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「紙のエロ本は死んだ」――書籍を【紙】で読むか【電子書籍】で読むか調査した結果「エロ本」と「小説」でほぼ正反対の結果に

紙のエロ本は実質的にもう死んだ

山田:
 紙のエロ本は死んだんだよ。

しみちゃん:
 死んだんですか。

山田:
 死んだでしょ。実質的にもう無理かもという気はするんだよね。なんか解体してしまった気はするんだけれどもね。

乙君:
 解体?

山田:
 エロ本というコンテンツ自体が非常にあいまいなものになってしまったというか。エロ本文化は80年代すごかったんだけれどもね、それがATGのポルノ映画みたいなところがあったじゃん。

 エロがあればなんでもできるぜみたいな、そういう時代があって、そこから文化が生まれた時代があったんだけれども、それが全部丸ごと電子に行っちゃったんで、エロ本というもの自体の力がこの20年くらいが、ぐんと落ちて久しいんじゃないかなという。

山田:
 あとはエロ本なるものの思い出、個人的な思い出の話になってくるんじゃないの。しみちゃんはどこがいいの?

しみちゃん:
 もうやっぱりコレクションですね(笑)。コレクターとしては、僕はダウンロードとかをせずにちゃんとセルを買う。あとは袋とじとかもそうですよね。電子はそれがないじゃないですか、袋とじ的なものが。

乙君:
 俺がエロ本は紙がいいなと思うのは、みんな同じものを見ているのがちょっと嫌かな。電子だとデータじゃん。これは別にエロ本関係ないんだけれども、紙で印刷されたやつのほうがクローズドな関係というか。大量生産されたものなんだけれども、それを買った時点で俺のものになったという形が。

しみちゃん:
 ちょっとわかるわ、それ。

乙君:
 それはエロ本だけじゃないけれどもね。所有欲の問題ね。

しみちゃん:
 そうですね、性のベーシック的な問題ですね。

試し読みは電子媒体、ハマったら紙媒体を買うという時代に突入

しみちゃん:
 では次の質問は小説は紙か電子かです。お願いします。

乙君:
 小説に関しては絶対に紙のほうがいい。

山田:
 なぜですか。

乙君:
 それはなぜかというと、まず厚みの問題なんですよ。

山田:
 どういうこと?

乙君:
 だからあれはデータを感受しているんじゃないんですよ。物語の中に入らなければいけないんですよ。となったときに電子だと手触りであとどれくらいかわからないんです。ここまで読んだからもうすぐ終わっちゃうとか、こんな分厚いのに全然進まないという体験も含めて本を読むということなんです。あと匂い。

 この紙の匂いって結構やっぱりするんですよ。古本は特にするけれども古本の匂いが。でも、やっぱり電子だとデバイスの匂いしかしないわけですよ。デバイスの匂いしかしないじゃん。

山田:
 匂い嗅ぐんだ?

乙君:
 嗅がないけれども無味無臭なわけ。本の風合いと手垢ね。それによって、例えばポテトチップス食いながら本を読むとするじゃん。そうすると油的なものが付く。それが、俺がこの物語に参加しているという証ともなっていくわけですよ。けれども、デバイスで読む、電子で読んじゃうと、1ページ1ページに手垢が付かないんです。

 なんかそこが体験としてアトラクションになっていない。ただ評論とか論文とか、文化人類学系の本とかそういうものは電子のほうがいいなと思うんです。こっちが参加するわけじゃなく情報をもらうわけだから、俺、小説は紙だけどという感じですね。

山田:
 この話、長くなるんで、ザックリいいます。マーケティングの話で、「映画化と同時に大量入荷!」みたいな売れる本を売れるタイミングで並べるという、割と野菜を売るみたいな感じになっています。だから、時代の鮮度みたいなものがあって、今のタイミングだったら売れると思って刷る。売れるから入荷するといって、こんな本屋つまらないに決まっているじゃん。

 だから、ウロウロできる本屋は、なくなっちゃった感じがあって。あと、こういうのが流行っているから、こういうのやりましょうって、女の子が美味しそうになんかを食べている漫画が流行っていますといったら、みんなそれになっちゃうみたいな状態で。本屋さんの多様性がなくなっている状態だから、これは、かつてのエイベックス時代のCDショップなんだよ。

 今だったら嵐とAKBしかなくなりましたみたいな。ああいう多様性のなくなったショップというものに、行く気がしない。「森鴎外に興味があります」といったら、やっぱり初期作品から最後までみたいじゃない? そのときに電子のタブレットが一個あれば、森鴎外だったら全部無料だからね。

