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「漫画が無料公開され続けることで新人にチャンスがなくなる」 山田玲司氏が“漫画村”に物申す

 3月14日放送の「山田玲司のニコ論壇時評」にて、漫画家・山田玲司氏が、作者の許可なく漫画の内容をアップデートし、漫画家やユーザーから批判の声が上がっているWebサイト「漫画村」について、番組アシスタントの乙君氏しみちゃん氏とともに言及。

 自身の漫画家としての経験と重ね、「コンテンツは命と変わらない」と熱く語り、その上で「漫画が無料で公開され続けることで、新人に投資ができず、チャンスがなくなる」と、漫画業界の未来を案じました。

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コンテンツは「命と変わらない」

左から、山田玲司氏しみちゃん氏乙君氏

乙君:
 違法性が高い漫画サイト「漫画村」が漫画家を挑発して宣戦布告した、と。無料で、登録されている作品はすべて勝手に見れてしまうサイトですが、それによって出版社、漫画家さんには一銭も入らない。広告収入等で漫画村だけが潤うというシステムのサイトがありまして、これは出版社の許諾なくアップロードされた漫画を自由に閲覧できる。

 それに対して、漫画家さんやユーザー、読者が何名か、「こんな違法サイトを潰せ!」とか言っていた時に、漫画村側は、「著名な漫画家がディスってくれたお陰で存在が世に広まって、更にユーザーが増えました。ありがとうございます!」みたいな感じで、皮肉をかまして、人が増えた。

 そして、人がめちゃくちゃ増えたのですが、今度はサーバーに負荷がかかりすぎたので、サーバーを管理している会社が利用料をアップさせたと。

 だから、そのために「漫画村プロ」というシステムを作った。これは、500円くらい払えばもっとスムーズに、広告とかがなくサッと見れる、みたいな感じで、課金までさせるシステムを作っています。

山田: 
 作家にまったく還元されないのに運営は潤う?

乙君:
 そうです。何で罰せられないかと言うと、それを罰する法律がない。海外のサーバーを経由している感じなので、向こうの政府とかに言って、対応してもらうしかない状況で。

 BOOK OFFで立ち読みしてる連中に、「お前らが買わないから漫画家に金が行かないんだ」と言ってるようなもんだろう。タダで読めるから読んでるだけで買わないし、買ったところで古本だから、漫画家に金は行かない。

山田:
 うん。

乙君:
 BOOK OFFとかも同じシステムだったじゃないかと。立ち読みだけどね。

山田:
 なるほどね。

乙君:
 違法でない以上「漫画村」を責めても解決にはつながらない。取り締まれない法律に問題がある。ここを明確にしないと、子供の喧嘩が続いていくだけ。賛否両論、というかほとんど否だけど、結局こんなことしてると、文化として漫画というのは滅んじゃうよということを危惧している人はやっぱりいますし、それなりに説得力はあるなと個人的には思います。

 ただ、だからといって、水は低きに流れるもので、読んじゃうよねっていう。

山田:
 だから、アメリカファーストや都民ファーストの話と一緒だよ。漫画の文化なんかどうだっていいよって言って(笑)。じゃあうちの会社だけよければいいやっていうのとか、うちの事務所だけよければいいとか、俺の作品が読まれてるからよし! みたいな(笑)。そういった、それぞれのファーストが、全体をズルズルと下げてしまっている。

 今に始まってることじゃないっていう話だよね。これ結構前からこの話、編集者ともするんだよね。「どうすんの?」って聞くと、「公式にお答え出来ません。ただ動いてはいます」という風に言っていて(笑)。多分これは、ある段階になったら、いろいろなところが連携して、法的な何かに動き出すのは、時間の問題ではないだろうかって。「これ、そもそも泥棒でしょう?」って話だからさ。

乙君:
 うん。

山田:
 「違法じゃないじゃん!」というけど、まあ法律なんて角度を変えたらすぐに違法になるんでね(笑)。そこは、どこで手を打つのかという話だし、こういうことってしょっちゅう起こるわけよ。ただ、悲しいのは現場を知らないんだよな、と思うよね。

乙君:
 現場?

