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『ハウルの動く城』は、魔女ソフィーが城を支配する話だった? 城の模型を見ながら作品に隠された裏テーマを徹底解説! 【話者:岡田斗司夫】

 宮崎駿監督作の『ハウルの動く城』について、ニコニコ生放送『岡田斗司夫ゼミ』にてパーソナリティの岡田斗司夫氏による徹底解説が行われました。

 まず、本編では詳しく語られていなかった歴史を振り返り、続いて「動く城」の造形への考察と、観る世代によって解釈が分かれるハウルとソフィーのラブストーリーについての解説をしてます。

※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。この番組は2021年4月5日に放送されたものです。

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ソフィーは魔女である

岡田: 
 『ハウルの動く城』で、あまり明確に描写されていませんが、原作の中でもソフィーは魔女という設定です。ソフィーは言霊を使う魔法使いなんです。
 ソフィーがハウルの記憶の世界に入ったとき、ハウルとカルシファーが契約を結ぶ場面に遭遇します。そのときソフィーは二人に「ハウル、カルシファー」と呼びかけています。呼ばれた2人はソフィーに気付き、目が合います。

 この呼びかけはソフィーの言霊の魔法となって、カルシファーへ名前を与えるとともに、ハウルとカルシファーの契約にも関与してしまうことになります。さらに「もう一度必ず帰ってくる」「あなたに会いに来る」と呼びかけたので、それが言霊となって後にハウルは町でソフィーを見つけ出したのです。ハウルとソフィーの出会いは運命に引き寄せられたからではなく、ソフィーの魔法によるものなのです。

 他にもソフィーの魔力はキスによって表されています。キスは言霊を使う魔女にとって最大の魔法なのです。

 ハウルの心臓を返してくれた荒れ地の魔女、カルシファー、犬の姿にされてしまったヒン、マルクル。4人へのキスがどんな魔法になるかは、ラストシーンの城の中庭で描かれています。
 この場面は本編の数年後、数十年後ではないかと僕は考察しています。理由については後述します。

 サリマン先生によって老婆の姿に変えられた荒地の魔女は、魔法が解けても元の姿に戻ることができません。年老いた姿で、永遠にソフィーとハウルの仲睦ましい姿を見せられることになります。これはソフィーの赦しを得られていないからです。ヒンもマルクルも同様に、犬と子供の姿のままです。カルシファーはすっかり飼いならされてしまっています。
 一方、ハウルが鳥の怪物から元の美しい姿に戻れたのは、ソフィーのキスのお陰です。

「動く城」はソフィーが支配する城になった

岡田:
 ラストシーンは戦禍を眼下に、城が空を飛んでいく様子が映し出されます。よく見ると、城の煙突は2本しかありません。一方、地上を動き回っていたハウルの城には、煙突がたくさん付いていました。確認できるだけでも6本はあります。

 空を飛ぶためによりエネルギーが必要になるはずなのに、煙突は2本に減っています。効率化しているんですね。これは誰の力かと言うと、ソフィーの魔力なんです。
 それを表しているのが、帽子を被ったこのシーンです。黒いリボンが付いています。

 『魔女の宅急便』でも描かれている通り「黒」は宮崎アニメにおいて魔女を表す色です。荒れ地の魔女の服の色も黒ですね。ソフィーはもともと、自分の帽子にも、お下げ髪にも赤いリボンを付けていました。それはおばあさんの姿になったときも変わりませんでした。
 赤を好んでいた女の子がラストシーンで黒いリボンを付けている姿をわざわざアップで映し出すことで、宮崎駿監督はソフィーが魔女だとはっきりと見せようとしています。

城は「ハウルの無意識」の具現化

岡田: 
 ここからは動く城のペーパートイを使って解説をしていきます。
 まずこの城は、兵器と機械と家が合体した造形になっています。正面から見ると完全に兵器なんです。

 上部に大砲が付いています。

 後ろから見ると工場のように煙突がたくさん付いています。

 巨大な蒸気機関のエンジン・歯車・ボイラー・煙突がずっと並んでいて、前から見ると兵器。後ろから見ると工場になっています。ところが横から見ると、割と家が見えてしまっていて、なんだか隙があるように見えます。

 巨大な大砲や、防弾板までついた監視塔が付いていて、これはハウルの非常に強い警戒心を表しているのに、生活感がチラチラと見えてしまっている。ハウルの生き方そのものを表しているようにも思えますね。これは城の姿がハウルの無意識を投影したものだからです。

 城を動かすための大きな蒸気機関が背面についています。しかし、この城の動力は蒸気機関ではなく、火の悪魔カルシファーの力。カルシファーの火力でボイラーを動かして、歯車を動かしているはずなのに、これもハウルの無意識が形を決めてしまっています。「蒸気機関だから煙突がたくさん必要だ」というのはハウルが思い込みなんです。

 だからラストシーンでは、城を動かしているソフィーが思い込みに縛られておらず、パワーアップして効率もよくなったので、城の煙突が2本に減っています。

「ハウルの城」の見た目は宮崎駿そっくり?

 岡田:
 この模型を見てもらうと、こんなものが付いています。

 反対側にも同じものが付いています。実はこれ、耳なんです。『ハウルの動く城』はたくさんの立体模型が販売されていていて、そのどれにも耳が付いています。しかし、耳の存在を知らない人が多いんです。

 実はハウルの城は巨大な頭なんです。それも宮崎駿の頭なんですね。例えば宮崎駿監督は自画像を描くときに鼻を豚の鼻で描いています。これは自分の鼻がやや上向いていることを気にしているからなんですね。
 それで、動く城にも豚のような鼻がついています。

 また、ここに付いているのがメガネです。宮崎駿監督の眼鏡と同じ形の眼鏡が付いています。

 そしてこの煙突です。若い頃の宮崎駿監督のトレードマークだった、モジャモジャの髪の毛を表現しています。
 鼻、メガネ、髪の毛。これら全てが宮崎駿の特徴なんです。

 外見だけでなく、内面も表しています。これは、大砲で武装しているつもりでも、庶民的な家が大好きで、頭の中はいつも作りたいものであふれている彼の性格や頭の中でもあります。

 つまり「ハウルの城」は宮崎駿監督の頭が、アニメーションの世界を這い回っているのだと思ってください。
 それは「外観はこういう感じだけど、内面はキムタクの声をしたイケメンだぞ」と言っているように捉えることもできます。そういう隙があるところが宮崎駿監督の可愛いらしいところですね。

城は宮崎駿の内面を表している?

 岡田:
 武装の象徴である砲台は、カルシファーの炎の力が弱まってしまったことで、崩れてしまします。
 大砲の中身はただの鉄の筒だったことが分かります。もう一つ残った砲台が割れるシーンでは、内側が木造のリビングになっているのが見えてしまいます。

 だから家というのは家族を守る「城」であるけど、中は弱い木造に過ぎないという宮崎駿の自意識なんです。使い物にならない大砲でまわりを威嚇するだけなんだと。

 これは、言葉は喧嘩腰だけれど、実は気弱なところもある宮崎駿そのものなんです。彼はときに何かを強く非難する攻撃的な発言をしますが、それは自分の弱い部分を守るためだと、自分でカミングアウトしてしまっているようです。『ハウルの動く城』は宮崎駿監督が自分を投影させて、さらけだしている作品だといえます。


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