太を研究会に誘ったのか?』

 永瀬拓矢七段は努力の人である。将棋界ではそう思われているし、永瀬本人もそう語っている。
 大地に根を張った巨木のごとき『根性』という揮毫は、永瀬の性質を何よりもよく表現していると感じる。
 将棋ファンが付けたあだ名は『軍曹』。
 その真骨頂が発揮されたのは、電王戦FINALでの対局だろう。
 永瀬は将棋ソフトを圧倒した上に、バグまで指摘したのだ。「それ放っとくと投了すると思うんですけど」という台詞を聞いて、私は背筋が寒くなるのを感じた。

 ……いったい、どれだけ練習将棋を指せば、こんな勝ち方ができるんだ?

 藤井聡太が四段に上がった直後に行われた非公式戦『炎の七番勝負』においても、ただ一人、勝利した。完勝だった。
 その永瀬が、藤井と研究会を行っているという。
『努力』と『天才』。
 相反する2つの性質は、なぜ引かれ合ったのか?
 努力の人は、天才の中にある何を求めたのか?

──永瀬先生というと、やはり『努力』という言葉が印象的です。

永瀬七段:
 はい。

──四段の頃、アマチュアの加來さんに対局で負けてしまった時に、鈴木大介先生に厳しく叱責されたことがきっかけで努力の大切さに気付き、『私の棋士人生は鈴木大介先生にいただいたもの』とまでおっしゃっておられます。あの時、鈴木先生にはどんなことを言われたのですか?

永瀬七段:
 そうですねぇ。その時に言われたのは……『自分ならば加來さんに負けるわけがない』『プロ棋士が負けるのはありえない』というふうなことでしたね。

永瀬七段にとって鈴木九段の忘れられない言葉
(画像は「【電王戦FINALへの道】#64 永瀬拓矢 一番の先生・前編」より)

──加來さんは奨励会三段まで上がられて、それからはアマ強豪としても活躍なさいました。永瀬先生は奨励会を抜けてプロになったのだから、負けてはいけないと?

永瀬七段:
 鈴木先生はけっこう、アマとプロの差をすごく重んじる先生でして。元奨励会員ということは全く関係無く、アマチュアには負けてはいけないということだと思います。

──ではそれまで永瀬先生は、アマチュアが相手でも、向こうが強ければ負けることもあるだろうという考え方だったわけですか?

永瀬七段:
 そういう考え方でもありましたし、あまり深くは考えていなくて、漠然としていたんですけど……そういう強いきっかけを与えていただいて、考える機会ができたのは間違いないかなと思います。

──永瀬先生はその時のことを『努力と真摯に向き合うきっかけになった』と仰っておられたのですが、努力と向き合うというのは、具体的にはどういうことだったのですか?

永瀬七段:
 その直後に、こちらから鈴木先生にお願いしまして、VS(1対1の練習将棋)という形で教えていただくというのが何年も続いたんですけど。

 やはり最初は……そういうふうに自分を否定した相手にお願いするというのは、後輩ではあるんですが、すごい抵抗がありまして……。

 でもそういう抵抗というのは、すごい恥ずかしいことで。そういう抵抗を持つということ自体がすごく恥ずかしいことで、やはり謙虚さを持って、自分より強い相手に頭を下げて教えていただけるなら教えていただいて。

 現実に対して素直になるというのは……つらいことなんですけど、大切なことなのかなと思いました。

──鈴木先生は、最初は『自分にとって得るものがない』という理由で断ったと。けれど永瀬先生が何度も連絡してくる熱意に打たれて研究会が始まります。そこで永瀬先生は、鈴木先生の次の対局相手が誰かを聞くと、その相手の棋譜をものすごく調べて……。

永瀬七段:
 あ、はい。ありましたね。

──しかもその手がバシバシ当たると。40手目くらいまで当たって、こわいと。

永瀬七段:
 ははははは(笑)。

──けどその時に永瀬先生が仰ってたのは『自分はまだ低段だから強い先生とは当たれない。だから鈴木先生になったつもりになって考えることで、強い人と戦うことができるんです』と。

永瀬七段:
 そうですね。そういう気持ちでしたね。自分の考えていることが、トッププロに対して通用するかどうかを試していただきたかったという気持ちがあったと思います。

──それまでの永瀬先生は、プライドがあったり、自分が一番強いと思っていたりと……もちろんプロ棋士の方ならそういう気持ちがないと戦えないと思うのですが、やはりそういう意識がまだ強かったということでしょうか?

