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「ぼくは“セカイ系”シン・ゴジラが見たかった」「天皇のタブー“儀礼”こそ省略すべき」東浩紀×猪瀬直樹×津田大介

ずっと続いている「儀礼」こそがタブー

津田:
 せっかくのニコ生ですから、アンケートをやってみますか?

猪瀬:
 やるのは、いいんだけどね。要は、東さんは真っ当な事を言ってるんだよね。真っ当な事を言い過ぎたんだよね。

東:
 僕は真っ当な人間ですから。

猪瀬:
 だから、少なくとも今までは、そうだったという事だよね。つまり、それすら自覚的じゃなかったって事なの。常に日常性と国民っていうのはね。意識の部分と、無意識の部分との。

東:
 とにかくご本人がそう言ってしまっている以上、何とかしてあげるしかないんじゃないかな。

猪瀬:
 だからもう12月31日と1月1日にするかって事だよね。

東:
 そういう新しい天皇制にするしかないですよね。

津田:
 パッとやるのであれば、本当に今年の12月31日とかに生前退位ができれば、ベストなわけですよね。

猪瀬:
 だから結局ね、結論なんてすぐに出ないんだよ。もう5、6年前から、こういう話を言ってるわけだよね。言っていても政府は――

津田:
 ここまで、何もしてないですからね。

東:
 たとえ急いでやってもさ、陛下の体調が急変する可能性だって、お年だから全然ありうるわけだし。いずれにせよ、悠長に数年間も議論してるって事になってしまったら、さっき言ったような話になってしまうわけだから。

猪瀬:
 そうですね。

東:
 それは避けていかないといけないと、僕は思うんだけどね。

津田:
 僕がアンケートをやりたいと思ったのは、「生前退位は賛成ですか?反対ですか?」っていうのは、ほとんど賛成だと思うんですよ。ただその後に、今の猪瀬さんの話とか、東さんの話を聞いたら、「実際にできると思いますか?」っていうのも、両方とも問いたいというのがあって。

猪瀬:
 それで要は何かと言うと、国家とは儀礼だから。儀礼の部分が、必ずあるんだよね。だから、ネイティブ・アメリカンの羽飾りのような部分が、国家には常にあるわけよ。僕は都知事をやっておもったのは、副知事の時は内務大臣みたいな事をやってればいいわけでしょ?ところが都知事、大統領になると、儀礼ばっかりなんだよ。

 石原さんは結構サボっていたって言うけど、あれは儀礼をやっていたんだよ。いろんな表彰状とかね。そんなのもう、一週間に何回もあるんだよ。いろんな大使が来たりとか。僕なんか仕事をやってた所に、それをやると。大使が来たりとか、全部の挨拶を受けるんだよ。今も、年間30人ぐらいの大使が、東京駅から馬車に乗って来るんだよね。都知事でも忙しいの。そういう仕事と儀礼とが、一緒に来ちゃうんだよ。

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東:
 でも10パーセントは“いいえ”か。

津田:
 はい。10パーセントは“いいえ”ですね。

猪瀬:
 これは、こんなもんなんだよ。

猪瀬:
 100歳の表彰っていうのがあってさ。そんな事をやってるのを、知らなかったんだけど。そりゃ20年前に100歳の人は10人か20人しかいなかったけど、今は100歳の人は2万人いるんだよ。だけど表彰するって決まってたから、100歳の人の家に行って、表彰をした。だけど「もう来年からやめよう」って言ったの。そりゃ1人か2人の時は表彰に行ってもよかったけど、100歳の人が東京に2万人いるんだから。

 つまり、いろんな事が儀礼として積み重なってるわけよ。あとは勤労ナントカカントカとか、表彰とかね。そんなのは、しょっちゅうだよ。実際の政治的な意思決定と、関係無い儀礼っていうものが、国家にはいっぱい。アメリカのインディアンのヒラヒラみたいなのが、いっぱい付いてる。

東:
 国家は、それで保たれてますからね。

猪瀬:
 そう。だからそれが国家なんだよ。だから神主さんが、こうやって大麻(おおぬさ)を振るう。誰でも、お葬式とか結婚式とかで神父さんを呼んだりするじゃない。ああいう儀礼っていうのが、あるわけ。それが国家なんだよ。みんな、そこの部分を国家の問題として考えてないけども、それが大きいの。結局それは天皇陛下の役割として、やっているわけよ。元首としてね。

津田:
 じゃあ二つ目の質問をお願いします。今の猪瀬さんの話を踏まえて、「生前退位は現実的に可能だと思いますか?」という質問です。

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津田:
 なるほどね。「結構、難しいんじゃないか」と思っている人が、37パーセント。

