話題の記事

日本の選挙、努力の方向が間違っていた。「2つ折りしても開きやすくなる特別な投票用紙を使用してる」そんなことよりネット投票の導入を…

 10月22日に投開票が行われた第48回衆議院選挙。結果は自民・公明の与党が3分の2以上の議席を獲得しました。一方で投票率は53.7%となり、戦後2番目に低い投票率となりました。

 この選挙を受けて『ニコ論壇時評』では、プログラマーの小飼弾氏と番組アシスタントの山路達也氏がネット投票が選挙に導入されず、未だに記名式投票を採用している現状について解説を行いました。

左から小飼弾氏、山路達也氏。

―人気記事―

WPA2の脆弱性「KRACK」のヤバさをプログラマー小飼弾が解説。「現状の対応策はファームウェアアップデートまで」

行動経済学で読み解く選挙公約。「私たち、“子ども手当“とか“高速道路無料化“で痛い目にあったはずなんですけどね」


記名式投票に確実性はあるのか

山路:
 今回の選挙に限りませんが、選挙があるたびに必ず話題になるのが「ネット投票はできないのか」という話題が出るんですけれども……。

小飼:
 「不正しやすくなるから」、という意見がたくさん出てきてしまうからなのですけれども、それ以前の問題として投票用紙に手書きをさせるなよ(笑)。

山路:
 “支持政党なし”【※】とか(笑)。

※支持政党なし
支持政党なし。日本の政治団体。略称は「支持なし」。2013年7月1日に結党し、初代代表の佐野秀光氏は衆議院議員選挙への立候補経験がある。団体名称について「まぎらわしい」「実際の『支持政党なし』(=無党派層)と混同する」という意見も多い。

小飼:
 僕はいつも自分の票がきちんとカウントされているかわからないのが、不満でしょうがない。確かに自分はこの候補、この党に投票しましたという確証が得られないのね。

山路:
 たとえばマークシートになった場合、確証はそんなに得られますか。

小飼:
 手書きよりもずっと得られるでしょう。

山路:
 文字認識のような、面倒なことをするよりはマークシートをチェック、スキャンしたほうが自分の票がきちんとカウントされる確率は上がるということですね。

小飼:
 実は、ネット投票を使った場合は、自分が誰に投票したのかもずっと確証を得やすいんですけれどもね。ちゃんと確約書を送ろうと思えば送れるわけじゃないですか。

山路:
 プログラマーとしてはネット投票を支持するということでしょうか。日本のような有権者が、ある程度多いところでネット投票というものは確実な信頼性で実行できるものなのでしょうか。

小飼:
 そもそも今のやり方にまったく確実性というものはない。

山路:
 ネット投票にいたる前の段階だし。

小飼:
 しかも人の目で人が書いた文字を認識させているんでしょう?

山路:
 投票用紙は2つ折りしても開きやすくなるように特別に開発されている紙みたいですよ。

小飼:
 特別な紙を使用しています、みたいな……馬鹿か!

一同:
 (笑)

選挙はもっとコストカットできる

山路:
 努力の方向が間違っている感じはありますよね。

小飼:
 俺の汚い文字もどきが光学文字認識できちんと読まれるかっつうの(笑)!

山路:
 すごく自信を持って言っていますね(笑)。

小飼:
 しかも「選挙費用には600億円かかるけれども、こういうものだ」みたいなことを言っている馬鹿もいるんですよ。選挙はもっと安く、ローコストでできる。票も、もっと早くカウントできる仕組みがあるにもかかわらず……。

山路:
 それなのに記名式のまま続けて大金を支払っている。

小飼:
 それもほとんど人件費なんですよ。ちゃんと立会人とかにも日当が出ていますよ。

山路:
 この投票の仕組みを記名式から選択式へ変える、というようなことでも、そんなにハードルが高いものなんですか?

小飼:
 僕も調べてわかったんですけれども、びっくりしたことに1994年に投票方式を記号式【※】に変えると言ったんですけれども、小選挙区制が導入されたのと同時にそれもなかったことにされているんです。あのときに何が起こったのかというのを知りたいです。

※記号式
記号式投票。あらかじめ候補者名や政党名が書かれた投票用紙に、投票者が何らかの定められた記号(◯やチェック)を記す投票方式。マークシートやパンチカード、電子投票などもこれに当たる。

山路:
 たしかにそんな話題が出たような気が……。

小飼:
 記号式にすることはできるし、法律的には「マークシート式を使っても良い」というふうになっているらしいんです。少なくとも地方選挙の場合は、決めていなければいけないというルールはないんです。

山路:
 ちなみに投票方法が選択制だと都合が悪い人はいるんですかね?

小飼:
 都合が悪い人は、まずあの紙を作っている業者ですよね。立ち合ったり、票を手でカウントしたりして日当をもらう人もですよね。

山路:
 そんなに大きな利権なのかな……。選挙はそんなに頻繁にあるわけではないですけれどもね。

小飼:
 今のところ手書きということは、判子よりもずっと確かな本人確認手段として日本をはじめ全世界的に認められているわけですよね。手書きで投票用紙を書かせれば、投票の秘密は守られますか?

 東京みたいに人口が多いところは、まだ赤の他人が書いた字を赤の他人が読んでいるわけですけれども……これが田舎だったら字を見ただけで「あの人だ!」というのはすぐにわかるじゃないですか。だから微妙に組織票と与党有利にはなりますね。

山路:
 意外に把握されているかもしれない、というのはなんだかぞっとする話ですね。

この記事に関するタグ

「テクノロジー」の最新記事

新着ニュース一覧

アクセスランキング