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シオンタウンのBGMを聴くとなぜ「怖い」と感じるのか? 元プロミュージシャンの音楽心理学者が解説

 記事の要約

なぜ音楽を「怖い」と感じるのか? 2つのメカニズム

 池上先生の解説によると、人が音に対して抱く「恐怖」は大きく以下の2種類に分けられます。

 1. 生まれつき備わっている恐怖(本能的・反射的)

 文化や経験に関係なく、生物として「命を守るため」に備わっている防衛本能です。脳の扁桃体へダイレクトに作用し、戦うか逃げるかの準備(心拍数上昇など)をさせます。

  • 不協和音: 音の周波数の比率が複雑な音。「悲鳴」や「断末魔」に近い成分を含んでおり、本能的に危険を察知させます。

  • 粗い音色: ガサガサとしたノイズや、急激に変化する音。

  • 急な大きな音・近づいてくる音: 「雷」や「捕食者の接近」を連想させ、反射的にビクッとさせます(映画『ジョーズ』のテーマなどが典型例)。

 2. 経験と結びついた恐怖(後天的・学習)

 「パブロフの犬」のような条件付けによって生まれる恐怖です。
 音そのものに罪はなくても、過去の怖い体験とリンクすることで恐怖の対象になります。

  • ACの「ポポポポーン」: 震災時の不安な映像とともに繰り返し流れたため、恐怖と結びついてしまった。

  • ドラクエの「冒険の書が消える音」: 「努力の喪失」という絶望的な経験と強烈に結びついている。

  • ゲームオーバー音: 「失敗」「死」というネガティブな結果の象徴として学習される。

具体的な事例の正体

 記事内で挙げられた「怖い音」の正体は、以下のように分析されています。

音・音楽分類怖さの正体
シオンタウンのBGM本能 + 学習不自然な音階の上がり方や不協和音(悲鳴に近い成分)が含まれる本能的な怖さに加え、ゲーム内の「死」や「お墓」という文脈が学習されて強化されている。
AC (ポポポポーン)学習曲自体は明るいが、震災報道という恐怖体験とセットで記憶された条件付けの結果。
ドラクエ (データ消失)本能 + 学習いきなり大きな音が鳴る(本能)+ データ喪失の絶望感(学習)。
映画『ジョーズ』本能徐々に音が大きく、テンポが速くなることで「捕食者が近づいてくる」という生命の危機を擬似体験させている。

なぜ子供の頃の音楽が「トラウマ」になりやすいのか?

 
 これには脳の発達スピードの差が関係しています。
  1. 扁桃体(恐怖を感じる部位): 比較的早く成熟する。

  2. 前頭前野(理性を司り、恐怖を抑える部位): 成熟が遅い。

 子供は「怖い!」と感じる力は一人前なのに、それを「これはただの音楽だ」「安全だ」と理性で抑え込む力が未発達です。
 そのため、強烈な恐怖として脳に刻み込まれやすく、大人になっても「理屈抜きで怖い」という感覚が残りやすいのです。

結論:音楽は「生存本能」をハックしている

 音楽が怖いのは、「天敵が来た!」「逃げろ!」という太古の昔からある生存本能のスイッチを、音の成分が誤作動させているからと言えます。

 逆に言えば、ホラー映画やゲームの作曲家たちは、この「脳のバグ」を意図的に引き起こす天才だということですね。
 シオンタウンの曲が怖いのは、私たちが正常な生存本能を持っている証拠とも言えそうです。

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