海外でのヘイトスピーチ規制事情――“表現の自由”を守るために日本のネットメディアがすべきこととは?
マスメディアが問われる責任とは
中沢:
ちょっと一言、言わせてほしいのですが、例えばニコニコ動画でもYouTubeでも、大マスコミとどこが違うかって言うと、場所を提供しているわけで中身のコンテンツは「みなさん、好きなように放り込んでください」っていうのがYouTubeやニコニコ動画ですよね。
中沢:
そうしたら、広場の管理者としての責任はあると思うんです。つまり、公園が無秩序な場所であっていいわけがないじゃないですか。公園には「危険物は持ち込まないでください」って入り口に書いてあるでしょう。
やっぱりみんなが自由に公園を使うためには、そこにダイナマイトなんかを持ち込まれては困るわけで、広場の自由を守るためにある種のきちっとした管理ができるってことを考えていただかないと。
角谷:
ニコニコ動画の中に、既にポリシーっていうのがあるんです。そこにはたくさんのルールが書かれていて、「これができないとダメですよ」と。それは生主の人たちにも、番組の人たちにも、出演者にも、やっぱりそれは守ってもらわないと。
それは例えば放送みたいに法務省に規制されるわけではなくて、私たちは監督官庁もありません。その代わり、私たちが自分でそれをつくっていかないと、ネット自体が崩れてしまう。
中沢:
そういうことです。私が言いたいのはそういうことなんです。
角谷:
だから、自由を守るというよりは、ネットをちゃんとしっかり立たせておけば、そこでたくさんの人が集える場所はちゃんと提供を維持できるっていうことが大事じゃないかと。
中沢:
ただ、「公園の管理者は誰なんだ」っていうことは、もう少し責任は明確になった方がいいと思いますよ。
角谷:
少なくとも、ニコニコ動画はチャンネルを開設する場合にも何にしろ、ポリシーがちゃんとあるし、開設の規約もみんなあります。それは読んでいただくことが前提になっていますから。
江川:
それはとっても大事なことだと思うんですね。そうしないと、今度は役所が出張ってくるわけですよ。「ボールを投げるな」「犬の散歩はするな」みたいに。
中沢:
役所が管理すると「誰も入るな」って書きますよ。
江川:
本当に自由度が減ってしまう。
鵜飼:
確かに、日本は一度そちらの方に転ぶと、どんどん表現のレベルを狭めていく暗黙の力が働きやすい社会だとは思いますので、そこはとてもデリケートな問題ですよね。
角谷:
そう、デリケートな問題。だから少なくともネット会社として、ニコニコ動画は大事にしなきゃいけないです。そのプラットフォームにみんなが入れるルールをちゃんと持っていないと。「入りたい」、「入りたくない」は全部自由なんですよ。
やめるのも自由、入るのも自由。
中沢:
でも一番問題なのは、「入る」、「入らない」だけだと利用者の問題なんだけど、例えば今、社会的に問題になっているのはリベンジポルノですよね。昔の恋人の撮った写真なんかを別れた後でネットにあげちゃったりするっていうのがあって。
角谷:
それは全体のネットの話になっちゃうので、ここら辺にしましょう。
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