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「映画が始まって2、3分でゴジラが出てくる。本当にテンポがいいんだ。」――『シン・ゴジラ』地上波放送・解説議事録

 11月12日に放送された『岡田斗司夫ゼミ』にて、劇場映画『シン・ゴジラ』の地上波初放送を記念して、テレビ放送を生鑑賞しながらの実況解説が行われました。

 かつてガイナックスの社長を務め、庵野秀明監督とも関係が深い岡田斗司夫氏。独自の視点での『シン・ゴジラ』の描写・キャスト・ストーリー展開のテンポを解説していきます。

『シン・ゴジラ』画像は公式サイトより。

※本記事には『シン・ゴジラ』のネタバレが一部含まれます。ご了承のうえで御覧ください。

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あらゆる映画に通じる『シン・ゴジラ』のテンポ

岡田:
 最初は、昔のゴジラシリーズと同じように「東宝」のテロップが流れる。『キングコング対ゴジラ』あたりのカラーになったころから始まった、オプティカル合成でやっている時代の東宝マーク。最近の東宝映画でこのマークをこんなに長い秒数で見せる作品は珍しい。

 そして、初代の『ゴジラ』と同じ東宝映画作品という製作会社名を一枚看板で出して、そのあとで『シン・ゴジラ』のタイトルが出る。映倫のマークはどうやっても入れなきゃいけないものだから、ど真ん中に小さく意地悪く入れる庵野の映倫のマークといういつものやつだ(笑)。

岡田斗司夫氏。

 タイトルがあけると、いきなりプレジャーボートのシーンから始まる。やっぱり展開が早い。漂流したボートの映像がまず流れて、そして「デッキに人はいません!」「遺留物あり!」というセリフが続く。

 そして、いかにもこれを見てくださいという感じで映し出される並べられた靴。これはこの靴の持ち主は自殺したというしるしだ。なんでこんな位置に靴を並べているのかというと、船内にカメラが入った瞬間に船の後ろのほうにこれが並べてあるとネタバレしちゃうから。

 次の瞬間、大きく水蒸気が上がる。このへんからある人が船から飛び降りて、そのおかげでゴジラが現れたという因果関係が示されている。さらに、すぐさまアクアトンネルの事故が起きる。映画が始まってからまだ2、3分だというのに、もうゴジラがどんと出てくる。本当にテンポがいいんだ。あらゆる映画はこれくらいのテンポでなきゃダメだと思う。

『シン・ゴジラ』画像は公式サイトより。

岡田:
 状況説明のナレーションも、一つひとつのセリフが結構被っているんだ。『シン・ゴジラ』の場面では、最初のセリフにも被せ気味で次のセリフを入れているんだけど、これがスピード感を生んでいる。普通の邦画はどうしてもセリフを聞かせようとしちゃうんだよ。

 ナレーションとかがあれば、絶対に言葉を被せずにセリフを言い終ってから0.5秒くらいの間を置いて次のセリフを入れるものなんだけど、このセリフの入れ方はとてもいい。こういったニコニコ動画みたいなカット、セリフ、下のテロップ、画面上に流れるコメントと情報量の出し方がとにかくすごい。圧倒的な情報量で緊迫感を生み出す画面作りは本当にうまい。

俳優としてはやりがいがない『シン・ゴジラ』

岡田:
 会議で人が喋っている画面に法律の条文が被るのは面白い。えんえんと法律に振り回されて話が進まないという場面で、その前提となっている条文を画面にバッと出すというのは、実はギャグなんだ。

 でもそれ以上に、これを行うことで画面全体の見栄えが変わる。『シン・ゴジラ』ではとにかくアブノーマルな構図や、見た目の移り変わりというのを最優先して画面を作っている。

 この映画は、放っておいたら部屋の中で人が話しているだけのシーンばかりになっちゃう。面と向かった会議のシーンというのは、緊迫感があるように見えるんだけども、これをずっと続けていたらすぐに単調化するんだ。だから今の法律の条文がそのまま表示されるみたいな、見た目的に面白い場面を入れている。

『シン・ゴジラ』画像は公式サイトより。

岡田:
 次は総理を含めて防衛出動するかどうかの話し合いのシーン。総理の防衛出動は大変だみたいなセリフの言い方、僕はやっぱりダサいなと思うんだけど、そう思った瞬間にカットが切り替わっちゃう。これを演じている俳優さんはこういうのすごく嫌がる。

 演じている俳優としては、悩んでいる中で決心するというところまでをワンカットで見せたいはずなんだ。こんなふうに細切れにされると、演技なんて見せられないんだけども、ここでは細切れにしてしまっている。つまり俳優を使い倒している演出だというのが、ここでわかる。

 僕はこれが邦画の新しい形、映画の新しい形だと思うんだ。でも実際に演じている俳優としては、こういうのを嫌がると思う。総理に結論を迫る人達の顔がどんどんアップになってきて、それにつられるように、総理を映すフレームもどんどん顔に寄っていく。そしてカットが切り替わって防衛出動を総理が宣言というニュースが流れる映像に変わる。ここもうまい。

 総理役の俳優さんが宣言するみたいに、苦渋の決断を下すところは画面に映らない。これもやっぱり俳優としてはやりがいがない。かわいそうに(笑)。

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