東:
 でも6割ぐらいが「できる」と思ってる。

猪瀬:
 だけど結局ね、ご本人は10年ぐらい前から言ってるわけよ。平成20年ぐらいから。あと2年で平成30年になるでしょ。平成20年になる頃から、もう言ってるわけ。摂政にするか、生前退位するかで、そういう事を言ってるわけよ。それが全然、動いて来ないわけ。そんな球を投げられても、政権はさっきのシン・ゴジラの冒頭と同じで、ずっと皆いろんな事を言って。役所に振ると、みんな回避していくから、決定しないわけ。

津田:
 この問題を先に解決して進める場合に、どこがどのようにリーダーシップを取るべきですかね?

猪瀬:
 だから儀礼の部分っていうは、最大のタブーなんですよ。ずーっと続いているものだから。これは最終的には総理大臣の決断しかないんだよ。
 
津田:
 なるほどね。それは安倍さんができると思いますか?

猪瀬:
 分からない。

東:
 いまや安部さんはかつてない安定政権をもっているわけだから。こういう時にこそ、リーダーシップを発揮してもらいたい。

津田:
 そうなんですよね。実は、それができるハズなんですよね。

猪瀬:
 そうだね。民主党政権は、3人も変わっているからね。3・11もあったから。

津田:
 ただ、お気持ちとして、お言葉を表明されたからこそ、本当だったら政治的決断をやりやすくなったわけですよね。多少は。

猪瀬:
 そういう意味では、安定政権なんで。やろうと思えば、できるはずなんだから。今度は、まず総理大臣が、どこかに振るよね。その振った先が、すぐにやるかどうかなんだよ。

津田:
 あとは、世論の後押しもあるわけですからね。

猪瀬:
 有識者会議を9月に開くとか言ってるけどね。有識者会議でまとまってくれば、答申が出るから。そうしたら・・・

津田:
 しかしそれだって、半年とか時間をかけていたら・・・

猪瀬:
 ダメになります。だから、遅いんだよ。

東:
 しかし本当に、それで生前退位ができなかったら、後世に対する負債がすごく重くのしかかってくる。

津田:
 不敬感がすごいですよね。

東:
 そんな国は嫌だな。

猪瀬:
 「嫌だ」とか「良い」とかいう問題じゃないよね(笑)

東:
 「嫌だ」ぐらい言ってもいいじゃないですか(笑)「嫌だ」とか「良い」もダメなの?あぁ、“鳥越的”なのか。

津田:
 どうですかね?そういう意味で言うと。

東:
 「嫌だな」も、リベラル的なのかな?

津田:
 そんな事は、ないでしょう。単に、子供っぽいだけなんでしょう(笑)

東:
 でも嫌じゃん。そんな国。

猪瀬:
 「嫌だ」っていう事を言うのは、難しいんだよ。キチッと、相手に「嫌だ」って納得させる事が嫌だから。ただ「嫌」って言っても、相手も「嫌」と思わないからさ。
 
東:
 そうかぁ。

宮内庁は天皇の味方なのか、そうじゃないのか

猪瀬:
 だから、そういう組立を。そういう意味では、シン・ゴジラ的なんだよ。どの役所に振るか。これは宮内庁なんだけど、宮内庁は天皇の周辺だから。
 
津田:
 でも他の外務省とかも全部含めて、当然、いろんな所が影響を受けるわけですよね。

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猪瀬:
 そうそう。だから、いろんな所が出てきますよ。だいたいオリンピック招致の時も、大変だったわけだから。「皇族を、ブエノスアイレスに連れて行くのかどうか?」って事で。そうすると「天皇の政治利用だ!」とか、言われるわけだよね。「平和の祭典なんだから、政治利用じゃないだろう!」って、何度も宮内省に交渉するわけだよね。あの交渉も大変だったから。

 当時、ここの部分は触れにくい場所だから、交渉って、非常にやりにくい世界だよね。そこに「じゃあ、どの役所が責任を持ってやるのか?」と、いう事だよね。でも、もちろん宮内庁は宮内庁で、立場があるんだけど。「天皇陛下がそう言っているんだ。」って事で。

津田:
 すごく素朴な疑問なんですけど、宮内庁っていうのは誰の利害を代弁しているんですか?どういう力学で動くんですか?もっとシンプルに言うと、天皇という存在の味方か、それともそうじゃないのか。

