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「安倍が敵じゃないぞ、安倍に任せても大丈夫と言っている人が敵だぞ」社会学者・宮台真司が改憲反対派に提言

憲法は他者と向かい合いながら権力を行使する枠組み

木村:
 では誰の意思が正しい憲法の意味なのかというと、これは議決されたテキストしか意思はないわけですよ。だから純粋な原意主義で条文を解釈できるほど甘くはないということですね。

 憲法という物を置くのはなぜかということを考えると権力者を他者と向かい合わせるということがすごく大事なことです。

 権力というのは他者の視点がない形で使われると、ものすごく悪に使われるわけですよ。つまり権力というのは深い考えなしに行使された時、極めて残酷に使われるわけですね。

 これに対し、憲法というのはある意味では誰にとっても他者なのです。私が読んでも私が書いた文章ではないですし、宮台先生が読んでも宮台先生が書いたものではないし、あるいはこの憲法を制定した当時の吉田茂にとっても自分で案を帝国議会に出した首相かもしれないけれども全部自分で書いたわけでもないし、議決されたテキストが自分の意思を完全に表現したものでもない。誰にとっても他者なわけですよね。

 他者の書いた文章に則って「私は権力を行使していますよ」とこの文章の意味を解釈して他者と向かい合いながら権力を行使するという枠組みなので。憲法というのは誰にとっても他者であるというところがポイントなのですよ。

宮台:
 腑に落ちますね。僕たちはプラットホームのファウンダーではないから、もちろん事情を知らないということはあるけれども、プラットホームに馴染んでしまっているという時点で馴染んでいない人たちが書いたものがまさに他者が書いたものですね。そういう意味ではもちろん統治権力も他者に向かい合うことになるけれども、実は僕たちも憲法を読むことで他者に向かい合うことになりますね。よく「統治権力に対する命令が憲法」で「市民に対する命令が法」みたいなものがあるものの。

木村:
 レッシグ先生が言っているのも自分がこう読みたいからこう読むというのが憲法テキストではないってことですね。ファウンディング・ファーザーズなら、どう考えるかを考えろ、というのは「他者であるファウンディング・ファーザーズと向かい合って権力の使い方を考えなさい」というメッセージですね。

宮台:
 すごい。

ジョー横溝:
 宮台さんがこんなに納得している顔は初めて見た気がするけど(笑)。

木村:
 憲法のことが嫌いだったり憲法の悪口を言ったりする人は他者と向かい合いたくないのですよ。

ジョー横溝:
 そういうことだ。

宮台:
 つまりヘタレということだ。ヘタレ=クズ。なるほど。

ジョー横溝:
 (笑)

木村:
 だから自分のやりたいことしかやりたくない、言いたいことしか言いたくないという人は「まず憲法を見てから権力を行使しましょう」と言われるとすごく嫌なわけですよね。

宮台:
 「見たくないものは見たくない、見たいものしか見ない」安倍首相のことだ(笑)。

一同:
 (笑)

ジョー横溝:
 そう考えるとインターネットというのは見たいものしか見ないという文化じゃないですか? 人間関係も効率化してくるし、その真逆に憲法というものがあるのだなというか。

宮台:
 そういうことだね。

ジョー横溝:
 ある種の普遍性というか偶然性みたいなものに気づかしてくれる。

宮台:
 第9条の話の時に僕は左翼批判をすると思うけれど、今の木村草太さんのおっしゃったことを念頭におくと自分が都合のいいように憲法を読んで来なかった人たちが、憲法を守れという人たちにも大勢いてそれが僕は不愉快でたまらないのだということがよくわかりました。

木村:
 今の他者と向かい合う話というのは、最近、対談本を出させていただいたSF作家の新城カズマさんの評論を見て考えたことです。新城さんは、noteでスターウォーズの最新作の評論をしている時に、「悪」について面白いことをおっしゃっていたのです。「スターウォーズの最新作で悪の描き方が非常に良かった」と、「悪というのは非常に空虚なものでそれが本当に空虚に描かれていた」と、「そこが良かった」とおっしゃっていて。

 空虚という言葉を私なりに解釈をすると他者と向かい合っていない、だから何にも深い考えなしに行ってしまうということで、それに比べると憲法に則ってというのは非常に窮屈な感じがするのですけど要するにこの窮屈な感じというのが立憲主義なのだなと思いますね。

宮台:
 僕は他者というと僕の少し先輩の大澤真幸さんが「未来の他者」をキーワードにしておられた時期があるのだけれど、彼の未来の他者という言葉を聞いた時に思い出したのがウルトラマンのガヴァドンという怪獣が出てくる「恐怖の宇宙線」というものです。

 子供が怪獣の絵を描いた土管に宇宙船のビームが当たって、絵がガヴァドンという怪獣になってしまうのです。それでウルトラマンと科学特捜隊はそれをやっつけようとするのだけれど子供達が「ウルトラマン宇宙に帰れ。ガヴァドンを殺さないで。ワァー」と叫ぶのです。実は家のすぐそばの近所の公園がロケ場所なのですけれど(笑)。

