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「技術で社会はマシになるが、人は技術を悪用する」仮想通貨580億円事件を受けてコインチェックアプリ規制の是非について討論【津田大介×東浩紀×夏野剛】

金が有り余っている日本

東:
 でも、結局ソシャゲとかでも日常的に課金に慣れているわけですよ。例えばメディアとかでも、ライトなネトゲ廃人とかで、月5万突っ込みました10万突っ込みましたみたいな人がゴロゴロいるわけじゃないですか?

 そういうのが、周りにある環境に、このコインチェックみたいなものがボーンと投げ込まれると、20万円、30万円なんて、学生でも突っ込んじゃうわけでしょ?

夏野:
 学生が突っ込んじゃうのは自分の金じゃないから。

東:
 夏野さんはそこにばっかりこだわってるけど(笑)。

夏野:
 いや、結局なぜかというと、金が余りまくっちゃってるんですよ。

津田:
 高齢者の銀行口座に。

夏野:
 そうそう。だって1800兆円だよ? 1800兆円も親からむしり取ればいいだけなんだから。で、親には出川のCMは効いているわけですよ。

東:
 うん。

夏野:
 テレビCMをこんなに使っているネット企業が、こんなにある国も日本だけなんですけれど、これはお財布の紐を握っている人たちに対するアピールで……。

 60代以上なんかネットで買い物もそんなにしてないし、コインチェックに突っ込んだりもしていないんだけれど、そのバカ息子とバカ娘はいくわけですよ。ここが上手かったね。

津田:
 まったくそれに同意するんですけど、「自分の金で」という意味で言うと、ちょっと他の仮想通貨と違うことが起きているのはモナコインで、モナコインは、2ちゃんねるの文化から出てきたんですけど、最初は、すごく価値が低かったわけですよ。

 で、中学生とか高校生とかがお小遣いでも買えるようなものが多かったので、彼らが今、本当に初期のころに5000円とか、お年玉1万円とかで買ってみたものは、今、何億とかになっちゃってる。だから、実は今、20歳前後のモナコインの「億り人」というのがすごく増えていて、で、そこをまた狙ったりもするんですよ。

夏野:
 絶対に数はそんなにたくさんはいない。

津田:
 でも結構それなりにいるんですよ。

夏野:
 で、そいつらはこれから人生が狂うわけだけよね。

東:
 そんな億にならないと思うけどな。倍率はちょっと分からない。

津田:
 未成年は、もうちょっと突っ込んだかもしれないけど。

「億り人」って、言うほど出てないんじゃない?

夏野:
 でも、「億り人」の成功事例って、絶対にそんなに多くないんですよ。ちゃんと売り抜けてないといけないし、現金化しなきゃいけないしで、でもそれが宣伝材料になって、グワっと、それを狙う人たちが出てくるっていう状況が見ていてね……。

東:
 例えば「億り人」とか言っても宝くじ当選者が年間で何人ぐらい出ているのかみたいな。ということを考えるとき、宝くじだって、何百人という人たちが毎年「億り人」になってるわけでしょ?結局それを本当に上手く宣伝すると、みんなが宝くじに群がるワケだけど、宝くじは古いものなので、みんな冷静になっていて、流石にそこまでならないわけじゃん。

 コインチェックは、それをうまくやっちゃったわけだよね。そもそも、コインチェックが仮想通貨の本質の、ブロックチェーン技術とか関係ないという話をしなきゃいけないわけだけど。

夏野: 
 そうそう。ブロックチェーンと仮想通貨というのは一対一の関係じゃないので。別にブロックチェーンの技術を使って安上がりにやってるっているだけだから。

 今回は、ビットコインそのものの問題じゃないじゃん。NEMでありコインチェックが、ノミ行為をすることによって、実際のブロックチェーンで担保されているような世界の秩序は守られないところが出てきている

 これって僕は規制の問題だと思っていて、実は今の金融庁長官というのは、ものすごく金融業界に対してフィンテック【※】推奨です。

※フィンテック
Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語であり、ファイナンス・テクノロジーの略。

東:
 なるほど。

新しいフィンテックに前のめりの監督官庁

夏野:
 「新しいこと試せ」というのを森さんはものすごくやってきたわけ。この背景も実はあるなと思っていて。日本は、金融庁が、ああいうものに対して規制を最初から厳しくやってきた。

津田:
 PayPalすら入れなかったわけですしね。

夏野:
 PayPalすら規制していたはずなのに、仮想通貨は、すり抜けちゃったじゃん。これは大きいなと思っていて。

津田:
 確かに。このままだと、フィンテック革命に乗り遅れるぞみたいなところで、だから現政権は、そういう新しいテクノロジーに関しては推進しているんですね。

夏野:
 ちょっと緩くなっている。政権というよりは、金融庁長官の森さんのキャラなのよ。

津田:
 なるほどね。

夏野:
 だって安倍さんがそんな金融の規制をどういう風に緩めたりだとか。総理大臣がそんなん分かるわけねえじゃん!

コインチェック騒動はインターネットの問題もはらんでいる

東:
 僕はこれ、仮想通貨だけの問題じゃなくて、インターネットの問題だと思ってるんですよ。インターネットという思想の問題。1970年代からずっと長い間、ここ40年間ぐらいやっている、「社会問題を技術によって解決する」という思想があるわけですよ。

夏野:
 なるほど。

東:
 これは、すごく長い思想で、例えば民主主義の話で言うとか、貨幣の問題とか、いろいろあるじゃない? 「今まで社会問題だと言われたことを技術によって解決するんだ。俺たちはそれができるんだ」という思想があったわけ。それはドーンと、うまくいったとこがあった。

夏野:
 Googleがね。

東:
 でも、ここ2、3年の技術というのは、実は「やっぱり技術によっても人間は変わらないからまずいぞ」というのがある。これって多分フェイクニュースの問題なんかもそうじゃない? で、そういうのにこれは、すごく似てると思うんだ。

津田:
 そうね。

夏野: 
 朝日新聞の話ね。

東:
 朝日新聞だけじゃない。これは、つまり、技術がいくら上手く仕組みを作っていても、人間は必ず技術を悪用するというか、技術の使い方で裏をかくから、結局、社会問題を技術によって完全に解決するのは無理なんだということの、一個の例のように僕には見えてるわけね。

夏野:
 なるほど! それは、すごい納得感あるんだけど、ただ今回のケースって、やっぱり技術そのものの問題じゃないっていうところの問題だから。

東:
 技術そのものの問題じゃないわけ。だからフェイクニュースだって技術そのものの問題ではない。

夏野:
 だから、悪用する朝日新聞という会社があったり。

東:
 まあ、それは津田さんが担当すると思うけど(笑)。

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