永瀬七段:
 そ、そうですね……本当に、若気の至りと申しますか(笑)。お恥ずかしい限りなんですけど、謙虚さが全く無く……。

 そんな無駄な、上っ面だけのものを剥がしてくれたのは、鈴木先生で。そういうことに早く気付かせていただけたのは、とても感謝しています。

──永瀬先生も、すぐにそのことに気付いたわけではなく、最初はやはりプライドが邪魔する場面もあったと思うのですが、鈴木先生から教わるうちに何か大きなきっかけがあったりしたのでしょうか?

永瀬七段:
 具体的なきっかけは、鮮明には憶えていないんですけど……鈴木先生は次のVSの予定を決めるときに、たとえば自分が『明後日空いてます、5日後も空いてます、10日後も……』と言うと、全部OKをくださってですね。それはとても嬉しいことで、感謝の念がわいてきました。

 あの段階の私の棋力では、強い先生と指せるというのは厳しいと思っていましたので。お相手していただくうちに、徐々に尊敬の念が芽生えてきたといいますか……そういう気持ちの移り変わりもあったと思います。

──永瀬先生は、『人格的にも優れていないと本物のトップの先生とは戦えない』と仰っておられたと思います。そういったところも、鈴木先生から教わったことなのでしょうか?

永瀬七段:
 んー……それは、関係ないというか……。

──あ、関係なかったですか。

永瀬七段:
 ただ、現在トップで活躍しておられる先生というのは、人格的に素晴らしいか、人格的に超越しているか、どちらかと思っていまして。そのどちらかでないと結果を出すのは難しいんじゃないかと。

──では永瀬先生は、超越というよりも、人格的に優れている方を選ばれたと。

永瀬七段:
 超越の方でできればいいなと思うんですけど(笑)。

──永瀬先生は、とてもしっかりしておられると思うんですよ。かなり年上の私が拝見していても、ここまでしっかりした若い方というのは珍しいと思いますし。

永瀬七段:
 あ、いえいえ。

──最近『将棋世界』で始まった、藤井聡太七段について考察する連載【※】でも、永瀬先生は年下の藤井先生を本当に尊敬しておられますし、その尊敬しているという姿を多くのファンの前にさらけ出すというのは、普通は難しいことだと思うんです。それは意識してやっておられることなのですか? それも含めて努力なんでしょうか?

永瀬七段:
 少し昔の言葉なんですけど……『同階級は格上』という言葉が、将棋界には昔からあってですね。

 自分と同階級だと思う相手で、それが年下なら、その相手は格上なんです。

──ああ……なるほど。

永瀬七段:
 なので、大概の相手は自分より下ではない。最低でも同格だと思われる。で、それが後輩だと年下なので、格上になるという。

──はぁー……。

永瀬七段:
 こと、なんですね。なのであまり意識して謙虚でいるというわけではなく、ただその教えを実践しているということなんだと思います。

──そうなんですね。永瀬先生は『将棋に才能は必要ない。努力だけだ』『努力すること、頑張ることは、何かに繋がっている』と仰っておられましたよね。それがタイトル挑戦に繋がったと。

永瀬七段:
 はい。

──そもそも永瀬先生にとって、努力するというのは具体的にはどういうことなんですか? 将棋の勉強をするということですか?

永瀬七段:
 将棋の勉強が軸ではあるんですが、今は『全て』という感じですね。努力というのは。

──全て。

永瀬七段:
 全て……ですし、自分の印象としましては、そのレールというものを作ったのは羽生世代の先生方だと思っているんですね。羽生先生を筆頭に、佐藤康光先生だったり森内俊之先生だったり、他にも大勢の先生方がいらっしゃって……。

 そのレールを上手く敷いていただいたという認識があるんですね。努力という過程の。まあただ私と違うのは、その先生方は大天才なんですよ(笑)。

 それはもう、当然こちらも存じ上げていることなんですが。ただ、年代が違うわけですね。こちらのほうが二十歳近くも若い。だからこちら側としても世代交代できる確かな実力を身につけなければ、と。

──その努力のレールというのは『こういうことをすれば棋力が上がるよ』というのを実証してくれた、ということなのですか?

