働き方改革でサビ残はなくなる? ベーシックインカムや移民政策で労働環境は良くなるのか、国会議員に質問【話者:ひろゆき・DaiGo・夏野・丸山】
2018年4月末に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議2018」。さまざまな著名人が集まる「超トークステージ」には元2ちゃんねる管理人のひろゆき氏、ドワンゴ取締役の夏野剛氏、メンタリストのDaiGo氏、日本維新の会の丸山穂高議員が登場。
「無敵の働き方」と題したテーマで、現在国会で審議が進んでいる「働き方改革」関連法案について取り上げ、法案が可決された場合、働き方はどのように変わるのかについて議論が行われました。
ひろゆき氏は労働時間の削減によって「無能な人は隠れて無理やり働かないとついていけない社会になる」と個人の能力差による弊害を指摘。夏野氏は働き方が変わることによりセーフティネットの必要性を語り、具体例としてベーシックインカムを挙げると、DaiGo氏もその意見に賛同しました。
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「成果が出る人はいいけれど、無能な人は隠れて無理やり働く」。働き方改革で個人間に差が出る社会に?
ひろゆき:
働き方に関する法案が通ると、どういうふうに普通の人の働き方が変わっていくという前提で考えて作ったんですか?
丸山:
(法案は)今、審議中でして、根本的には簡単に言うとみなさんがもっとフレキシブルに働けるようにしようということです。だいたいの労働者のみなさんは給料が時給制で決まっていると思います。(給料を)時間じゃなくて総額で決めて、あとは自由に休みを取るタイミングとか一日に何時間働けるとかいうのも含めて、ある程度フレキシブルにしようというのが今回の法案です。
ひろゆき:
裁量労働制を増やしていくような状況で、逆に労働者として働けば必ずお金をもらえるということではなくて、働いてもそんなにもらえなくなる可能性もありますか?
丸山:
問題はその裁量労働制の部分は、野党側の追及によってなくなったんです。
ひろゆき:
なくなったとして、自民党は出したいものは出せて通せるわけじゃないですか。どうなるのかっていうのが知りたいんですよ。
夏野:
裁量労働制って結構職種が限定されているので、年収1千万円以下の人に適用されない。
丸山:
野党に言われてなくなった部分以外で残っている部分は、年収が高い方だけなので人口で言えば数パーセント。
DaiGo:
そもそも働き方の改革って、その結果何が起きるんですか?
丸山:
基本的に、労働者が自分の健康を守っていくために規制したい。会社側は労働者の方々をもっとフレキシブルに働いてもらうことで柔軟に仕事ができるようにしたい。このせめぎあいでやっているんですね。
DaiGo:
健康的にというのは、どういう意味ですか?
丸山:
つまり一日何時間以上働いてはダメだという規制をもっと強くすることで過労死を起こらないようにしようと。
DaiGo:
何時間って、どうやって決めているんですか? 科学的根拠があって何時間と決めているんですか。
丸山:
ドクターとか、厚生労働省の審議会で専門家たちと決めています。
DaiGo:
議論で決めちゃっているんだな……。
夏野:
そうだよ。科学性はまったくないんだけど、これはどんどん軽くなっていく方向。だいたい大企業の20代の社員とかって時間を少なくすることに、すごく反対しているんです。
なぜかと言うと、労働時間を短くされちゃうと40代の人に勝てなくなるんです。毎晩5時間ぐらい残業して、40代の人より成果を出してやるっていうことも認められなくなるので。
DaiGo:
実際に健康の部分で言うと、最近の研究だと20代から30代前半まではかなりハードに働いても健康被害は出にくいんですよ。40代となってくると、週に40時間以上働くと認知機能が低下するという研究が出ているんですね。
そういうのを元に決めているんだったらいいんですけれど、議員さんとかが集まって専門家がしゃべっているのとかがあるじゃないですか。僕、科学界で一番信用できないのが専門家の意見で、その次が理学試験で、その次がRCT【※】というのがあって、一番いいのはメタ分析【※】。
このRCTとメタ分析を放っておいて、偉いっていうだけでその人の個人的な見解をしゃべって、それを議論しても、そもそも何が正しいのかを見抜く能力がない人は、何を議論しても意味がない気がしちゃうんですよね。
※RCT(Randomized Controlled Trial)
ランダム化比較試験。評価の偏りを避け、客観的に治療効果を評価することを目的とした研究試験の方法。
※メタ分析
複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析する手法。
丸山:
まさにおっしゃる通りで、DaiGoさんに来ていただいて、そこでお話していただく方が一番ためになると思いますけれども(笑)。
ひろゆき:
裁量労働制って、優秀な人はいいと思うんですけども。普通に働いてDaiGoさんみたいに成果が上がる人はいいと思うんですけれど、能力値がDaiGoさんの半分の人って2倍働かないと「こいつ使えねえ」ってみんなに思われちゃうじゃないですか。だから優秀な人は全然いい社会だと思うんですよ。
でも無能な人にとっては、わからないように隠れて働いて、どうにかして成果を出すっていう無理やり働かないとついていけない社会になっちゃって、むしろ健康被害が増えるは可能性ありませんか? 要はサービス残業ってそれじゃないですか。
「労働8時間で帰ります」って言っているけれど、実際それで仕事は終わりきらないから家に帰って隠れて仕事して、「8時間で終わった成果です」って出していたのがサービス残業なわけで。
DaiGo:
