「技術で社会はマシになるが、人は技術を悪用する」仮想通貨580億円事件を受けてコインチェックアプリ規制の是非について討論【津田大介×東浩紀×夏野剛】
技術によって社会はマシになるがヒトは変わらないという現実
夏野:
やっぱり全体的に言うと、ある一定のスケールをベースにすれば、それは正しいと思うのよ。技術によって、もうちょっとマシになっていく。
ただ、その過程において、部分的に盛り上がる市場とか、投機マネーが入ってきたりすると、技術が想定してないことが起こってしまって、それが起こってしまった時に被害者が出る。
でも、よく考えてみれば、あずまんには、申し訳ないけれども、このコインチェックに投資してたやつなんて、どうせろくなやつじゃないわけよ! よくわかってないし!
東:
それはそうですよ!
夏野:
まあ、あずまんは、興味本位でやってるけど、他のやつらは、こいつら本当に救済する必要があるのかどうかというのは、社会的に俺は無いと思うんだよね。
東:
ただ、今回のコインチェック騒動って、やっぱり僕はTwitterとか、いろいろ見ている限り、本当に深刻な人もいて喋れないのかもしれないけど、あんまり深刻度が無いのよね。
僕は、これこそ面白いというか、問題だと思っているんだけど、本当にみんなゲームだと思ってやっちゃっているわけですよ。でも、ゲームじゃないじゃん! まさに、現実と虚構の区別がつかなくなっていてヤバい。
夏野:
そうだよ。そこで俺は、資産格差の話に戻るんだけど。なぜかというと、親の金でやるということに……。
東:
俺は、自分の金でやってるよ(笑)。
津田:
夏野さんが、親の金に頼らず自分でお金をもっと稼げたからそういう風にやっぱ言えるんですよ。
夏野:
いや、親の金だと、相続という場面になったときに何が問題になるかと言うと「おまえ、その3000万円を自分で稼ぐ能力が無いのに、なんで相続権を主張すんだ」みたいな話ばかりなのよ。
つまり「親の金は自分の金」で、完全なあぶく銭なんですよ。これは、バブルの不動産投資と株式投資、以上の話。
津田:
じゃあ相続税も、もう上げるべきということなんですかね。
夏野:
ああ、俺はもう相続税は89%でも良いと思っている。
津田:
なるほどね。
歪んだ社会に投げ込まれた仮想通貨という爆弾
夏野:
だから、本質的な問題で言うと、やっぱりお金の偏在。やっぱりこれは日本だけに起きている状況なんですよ。
東:
変な状況ですよね。
夏野:
これ、社会的なソリューションとしては、めちゃめちゃおかしなことになっていて、そこに仮想通貨というのが入ってきて、みんなが飛びついて、そこに裏には、中国のお金があってという、なんか、かなり複雑な状況があるんだけど。
じゃあ日本政府は何をするべきだったかということで言うと、ここまでいくまでに、もうちょっと俺はやりようがあったんじゃないかなと思う。
東:
でも、法律が追いついてないのは当然なんだけど、このコインチェックのアプリって……。
夏野:
上手く作られている。
東:
これは明らかに規制するべきアプリですよね?
結局金融庁は何やってたの?
夏野:
ところが、実は法律論じゃないんですよ。だって、金融庁の規制なんて法律で定められてる規制は何もないじゃない? で、例えば俺なんか、住宅ローンというのを借りちゃったのよ。その時に、金融庁のガイドラインに従うとどうなるか知ってる?
住所氏名と保証人の名前とすべての申込書は、手書きで書かなきゃいけない。僕がサインとかハンコを押すところあるからプリントアウトしてくれと言ったら、「いや、これはガイドラインで決まってるんです」
東:
銀行はそうよ? 住所も大阪府とかから書かなくちゃいけない。
夏野:
いや、それがまさにそうで、住民票の記載と一字一句違ってもダメなんだって。この、「ー」が「の」だったらもうだめだって。そんなとこまでやってんのに、なんだこのコインチェック!
津田:
確かにね。
東:
そこに繋がるの?。どこに行くかと思ったら。
津田:
そう、個人的な不満をね(笑)。
夏野:
ただ、何を言っているかと言うと、そこまで手取り足取り全部決めていた金融庁が、なぜアプリを放置してたかというのは、ものすごく疑問なの。
東:
いや、だから結局アプリという部分は、これはまさに法の隙間みたいな、法というか監督官庁の隙間を狙ったものでしょ?
夏野:
いや、これは完全に金融庁なんで。
東:
アプリのデザインまで金融庁は見る?
夏野:
アプリのデザインというか、本人承諾の取り方みたいなことは、アプリも書面も一緒だから。
東:
コインチェックはそこも脱法っぽかった。
夏野:
だからそれは、個人ファイナンスの世界では、なんかめちゃくちゃな。18%とか、36%とか、あんな金利まで過去にさかのぼって返させるみたいな強引なことまでやってたのに、ここに関しては何にもやってない!