永瀬七段:
 そうですね。その時代に居合わせたわけではないので、棋書などで拝読しただけではあるのですが……。

 たとえば羽生先生たちの研究会では、一つの局面を駒を動かさず何人かでじっと見続けて、時間をかけてから、お互いの読みを披露し合うというような。今の時代はソフトというものがあって、ちょっと原始的に感じるのかもしれませんが、自分としてはとても尊敬できるので。大切なものだと思うので。

 そういう、羽生世代の先生方が築いてくださった土台。礎みたいなものは、ちゃんと取り入れて、自分のものにしたいと思っています。

──永瀬先生は『知識と知恵は違う』とも仰っておられました。知識という単なる情報を知恵にする過程が努力ということなのでしょうか?

永瀬七段:
 そうですね。知識というのは見るだけで……これも難しい問題ですね。知識をすぐ知恵にできてしまう人もいるんですけど、自分はできないんですよー(笑)。

 それをできる人は尊敬するしかないんですけど、自分はそういうタイプではないと思っているので。上手く知識を磨いて磨いて、知恵という形に昇華してあげないと、なかなか実用できないので。

──永瀬先生はニコ生の解説で『ベイビーステップ』というテニス漫画を読んで、努力というものを学んだと仰っておられました。漫画からも得られるものはあるとお考えですか?

永瀬七段:
 あの漫画から感銘を受けた部分は、前と後ろで揺さぶって……あの、自分はテニスをしたことがないので詳しくはないんですが……前と後ろでボールの落ちる場所を揺さぶれば、必ず取れない場所がある、みたいなことが書いてあったんですね。

 上手くコントロールできれば、絶対に取れない場所があると。将棋では、それはちょっと難しいことなんですが……ただ、他の競技でできるのであれば、将棋にも応用できるはずだとは思うので。そういう原理があるのであれば、少しでも取り入れて……まあ全然競技が違うので、できないかもしれないんですが、そういう発想は勉強になりました。

──週刊少年ジャンプもお読みになると。

永瀬七段:
 あ、はい。

──ジャンプだとやはり『友情、努力、勝利』という三大テーゼが……。

永瀬七段:
 そぉぉうなんですよぉ!(喰い気味に)

──あるわけですよね。そのジャンプで一番盛り上がるのは、天才が勝つ場面ではなく、才能のない主人公が努力して努力して、ライバルである天才に追いついて、追い越して……。

永瀬七段:
 はい、はい。

──そういった主人公にご自身を重ね合わせる部分は、あるのですか?

永瀬七段:
 ジャンプだと、天才イコール勝ちにはなかなかならなくて。それがいいところで(笑)。

 仰っていただいたように、凡人みたいな人が、友情や努力で勝利するという流れなので。その努力の過程を勉強するというか……。

 誰にでも参考になると思うんですよね。何も持っていない人間が、どうやって成長していくのかということが……どうやって勝利を掴むのかということが。やはり漫画なので誇張表現もあるとは思うのですが、一つの方法論として、とても勉強になると思っていて。

 あとは、最終目標が勝利ですから。それは……よいな、と思いますね。

──永瀬先生がお好きな『キングダム』という漫画でも、そうですよね。主人公はいつも死にかけてて……。

永瀬七段:
 はい! そうですね。

──私が永瀬先生の将棋で印象的だったのは、棋王戦で渡辺明先生に挑戦なさった、あの第1局。大差と思われていた局面から、永瀬先生が全く諦めずに指し続けて……渡辺先生が局後に恐怖をおぼえるほど追い詰めて……あのとき、永瀬先生にしか見えない勝ちがあったんですか?