時間のロスがすごいと思って。僕、この前会社を作ったんですけれど、その時に役所とかあちこち行ったんです。オンラインでできれば“秒”で終わるのに、あっちこっち行って、こっちでできない、こっちでお金を払わないといけない、こっちはハンコがいるって、あれらを全部なくせばみんなが働いてる時間は少なくなると思います。
つまりみなさんが働いてる中で成果が出てるところはどこで、成果が出なくてAIで簡略化しても何の問題はない、むしろ幸せになるところを削ればいいわけで。
丸山:
おっしゃる通りで、AIになると仕事がなくなるというよりは、むしろ私は逆だと思っていて、豊かに過ごせる時間が増えると思います。要は人間がやらなくていいものはAIにやってもらって、それ以外は人間がやるべきところをやればいいと思います。
ひろゆき:
それは嘘ですよ。だって元々江戸時代の人たちって7割が農民で、どんどん農業が少なくなったら別の仕事が出てきて、今平成の時代でこれだけ便利になっても結局まだ一日8時間以上働いているわけじゃないですか。世の中が便利になっても、労働時間は減らないんですよ。
夏野:
ちなみにそれは日本だけの話。シリコンバレーの企業なんて労働時間はどんどん減っているんだよ。金曜日の午後3時に高速道路を走ったら、全員帰っている。
ひろゆき:
ごく一部の成功した企業の例だけで……。
夏野:
いやいや、他のところも。たとえばミシガン州のデトロイトも不景気のせいで午後5時には帰っているんだけれども、給料は増えている。
ひろゆき:
オランダとかもワークシェアリングで給料が下がって労働時間が短いとか。
夏野:
給料は増えている。経済全体が成長しているから。
ひろゆき:
シカゴの場合は経済が下がってますよね。
夏野:
全体的に上がっているからごまかされちゃっている。
「ベーシックインカムで働かない人を増やしたほうが、日本は豊かになる」
夏野:
非常に重要なポイントは、社会だからどうしても能力が出ない人もいます。それから病気になったりとかいろいろなこともあります。だからその人たちに対してのセーフティネットをどう作るかっていうことのほうを政府がやるべきで。
働きたい人もいれば働きたくない人もいるので、働きたい人はどんどん働けばいいし、働きたくない人は最低水準の生活を保障するって憲法に書いてあるのを、どうやって保障するかっていう議論をしたほうがいいと僕は思うんですけれど。その時に、やっぱりベーシックインカムという話が出てくるんだよね。
DaiGo:
僕、賛成です。
ひろゆき:
(ベーシックインカムっていうのは)毎月日本人だったら誰でも7万円、8万円もらえるっていう制度。今だと生活保護は申請して通ればもらうことはできるんですけど、仕事がない証明とかしなきゃいけないんですけれど、(ベーシックインカムなら)申請は不要で働いていても月7万円、8万円もらえますよっていうシステムにしたら、社会保障とかもシンプルになるし、年金の払い込みとかもなくなるし。
夏野:
僕も賛成。生活保護の資格があるかないか審査のために、すごい数の人がやっているんだけど、(ベーシックインカムなら)それもありません。
DaiGo:
一定の収入をあげるから、もっとほしかったら働けよ、そうじゃなければ別に働かなくてもいいよということです。
夏野:
このベーシックインカムに賛成の人。
夏野:
反対の人は? ゼロ?
ひろゆき:
反対意見としては、そんなにお金をもらったら働こうと思う人が少なくなっちゃうから労働意欲が下がるのがよくないっていう。
丸山:
もう一つは毎月7万を国民のみなさんに配ろうと思ったら、予算が100兆円近くいるという話なんです。
夏野:
でも公務員はだいぶ減るよ。審査がいらないから。
ひろゆき:
年金で払ってる額の7万円分は、国が払わなくてよくなるので、そこの部分は行ってこいなんですよ。それで生活保護の人の分も減るわけじゃないですか。だから予算は100兆円もかからないんですよ。年金を払う人の額は毎年毎年増えているじゃないですか。
なので実はベーシックインカムをはじめる時の国の負担額っていうのは、毎年減っていっているんですよ。実は計算するとそんなに大きな財源はいらないんですよ。
丸山:
問題はいずれにしても7万円を払うために、90兆円、100兆円あるいは何十兆円というお金がいるわけで、これをどこから持ってくるかという議論をちゃんとしないといけません。もう働かなくていいなら働かないと私も思います。そういうことであれば、やはりその分の所得が減るわけで、所得がない方からお金を取ることはできないですから。
そうすると財産を持ってらっしゃる方から、財産をいただく。相続税を今より高くすることでその財源にする。もしくは消費税を上げるとかいろんなことを考えなければいけません。それでも果たして月々7万円を配るのはいいのかっていうのも、一つの論点です。
ひろゆき:
働き方改革の話に戻るんですけれど、今大企業って基本的には日本の足を引っ張る側に回っちゃったじゃないですか。会社員として毎日働きますという人が、実は富を生むんじゃなくて実は足を引っ張る側になっていて、今、個人でうまくいってる人たちっていうのが「アプリ作りました」とか「一人でアニメ描きました」っていう人で。
『君の名は。』みたいに成功したアニメーターもいらっしゃいますし。なので実は自由な時間をクリエイターに与えて、それが“モノ”として海外で売れるっていうほうが利益率が高い時代になっちゃってるわけじゃないですか。
たとえばFacebookって何も役に立たないんです。人間がメッセージ、会話するだけのツールなのに、めちゃくちゃ利益が高いんですよ。なので役に立たないよくわからないものを作れる個人を増やしたほうが、最終的には利益の額は増えるはずなんですよ。
今までの大企業の役に立つものを作ったほうが利益が出るというのは実は誤解で、役に立たないものを個人がボコボコ作っているほうが、利益が大きい社会になりつつあるっていうところを認識していただけると、ベーシックインカムで働かない人を増やしたほうが、実は日本は豊かになるんじゃないかなと思うんですよ。