猪瀬:
 それは重要な質問なんだけど、そこが難しいんだよね。昔は、京都から来た人達が守ってたんだよね。あるいは、皇族・華族というのがいてね。入江侍従長って人が昔いたけど、あの人は元々は京都から来た人だよね。

東:
 戦後の結構な時期までは、そうだったって事だよね。

猪瀬:
 『日本のいちばん長い日』では、侍従長が出てくるでしょ。徳川家の人がいたりとか、とにかく本来は貴族なわけよ。ところが、今はもう貴族がもういないわけ。そうすると、宮内庁の場合、役人が出向なんだよ。

 僕は本当は、宮内庁というか、天皇家を民営化したほうが良いと思うんだけどね。役人に固められちゃうと、意志を伝えても、なかなか伝わりにくくなってくる。だからオリンピック招致で「ブエノスアイリスに皇族を出してください」って時に、皇族はやる気になってるわけよね。ところが、宮内庁が勝手にガードしちゃうから。高円宮妃殿下が最後に言ってくれたんだけど、やる気はあったんだよね。ところが宮内庁が、なかなか出してくれないわけですよ。

津田:
 となると、猪瀬さんの本でもよく出てるけど、つまり皇族をガードするのは、宮内庁は役人が入ってきて官僚制になった事によって、自分たちの省益しか守らなくなってしまった。という事なんでしょうか?

猪瀬:
 そんな感じがあるよね。だけど、一緒にいるから、できるだけ天皇家の利益を代弁したいという気持ちにもなってる。だけど今度は、それぞれが、どこまで責任を取るかがハッキリしないから。

津田:
 そうすると、特にここ10年から15年ぐらい、皇太子の雅子妃殿下のリーク報道がたくさんあるわけじゃないですか。あきらかに皇室方面から出てきている、ネガティブなリーク報道っていうのは、どう読み解けばいいんですか?

猪瀬:
 だから、一緒になって守る人達がいなければならないよね。

東:
 宮内庁の中で“天皇派”と “出向保身・官僚派”が別れてるってことですか?

猪瀬:
 だから、もう貴族がいなくなっちゃったわけだよね。元貴族が完全に。元々は、それなりに貴族の子供たちとかが居たわけなんだよね。

東:
 いまや皇室の側に立つ宮内庁の役人は、いないのだと。

猪瀬:
 宮内庁の役人はニュートラルではあるけども。昔は天皇家も皇族、あるいは華族っていうのは、ある種の一体感みたいなものが、あったわけ。それは、ある種の古い体制なんだけども、どこかにアンシャン・レジームがあるわけよ。そういうものが段々と滅びて行くと同時に、縦割りの官僚機構が近代的になり、合理主義的になり、ドライになり、そういう事になってきてる。

東:
 それを前提にするのであれば、ますます生前退位をして、天皇制をより近代化するしか道が無い。

猪瀬:
 今の話って、その言葉じゃ、救いきれない話だよね。“近代化”って、どういう事よ?

東:
 就業規則を決めて、健康状態に配慮をしつつ有給も与えるとか、そういう事じゃないかと思うんですが(笑)

猪瀬:
 そうしたら、“ありがたさ”とかが消えちゃう。

東:
 それはもちろん消えますね(笑)

猪瀬:
 だから、そういう問題じゃないからさ(笑)

東:
 でも逆に、そこら辺が曖昧であるからこそ、今の天皇陛下は、どっち側でも掬いきれない所にポンと落ちてしまっているわけですよね。

津田:
 本当に3・11以降、毎週末に必ず遠くに行かれているっていう事が、人々に伝えられいたというのを見て、そこがよりまさに生贄なわけですよね。ご老体に鞭を打って、やられているわけですからね。

猪瀬:
 やっぱり、聖なる空間っていうのは、必要なんだよね。空虚な中心みたいなものっていうのはね。国家空間の中で。それを演じるって事は、半分は人間じゃないんだよね。だけど肉体は人間だから、ギリギリ限界まで来ているという。

東:
 でも聖なる空間と、祭祀王としての天皇を守るためには、当然、祭祀王の天皇を支える前近代的な組織が必要なわけですよね。

猪瀬:
 そうだよね。

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東:
 ところがその部分は、象徴天皇制に変わった事によって、戦後粛々と合理化・近代化が進められた。祭祀王だけは存在してるんだけど、祭司を支える組織が無いって状態になっている。

 そこで今の陛下に、様々な負担と矛盾が集中してるって事ですよね。だとすると、やっぱりそこで前近代的な祭祀王を中心とした、あるべき宮内庁をもう一回立ち上げるのが無理である以上、やはり合理化しかない気がするな。