永瀬七段:
 将棋だとですね、王様を詰まされなければ負けではないと思っているので、定義がわかりやすいんですよね。

 どれだけ形勢が離れていても、相手の王様を先に詰ませば勝ちなので。その定義はどうやっても崩れないので。

 なので、自分の王様さえ詰まされなければ、勝負……『戦(いくさ)』は続いていくという。ですからあの将棋も、自分の中ではまだまだ終わる戦いではなかたっということです。

 それは、良くも悪くも……色んな面があるとは思うのですが。

──そうやって対局の現場で努力することと、それ以外の場所で努力すること。この二つの努力は、永瀬先生の中では同じものなのですか? それとも違うものなのですか?

永瀬七段:
 それについては、自分は思っていることがあるんですけど……『対局で努力するのは当たり前だ』というのが、昔から将棋界ではありまして。

 盤の前に座れば、誰だって死にものぐるいで戦うというのが、昔から将棋界の中ではあって。だから盤から離れた所でいかに努力するかが大切なんだと、鈴木先生に言っていただきました。

 誰でも当然する努力をするんじゃなく……他の誰もやらないこと、続けることが難しいことをするのは、価値が違うんじゃないかなと自分は考えています。

 対局で頑張るのは当然。その前の、準備などの段階から勝負は始まっていると思うので。そこでいかに努力するかが大切だと。

──スポーツ報知の北野新太さんの記事で、永瀬先生はラーメン屋さんをやっておられるお父さまの姿を見て、努力……向上心とは何かを学んだとありました。

永瀬七段:
 あ、はい。

──お父さまは、他の職業をしておられたのをやめられて、ラーメンの世界に飛び込んだのですよね?

永瀬七段:
 自分が生まれた頃にラーメン屋を始めたと思います。その前は、市場で働いていたと思うんですが……。

──ラーメン屋さんを始めるに当たっては、色んな場所に修業に行ったり、教えを乞うたりしなければいけなかったと思うんです。ラーメン屋さんを続けていく中でも、修業に出られたと記事にありました。そういったお父さまの姿をご覧になって、永瀬先生も他のプロ棋士に声を掛けることができるようになったのでしょうか?

永瀬七段:
 父は……修業に出た段階でも50歳くらいだったと思います。今は66歳なのですが……年齢が上がれば上がるほど、自分を守る鎧が増えていく……傷つきたくないという思いが濃くなるという印象なんですね。剥がされたくない、傷つきたくない、自尊心がある。

──はい。よくわかります。

永瀬七段:
 父も、ラーメン屋をやっておりまして、一家を支えているという自負があって……家族を守るために、頭を下げて、弟子入りをしたり……向上心もあったと思うんですけど、つらい部分も当然あったと思って。でもそこを受け容れた上で、前に進もうということだったと思うので……。

 それは、どの世界にも通じるものなんだろうなと思いました。

 ましてや自分はまだ30歳にもなっておりませんので、プライドは持つ必要がありませんから、もっと謙虚に、ひたむきに……しなければいけないのかなと、感じましたね。

なぜ藤井聡太はフィクションを超えたのか?【叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー vol.01】
記事はこちら

──なるほど……永瀬先生は、藤井聡太先生と研究会をしておられるんですよね。

永瀬七段:
 あ、はい。

──定期的に、という感じなんですか?

永瀬七段:
 そうですね。彼も忙しいので、まあそんなに多くは……という感じなんですけど。

──それは、あの『炎の七番勝負』で、永瀬先生が唯一、藤井先生に勝たれた。それがきっかけとなって?

永瀬七段:
 えー……と、そうですね。きっかけは……具体的に何がというものはなかったんですけど。まあ当時から強かったんですけど、対局してみて、聞いてた話と違ったんですよね。とても謙虚だと感じたんです。

 謙虚な人は、それだけで強いんですよ。

 謙虚じゃない人は、それだけで自分は評価しないので。

──謙虚じゃないというのは、つまり永瀬先生が仰る、プライドの鎧をまとっている人ということですか?

永瀬七段:
 そうですね。藤井さんは当時まだ14歳とかですけど、既に実力を身に付けていながら謙虚でいるというのは……普通に考えたら天狗になると思うんですよ。自分からしたら(笑)。

 凡人からしたら、天狗になって当然。それだけの才があって、それだけの棋力があって……どうやったって負けがないわけじゃないですか。

 にも関わらず、その段階でも謙虚でいる。それは、才能以上にすごい精神力なのかな、と。

──そういうことを感じて、永瀬先生から『研究会をしましょう』と。

永瀬七段:
 そうですね。それで受けてくれるかは別問題かなと思いましたけど。

──努力という言葉の反対に、才能というものがあると思います。永瀬先生は、才能とはどういうものとお考えでしょう?

