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『パシフィック・リム』『ヘルボーイ』…ギレルモ・デル・トロがヒットメイカー監督になれた理由を評論家らが解説「実績を積んでいく策略がすごい」

デル・トロ流 ハリウッドサバイバル術

松崎:
 そのあと『デビルズ・バックボーン』が評価されたことによって、ハリウッドから声がかかるんです。その『デビルズ・バックボーン』の翌年に監督をしたのが、なぜか『ブレイド2』という『ブレイド』シリーズの続編を監督するんですね。

 そしてこれがヒットしたことによって、デル・トロはハリウッドで映画を作りやすくなったんですね。だから実は『ブレイド2』は彼にとって踏み台にしかなかったというのが、後年になってわかります。

 その次に2004年に作った『ヘルボーイ』という映画があります。

画像は『ヘルボーイ[DVD]』Amazonより。

松崎:
 これは企画自体は7年前に出来上がっていました。だから本当は『ミミック』の次に『ヘルボーイ』を作りたかったんですが、『ミミック』で挫折てしまったので、作れなかったんです。

 原作者とデル・トロの中では、こういう映画にしようというのは決まっていたらしくて、主役はロン・パールマンにしようと思っていたんです。

スタッフ:
 知る人ぞ知るという、マネースターではない俳優ですね。

松崎:
 そうですね、客を呼べる俳優ではなかったので、スタジオとしては「ジョン・トラボルタとかトム・クルーズでやったらどうか」といったのですが、原作者とデル・トロは「ロン・パールマンでやりたいんだ」といったんです。

 それが『ブレイド2』で成功したことによって、「じゃあ好きに作っていいよ」といわれて、原作者とデル・トロはやりたいように作れたんですね。

 実はこの『ブレイド2』にロン・パールマンが出ていたんです。そういう意味でも『ブレイド2』は実験の場になっていたんですね。 そのあと監督をしたのが、みんなが大好きな『パンズ・ラビリンス』です。

画像は『パンズ・ラビリンス スペシャルプライス版 [DVD]』Amazonより。

中井:
 アカデミー賞の外国語映画賞に『善き人のためのソナタ』と同年にノミネートされていて、僕は両方とも好きなのですが、確か『パンズ・ラビリンス』は受賞できなかったんですよね。すごくレベルの高いレースだったなと印象に残っています。

スタッフ:
 あと『ミミック』のハリウッドでの失敗を『ブレイド2』で、ちゃんと請負仕事ができるという実績を積んでいって、『ヘルボーイ』を作るという策略がすごいよね。

デル・トロの作品の特徴は…

松崎:
 そもそもデル・トロの作品の特徴は、映像がおどろおどろしい話なのに美しいんです。あとは暖色系のライティングで魅せるというのが特徴だったりするんですね。

 先ほどもいいましたが、造形物の中に幽霊や何かが隠れていたり、子供が悪夢を見るというのも、いろんな映画で共通点があって、グリム童話が本当は怖いみたいな要素があるのも、時代的に受け入れられている理由かなと思います。

 あとはメカが好き。『パシフィック・リム』でロボットが出てきますし、歯車とか時計が好きというのは、いろいろな作品に出てきています。

画像は『パシフィック・リム [DVD]』Amazonより。

松崎:
 そして彼は厳格なカトリックの家で育ったので、それのアンチとしてちょっと気持ち悪い昆虫みたいなものを宗教的なイメージに重ねることによって、厳格さが嫌だったというのを昆虫に投影してるように見える部分があったりします。

 あとはこの人の作品は『パンズ・ラビリンス』は特にそうですが、暗闇の中で何かを撮るというのが、今回の『シェイプ・オブ・ウォーター』の中でも出てきます。今年の6月にフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で、『マジンガーZ』のリメイクのアニメーション版作品の初お披露目ということで、永井豪さんが来ていたんです。

 そこにデル・トロも来ていて、永井豪さんのところにいってサインをもらったという映像がネットにも上がっていると思います。もう単なる永井さんのファンですね(笑)。

デル・トロさん(左)と永井豪さん(右)。画像はデル・トロさんの公式Twitterより。

松崎:
 そういう、彼がかつて自分が子供のころに好きだったものを、今の自分の中で咀嚼しながら作品を作ってるといるところが、彼の作品が受け入れられている要素かなと思います。

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