乙君:
 だけど、本だったら一冊ずつ積み重ねていく快感があるわけですよ。タブレットは場所を取らない。だけど場所を取るから良いんじゃないですか。

山田:
 だから「太宰治と森鴎外どちらが好きか」という段階では電子。大ファンになったら、紙で欲しいなという時代に来ているような気がする。

乙君:
 それは、そうかもしれないですね。

山田:
 それはかつて雑誌の連載で見ている分には良いけど、コミックス買うほどじゃないなというやつを、コミックスで残しておきたいというやつと似ていて、雑誌のやってた役割みたいなものが、電子に移った感じがすごくある。

乙君:
 立ち読みが電子になったんでしょ。

山田:
 実をいうと漫画に関してもそういうのがあると思ってしまって。紙に対して個人的な思い入れがあるので「電子です」とはいいづらいところがあるというのが、本当のところだね。

乙君:
 そこが面白いんですよね。本として持っておきたいという、プライオリティというか、特別感というものにシフトしてきていると。そこが面白いことになってきているなと。

山田:
 だからアナログレコードとかに入れて、ファングッズになっちゃうんだと思う。基本的に電子で見る。しかも電子だと長い連載だと、2巻ぐらいまでが無料みたいなところから、ドハマりする人は本を買ってくださいみたいなところです。

紙媒体と電子媒体、それぞれの課題とは

しみちゃん:
 最後は雑誌ですね。どちらでしょうか。

しみちゃん:
 電子がちょっと増えましたね。

山田:
 しみちゃんは美容師だから紙媒体でしょう。髪を切っているときに目の前に並べるファッション誌にお世話になっているところもあるよね。

しみちゃん:
 というのもあるんですけど、今はカタログはタブレットのほうに移行していて髪型の検索をかけやすいんですよね。だからヘアカタログでいうなら、iPadを使っているサロンが増えていますね。

山田:
 そうなんだ。雑誌の切り抜きを持ってくるみたいなものがなくなってくるわけね。

しみちゃん:
 ほとんどがスマホで持ってきます。僕はファッション誌でいうなら大きさがないとちょっと困るので。

乙君:
 まずは雑誌というのがなにを指すのかイマイチわからなかったので電子かな。知りたい情報だけネットで見てとか。記事もそうだよね。

山田:
 各誌まとめて月いくらで読み放題というやつは、すごく盛況だというのはよくわかるなと思う。例えばYahoo!ニュースを見ているけど、それより豪華なやつというふうに、そういう形での進化をしたんだと思うんだよね。

 Yahoo!ニュースの中にコラムみたいなものがあるじゃん。あれのちゃんとしたやつが各種充実していますというのが、雑誌だったわけです。ああいう枠組がそのまま消えるんだったら、俺は電子で残っていたほうが良いんじゃないかなというくらいスマホにやられちゃいましたね。

乙君:
 ただ紙媒体全体にいえるんですけど、予期せぬ出会いはあるわけですよ。コンビニに行ってもそうなんですけど、例えば週刊少年ジャンプを立ち読みしようと思って手に取るじゃないですか。

 『ONE PIECE』を読みたいけれど、新しい漫画をチラッと読んじゃうとか、そういうのも含めてなんか自分が予期しない出会いなわけですよ。本屋ってそれだったんですよね。だからAmazonとかに、「あなたにオススメ」とか出て来るじゃないですか。

 あれだけになるとドンドン自分の世界が同じ色になってくるっていうのがある。本屋というのは「このタイトル面白そう」とかそういう秘密がいっぱいあった。

山田:
 本当は本屋はそうあって欲しい。だけど2週間で売れなかったら引き取られて裁断されるというようなシステムで回っている。そうすると多様性じゃないんだよね。売れた作家さんが出てくると山積みだとかさ。

 でもその山積みの数の本を全部全種類違う本にしたら、俺は本屋に行くね。だって面白いやつがあるかもしれないじゃん。最近はSNSでそういう出会いを探しているところがあると思わない? Twitterとかで「これ面白かった」みたいなのが来て「なにこれ」 って。

 そういうふうに変わっていってしまっているのは、止めようがない感じがする。リアル社会で新しいものに出会う限界みたいなものがあって、例えば1000人ぐらいフォローしていると、それだけの数の面白かったものがガンガン上がってくるわけじゃん。しかもそれがワンクリックで買えたりするわけだから。実際本屋でうろついて出会うというのも、かなわなくない?

乙君:
 だからそれも体験の話じゃないですか。足で行けよっていう話で。

山田:
 本来は俺もそっち派。

乙君:
 やっぱり本屋が好きなんですよ。では最後にまとめの一言をいってください(笑)。

しみちゃん:
 みなさんがご機嫌になれるほうを選んでいただけたらいいんじゃないでしょうか。

山田:
 どうもありがとうございました。

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