猪瀬:
 だから、さっきから「“合理化”ってなんなの?」って言ってるわけじゃないですか。

東:
 だから有給とか・・・少なくとも今の天皇に、あれだけの公務が押し付けられないような形ですよね。

猪瀬:
 本当はすぐにでも、摂政か何かにしてやった方が良かったと思うんだけどね。それは本人が否定してるんだから、できない。何年か前に、火葬って言い出したよね。

東:
 覚えています。ありましたね。でっかい墓を作りたくないって話ですよね。

猪瀬:
 多摩の方にお墓が、御陵があるの、知ってるよね?数年前に「そういうお墓に入りたくない」って言ってる。美智子皇后と、「奥さんと二人で、ひっそりとした火葬でお墓に入りたい」って言ってるわけ。だから、非常に人間的で、今の時代の人間なんだよね。

東:
 「多摩御陵の中に、一緒に入りたい」みたいな感じじゃなかったっけ?

猪瀬:
 火葬だって。

東:
 でも火葬でも、どこかには入るわけでしょ?

猪瀬:
 火葬じゃなきゃ土葬だろ?

東:
 土葬だから大きな御陵が必要なんですよね?

猪瀬:
 土葬っていうのは、要するに朱付けなんだよね。判子の朱だよ。朱に付けてお墓に入るのが、昔の作法だったわけよ。

津田:
 そういう大仰な儀式的なものじゃなくて、火葬でと。

猪瀬:
 でも王政復古というのは、そういうものだよね。

近代の合理性で天皇制を再定義はできるのか

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津田:
 猪瀬さんは、女系天皇問題については、どうされるべきだと思いますか?

猪瀬:
 それは、現実的に可能かどうかって問題だよね。だって、婿さんはどこから来るの?

東:
 でも女系天皇も、やれないとなると・・・

猪瀬:
 だから、それもやるとしたら、そういう議論をちゃんとしなきゃダメなんだよ。その時に、当たり前だけど「明治維新からどういう認識で来たのか?」とか。そういう戦後民主主義だけで整理できない問題を、きちんと整理し直さなきゃいけないんで。今回も、そういう発言を10年前からしているのに、常に問題を先送りにしてきた。

東:
 先送りにして来たから、議論をするべきだというのは正しいと思うんですが。とはいえ、結局は、議論をするとなると、今までのまま近代国民国家の外部にあるものとして天皇制を捉え続けるのか、それとも近代の合理性の中で天皇制を再定義するのか、二つの道に分かれますよね。その時に、猪瀬さんは、どちらの立場なんですか?

猪瀬:
 そんなこと言ったって、近代の合理性で整理できないじゃない。

東:
 でも、これは繰り返しにもなりますけど、ご本人が「近代の合理性の中で自分を再定義して欲しい」っておっしゃってるようにも見えますよね。

猪瀬:
 でも、それは限定的な再定義だよね。だって、万世一系っていう神話は生きてるわけだから。それを否定するわけにはいかないでしょ?

東:
 つまり、皇室典範の書き換えはしないべきであると?

猪瀬:
 いやいや、だから、「皇室典範を書き換えるなら、もう一度議論をし直さないとね」って言ってるわけだよ。
かわいそうだからっていうので始めるとパッと行っちゃうわけだけど、そういう話じゃ終わらないよね。

津田:
 かといって、皇室典範を書き換えるとなったら、相当大変なことが待ってるぞ、と。無責任に「かわいそうだから」とか言ってる場合じゃないだろ、という。

猪瀬:
 書き換えるための議論をしなきゃいけないから、それを安倍さんが課題として受け止めないといけないよね。

津田:
 それは、有識者会議だけでやるっていうだけだったら足りなくないですか?議論っていうなら、それは国民的に開かれたものでやってかないことには――

東:
 それは鳥越的なんじゃないか(笑)?

津田:
 何がですか?

東:
 民主主義的に決めようってことでしょ?

津田:
 いや、そうじゃなくて、有識者会議でそれが話されたところですごく時間もかかるだろうし、今、猪瀬さんが指摘していたような問題点も共有されないまま結論が出てきて終わりじゃないですか。今のメディアの事だったら。それじゃ意味が無いってことだと思うんですよね。

猪瀬:
 そうそう。今のメディアはそれをちゃんと受け止められるかどうかってことだよね。

東:
 猪瀬さんはやっぱり「議論が必要だ」って言い方で語られてるけど、生前退位にはある程度懐疑的というか、まあ、距離を置く見方だと思うんだけど。でも、僕はやるべきだと思うな・・・。

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