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性行為の合意確認にブロックチェーン? 男女の「言った」「言ってない」問題に終止符か 

 ブロックチェーンでセックスのための合意を確認するアプリが、オランダのスタートアップにて計画中との報道がありました。

 これを受けて、1月22日の『小飼弾のニコ論壇時評』では、プログラマー小飼弾氏山路達也氏がブロックチェーンと婚姻関係について持論を展開し、「政府がブロックチェーンを認める必要がある」とコメントしました。

左から小飼弾氏、山路達也氏。

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“言った言わない問題”に終止符を打つブロックチェーン

山路:
 「#MeToo」ムーブメントの文脈と思われる、セックスの合意確認にブロックチェーンを使おうというニュースが流れましたね。

小飼:
 それは認証にならないんじゃないですか? もちろんプログラムをそのまま使うわけはないんですけど、例えばビットコイン並でないと、せっかくOKをもらったのに承認されない。あと、誰が掘るんだ【※】という問題もあります。

※掘る
採掘(マイニング)のこと、コンピュータで仮想通貨の取引をチェックし、ブロックチェーンという取引台帳に追記していく作業。追記作業のために膨大な計算処理をし、結果として追記処理を成功させた人には、その見返りとしてビットコインが支払われる。

山路:
 もうちょっと認証は早くできそうな気もしますが、この場合、そこまでして認証をしなきゃいけないものなのか。

小飼:
 なんだけれども、どちらも力を発揮するのはコントラクト【※】の世界なんです。スマートでないものでも、ブロックチェーンほど耐えられる仕組みはないんですよ。なんといっても、みんな契約書のコントラクトのコピーを持っているわけですから、「偽造した」とか「お前が勝手に書き加えた」という“言った言わない問題”はもう発生しないわけです。それにブロックチェーンはトドメをさしたわけですよ。

※コントラクト
契約、約定、請負、契約書、婚約の意。

山路:
 セックスの確認についても、履歴が全部記録されていくわけですね。

(画像は、オランダのスタートアップ「LegalFling」より)

ブロックチェーンで婚姻届を出す未来

小飼: 
 いろんなコントラクトが考えられますよね。端末の今回限りなのか? 夫婦ではないですけれども、基本的に同意とみなしたものなのか? あとスマートコントラクトだったとしたら面白いですよね。

山路: 
 自動ということですか?

小飼:
 例えば、スマートコントラクトというのは、ある条件が満たされたときだけにそれを実行する。具体的に言うと、入金があったら合意、入金がなければなかったものにする、みたいなことができるわけです。

山路:
 じゃあ、もしかしたらニュースではセックスの合意確認みたいなふうな話題になっていましたけども、結婚というような契約にも使用できる?

小飼:
 まあ、セックスの合意確認はとにかく、ブロックチェーンを使った婚姻届とかはかなり向いていると思います。婚姻届は民法的に大きな意味を持つものなので、誰と誰が結婚したということだけではなく、いつ結婚したのかもはっきりわかんないといけないわけですよ。

 そのために役所は、婚姻届をオフィスが閉まっているときでも投函できる。日本の役所の場合は、24時間出せるんです。

古い歴史を持つ婚姻制度

山路:
 今の社会の中で、いかに結婚が重いか、ということがわかりますね。

小飼:
 ものすごく重たいです。民法において、配偶者がいかに特別な存在なのかは、なんかもう漏らしそうになるくらいですよ。

山路:
 弾さんですら、結婚に対してそう思うわけですね。

小飼:
 僕は日本全国の市役所や村役場を知っているわけでないですが、基本的に24時間出せます。そのことで役所の手間も減らせるわけです。

山路:
 前提として、政府が結婚合意のためのブロックチェーンという仕組みを認める必要がありますけどね。

小飼:
 でも、考えてもみてください。結婚という制度自体は、近代国家よりも古いんです。

山路:
 数千年、数万年の歴史がありますね。

小飼: 
 実は国家ができたおかげで婚姻制度があるんじゃなくて、元々あった婚姻制度的なものを国家のほうでも追認したのが今のカタチなわけですよね。

イスラム教文化圏とブロックチェーン

山路:
 じゃあ、こういう結婚合意みたいなものが、どこかのサービスがやって、デファクトスタンダードとなって、それをみんなが認めるようになったら、国もあとから追認せざるをえなくなるかもしれない?

小飼:
 日本の結婚の場合は、婚姻しか登記しません。要するに、役所の記録には婚姻しか残しませんが、イスラムの結婚というのは、ちゃんと夫婦の間といえども「あれはOK、これはNG」というのを全部リストに出来るわけです。だからそれを反故にした場合の処遇というのは、まさに本来の意味での契約となっているんですよ。

山路: 
 コントラクトとなっている。

小飼:
 イスラムは、そういうところに関して先進的なんですよ。だからそこから導入が始まることもある。そうしたら、ブロックチェーンがハラール【※】ということも(笑)。

※ハラール(ハラル)
イスラム法で合法とされること。例として、イスラム教徒にとってハラールではない物を口にすることは罪をおかすこととなる。

山路:
 イスラム圏では、ビットコインみたいな仮想通貨が、イスラム法に反するといったファトワー【※】が出たというような話もちょっと聞きました。

※ファトワー
イスラム教の高位法学者によって出される宗教的な見解、宗教令。

小飼:
 それは、「誰が出したのか」というのがありますよね。イスラムと一口に言っても、一枚岩ではないんですよ。

山路:
 全部のイスラム教徒に対して、有効かどうかは言えないということですね。
「イスラムは夫婦でも、財産は個別化」(コメント)。

小飼:
 そう、だからちゃんと契約書を作るわけですよ。

山路:
 なるほどね。契約に関して、ブロックチェーンとイスラムというのは、意外に相性が良いかもしれませんね

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