「他人の不幸をあざ笑う、私の呪いを解いてほしい」←お悩み相談に答えてみた
毎週日曜日の夜8時から放送中の『岡田斗司夫ゼミ』。1月28日の放送にて、パーソナリティの岡田斗司夫氏は「作家活動を続けている中でアンチに絡まれてから、他人の不幸を笑うような癖がついてしまった」という、視聴者からの悩み相談に答えました。
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アンチに絡まれてから他人の不幸をあざ笑うようになってしまいました
<相談文>
商業作家です。1年前までツイッターで発信していたら、アンチに絡まれました。殺人脅迫まで受けました。そのアンチのツイートを見て、「ざまあみろ!」と嘲笑ってしまいました。
今はツイッターをやめていますが、いまだに他人の不幸を嘲笑う癖が治りません。これは何かの“呪い”のようなものだと思うのですが、この正体はなんでしょうか?
岡田:
ちょっと、話が飛んでてわかりにくいんですけど、ポイントとしては、アンチの人のツイートを見てから、他人に対して「ざまあみろ!」と思ってしまう癖が付いてしまったというところなんでしょう。
たぶん、自分を批判していたアンチの人の「今日もダメだった」とか、「モテねえ」みたいなツイートを見てから、それと似たことを言っているヤツを見ると、「ざまあみろ!」と心の中で思うようになっちゃった、ということなんでしょうね。
たぶん、これは相手が限界を越えてくれたから、自分もはしたない行動に出れたということだと思うんですよ。
この相談をくれた商業作家の方の心の中には、それまでも「ざまあみろ!」みたいな衝動があったんだと思うんですよ。でも、「そんなことを思っちゃいけない」と意識の上に登らせない、理性とか良識というものが、心の中にちゃんとあったわけですよね。
いい人とは「悪いことを考えない人」だけではない
世の中には“いい人”というのが、いっぱいいるんですけど、いい人の中には、僕らが考えるような「本当に悪いことを思いつかない人」だけじゃなく、「悪いことを思いつきそうになったら抑えるタイプの人」というのも多いんですよ。
例えば、“浮気しない旦那さま”の中にも、「全く浮気心が起きない人」もいれば、「浮気心が起きそうになったら素早く蓋をする人」もいれば、「浮気心が起きてるんだけど行動に起こさない」という人もいる。でも、それらはすべて、浮気をしない旦那様という同じカテゴリーになるんですよ。
それと同じく、いい人と一口に言っても、その中には、悪いことを思いつきはするんだけどそういう気持ちをちゃんと抑えられる人というのがいるんです。
僕らは、ついつい100%の善人だけが本当のいい人で、そうでない人に対しては、実際にいい行動をしていても偽善者みたいに見ちゃうことがあるけども。それは違うと思うんです。
そういう意味では、この人は、以前は“いい偽善者”だったんですよ。「ざまあみろ!」と思う心が意識に登りそうになった場合も、無意識にそれを抑えることが出来ていたんですよね。
ところが、アンチに絡まれたおかげで、心に蓋をする“良識の留め金”がバカになっちゃった。その結果、不幸な人のつぶやきとかをTwitterで見たりする度に、すぐに掛け金が外れて、これまで無意識に抑えれていたものが、ボロボロ出てくるようになってしまった。
だから、他人に対して「ざまあみろ!」というふうに思うようになったんです。
純粋でなくなった後は意識的にいい人になるしかない
あなたが受けたのは呪いではないんですよ。ただ単に、留め金がバカになってしまったというだけなんですよね。
これは、「こうすればよくなる」ということではないんですよ。もう留め金はバカになっちゃってるんだから、そういう感情がわいてくる度に、意識して、「そんなことを思っちゃダメだ」と、もう一度、自分の手で蓋をすることしかできないんです。
もう、無意識に蓋がされていたころのあなたには戻れないんです。言っちゃえば、あなたの“少年時代”は終わってしまったんですよ。なので、ここからは多感な“青年時代”として過ごしてください。
この件に関して、「俺を少年時代から引き上げてくれてありがとう!」と、アンチに感謝するもよし、「もう、あの純粋なころに戻れないのか」と恨んでみるのもよしですけれども。少なくとも、呪いという程のことではないと思います。
誰しも、こういったことは、もっと子供だった時代に「落ちてるゴミを拾わなかった時」とか、「いじめられている子を遠目に見た時」に経験をしていることなんです。
みんな、もっと早めに通過して、意識的になるんですけれども。あなたの場合は、ちょっとそれに時間が掛かったというだけだと思います。
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