永瀬七段:
 才能は、天から与えられるものだと思っていまして。

 自分ではどうしようもない。

 ちょっと脱線するかもしれないんですけど……ゲームとかだと、同じ初期値から戦えると思うんですよ。でも人生というのは……他人と比べたら、すごく低い初期値で戦わないといけないと思うんです。それはまあ、仕方がないとした時に。

 才能というのは……相手の才能というのは、自分ではどうしようもない。だから関心を持つところではないということは、思っているんですね。

 ジェラシーというのは、人間だからあっても仕方がないと思います。でも、そういうことじゃなくて、評価することはあれども、関与できるものではない。こちらが干渉できる部分から脱していると思いますので、それに……何というんでしょうかね、難しいんですけど……。

 こちらも、それ以上のものを……。磨くというのは難しいんですけど。少しでも積み上げて、対抗できるような形に……対抗することはできると思うんですよ。

──はい。

永瀬七段:
 勝負する、ということはできると思うんですね。人と人ですから。いくら天分というものがあっても、人と人ですから、相手も勝つのは難しいと思うんです。

 ただ、こちらに少しでも隙があると……向こうは別のものを与えられているわけですから、はい。そういう意識ではあります。尊敬すれども、嫉妬は全く必要ないという心持ちですね。

──全て自分の中で完結できる、ということなんですね。

永瀬七段:
 そうなんですよ!

 自分の中だけで完結できる話で。尊敬以外のものは必要ないかなと思っています。

──永瀬先生のお話をうかがっていると……『才能は天から与えられたもの』とか『自分の棋士人生は鈴木大介先生からいただいた』とか、誰かから『いただいた』という意識がすごく強いと感じます。

永瀬七段:
 鈴木先生に教えていただいてからですね、佐藤天彦名人だったり、先輩の先生方からとてもお世話になることが多かったんですね。技術面で。

 あちらはほぼメリットがなかったはずなのに、色々と教えていただいて……そのことは自分にとってとても大きな財産で。それは、運が良かったということもあったとは思うんですけど、いただいたものだと思っていまして……。

 それを、返していかなければというか…………何ですかね…………驕ってはいけないんですけど…………これは、何ですかね…………ええと……。

 誰よりも、謙虚でいなければいけないと……。

 もとから持っている棋士は、自分のものだと思えばいいんです。でも自分は全くそうは思っていませんので……。

 常に教わる気持ちで歩き続けないと、この将棋界という世界は、厳しいので……前に進み続けるのが困難になってしまうかなと思いましたので……。

 ひたむきで、謙虚で、前を向いて歩き続けたいと思っています。

──ジャンプでいうと、『友情』の部分……永瀬先生の情熱に打たれてみなさん教えてくださったと思うんですけど、そういう情みたいなものに気付いたということなんですかね?

永瀬七段:
 えーと…………ただ、棋士同士は希薄な関係が多いので(笑)。

 漫画みたいな綺麗事ではないんですけど、自分は、感謝している棋士はたくさんいますし。そこに情が生まれても、仕方がないと思うんですけど……。

──情ではないんですね。情ではなくて……。

永瀬七段:
 感謝。

──感謝なんですね。

永瀬七段:
 やはり、当たることもありますので。情が生まれると、よくないと思っていますので。それは、誰に対してもないほうがいいかなと思っています。

──ありがとうございます。では最後に、叡王戦の本戦で当たってみたい棋士というのは、どなたかおられますか?

永瀬七段:
 メンバーを拝見しても、どなたと当たっても厳しいなと思っています。ただ、強豪と指せるというのは、自分自身モチベーションが上がることですので。

 こういう機会に感謝しつつ、対戦相手が決まったら全力で準備し、教えていただきたいと思っています。


 ニコニコニュースオリジナルでは、第4期叡王戦本戦トーナメント開幕まで、本戦出場棋士(全24名)へのインタビュー記事を毎日掲載。

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