ジョー横溝:
 それいらない情報ですね(笑)。

一同:
 
(笑)

宮台:
 あそこでもウルトラマンと科学特捜隊は子供という他者に向かい合って、それでウルトラマンは方針を変えるのですね。最後はガヴァドンを連れて行くのだけれど、「七夕の度に空を見れば会えるようにしてあげるよ」とガヴァドンを星座にしてくれたという話ですね。ムシバという主人公の男の子が「雨が降っていたらどうするのだよ」と言ってチャンチャンと終わるという(笑)。

一同:
 (笑)

宮台:
 他者は本当に大事だよ。

深い考えはない安倍首相「安倍が敵じゃない、安倍に任せても大丈夫と言っている人が敵」

木村:
 国家権力が守るものだとか国家権力を制限するものだというのはそういうことです。権力というのはまさに相手を無視して行使できるということが本質ですよね。相手を無視してということは何も考えずに行使できるのですよ。だからその時に何も考えずに他者と向かい合うのは危険ですよと、だから権力を縛るということは権力者を他者と向かい合わせるということと言い方を変えているだけと言えば言い方を変えているだけですね。

宮台:
 そうですね。木村草太さんは上品な方だから言わないだろうけれど、当然含意されていることは安倍晋三に任せればいいのだとか言っているクズなヘタレ。

一同:
 (笑)

宮台:
 そんなクズなヘタレをも他者に向かい合わせる力があるのが憲法なのだよね。

木村:
 今深い考えはない権力者の問題を議論しました。そういえば、私は去年の5月3日に安倍さんが自衛隊を明記したいとおっしゃっていたのでコメントを求められたのです。私はそのとき「安倍さんはなぜ、あのような提案をしたのですか?」と聞かれて「深い考えはないと思います」といろんなところでコメントしたのですけれど。

一同:
 (笑)

木村:
 「深い考えはない」ってどういうことかというと自衛隊明記を提案することを今やると政権与党にとっては、すごくまずいのです。なぜまずいかというと自衛隊を明記する場合、自衛隊の任務を書かなくてはいけないでしょう。どういう範囲で武力行使するかということです。与党から見ると、この書き方が非常に難しいのです。

 例えば、日本が武力攻撃を受けた場合に、個別的自衛権を行使することまでしか認めない、と書くと安保法制が憲法違反であることが今以上に明確になってしまうわけですね。

 これはできない。じゃあ安保法制の集団的自衛権の限定容認を書きます、となると国民投票の争点は「自衛隊の明記の是非」ではなくて「集団的自衛権の明記の是非」になってしまうわけです。

 純粋に集団的自衛権の是非で国民投票を勝てるのかというと2015年の反対運動の強さを思い出したらなかなか難しいでしょうね。じゃあ否決されたらどうなるかというと、国民投票で安保法制にNOが突きつけられた形になるわけですよ。安保法制は無事じゃ済まないでしょう。

宮台:
 その通りですね。

木村:
 だから安保法制込みで書いて発議してもまずいし、個別的自衛権に限定して書いても駄目だし、どっちいっても駄目ですね。

宮台:
 なるほど。確かに深い考えはないわ(笑)。

一同:
 (笑)

木村:
 深い考えがあったらあんなこと言えないのになぜこんなことを言うのだろうと(笑)。

ジョー横溝:
 なぜそんなことを言うのですか(笑)? 宮台さん大好きな人ですもの。

宮台:
 安倍さんはいい人なのだけれど、深い考えが難しい人なのだよね。安倍さんはね僕は結構好きな人なのです。安倍さんの家が近所なのですけれど、ラッパーのKダブシャインさんが安倍晋三さんのご自宅の庭でよく遊んでいたらしいのですけど、全然怒らないで「いいよいいよ」と言う、「いいおじさんだった」と「それは本当にいいおじさんだね」ということですよ(笑)。

一同:
 (笑)

木村:
 この1年奥さんを守りきっているじゃないですか(笑)?

宮台:
 そうだよ。守りきっている。いいおじさんだよ。

ジョー横溝:
 確かに(笑)。落語だったらいい話ですよ。

宮台:
 だから左翼、安倍が敵じゃないぞ。安倍に任せても大丈夫と言っている人が敵だぞ。その中に役人もいれば政治家もいればクソな豚もいるぞ(笑)。ごめんなさい。豚と言うと動物愛護の精神に反するというコメントが寄せられる(笑)。

ジョー横溝:
 これだけ言っといて、そんなこと今更気にしているのですか(笑)? そこでヒヨってどうするのですか(笑)?

木村:
 だからクズと言うのですね(笑)。

宮台:
 そうです(笑)。

一同:
 (笑)

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