山田:
 週間連載の現場を「漫画村」の奴らは、一回見てみ。そしたらそんなこと絶対出来なくなるよ(笑)。血吐きながらやってるからね、俺達って。それを何十年もやってきて、それで宣材から、もちろん連載取れなかった人たちまで含めると、ものすごい膨大な犠牲と屍の上に残った、珠玉の名作たちなのよ。要するに、命と変わらないんだぜ、コンテンツって。

 それを、「法律にないからアップします」「それでお金もらいます」という奴なんか、まあ天国には行けないよね。そこを上手くやりますよ、みたいなメンタリティーなんでしょう。

 この話って法律の問題とか、システムの問題ももちろんそうなんだけど、ディズニーだったらこんなことってないでしょ? だからそれは、組織的にお金を使って、そういうことを避けようとして、手を売っているわけだよ。そういうことにならないように、すごいチームがあってさ。アメリカに行くと企業弁護士だらけじゃん。

乙君:
 うんうん。

山田:
 だから、そういった泥棒が出たらどうするか、ということの対策もできてるんだけど、割と島国でのんきにやっていたから、遅れたんだろうね。出遅れて法の穴抜かれて、泥棒がいっぱい入ってきちゃった。

漫画の無料掲載が続くと、新人が挑戦できなくなる

山田:
 盗掘騒ぎに似てるね。ピラミッドの中に入って行って、金銀財宝持って行っちゃう奴いるじゃん。

乙君:
 ああ。

山田:
 あれ、お前らはいいかもしれないけど、何千年の歴史ってのがあるんだよって。そういうやつにちょっと近い。悲しい気持ちになっちゃうよなとは思うね。これに関連して感じるのが、いつも必ず、何かを優先することによって、なし崩しに犯罪行為が出来ることになっていくっていう歴史が常にあって。

 そもそもレコードっていうものから、テープに録音出来るっていうところが、ものすごくグレーだったわけじゃん。

しみちゃん:
 うん。

山田:
 そこからもう始まっちゃってて、レコードをレンタルするというところになって、そこからコピー産業みたいなのがあるんだけど、じゃあ、どこまでOKにするの? みたいな時に、録音を出来るハードを売りたいって業界の方が力が強かったんだと思う。だから、録音できるというそういう機材そのものを売る方が、経済的には回る、お金が回るぞということで、それによる損失みたいなものを考えずに売る。要するに、文化よりもメーカーファーストで行ったんだと思うよ。こういうことがずっと起こって行くんだろうなと思うのね。

乙君:
 うーん。

山田:
 それで結果的にどうなるのかというと、然るべき人にお金が回らなくなっちゃうという話じゃない。

 この漫画の話でいうと、確かに出版社は漫画家よりも遥かにお金を取っているように見えます。あとWebに関して、かかっていないコスト、要するにWebだから紙は使ってないし、流通も使ってないのに、ほとんど出版社が持っていくというのは、やっぱりおかしいんだよ。ここは変えなきゃいけない。

 ただ、これまでの出版社でいうならば。数百万部売れる漫画が出ると、出版社が潤う。そして、名もなき新人に投資が出来る。

 1回2000万くらいかかる新連載を、週に何本も仕掛けたり出来るのは、ヒット作が出たから。出版社がプールして、次の世代に回すっていう仕事をしてたんだけど、これが違法サイトによって、出版社にお金が流れなくなると、新人にチャンスがなくなる。もしくは売れないかもしれないけど、「やってみようぜ!」という挑戦が出来なくなってくる

 漫画は、それがあったんだよ。俺のデビューした頃は、編集者が企画会議でどうしてもゴリ押しで「これを載せたい」と言ったらOKになった時代があるんだよ。

乙君:
 熱いっすね。

山田:
 熱い。一時期の『モーニング』なんかが割とそうだったんだよ。そういう時代もあったんだけど、とにかくザルみたいにお金が流れて行っちゃって、本来、来るところに来なくなっちゃったっていう時には、文化全体が脆弱化していく。


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