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【1枚絵動画投稿祭参加作品】初音ミクの調声に”歌い方好き”の声!歌詞・サウンド・歌声 すべてが一枚絵の魅力を際立たせる『遠く、遠く、遠く。』

 今回は、中瀬ミルさんが2023年12月8日に投稿した「遠く、遠く、遠く。」を紹介する。1枚絵動画投稿祭の参加楽曲として投稿された同曲は、中瀬ミルさん本人によるイラストと楽曲制作によって、高い一貫性を実現した動画作品になっているのが、ポイントだ。

文/小町 碧音(こまち みお)


 ローファイな質感を持ったサウンドが印象に残るイントロダクション。淀んだような初音ミクの歌声と灰色の空を背景に肩を寄せ合いながら眠るふたりのいまにも消えてしまいそうな雰囲気が見事に調和することで、静止画とは思えない生命力を感じさせる。アニメーションではないのに、そのノスタルジックな一枚絵がリアルさを帯びてくるように感じるから不思議。この不思議な感覚を生み出すのは、サウンド、初音ミクの調声、そしてノスタルジックな風景を描いた一枚絵が絶妙なバランスで相互作用しているからこそだろう。

 かつて大切な存在だった‟あなた”を忘れられずに生きる人の葛藤を描いている歌詞。特に印象的なのは、1番の〈当たり前のように みんな強くなっていく 知らない人と話すことも上手くなってる〉というフレーズ。時の流れと、それに伴う喪失感、それでも前に進むしかないという複雑な心情がここで表現されており、多くの人の心に響くフレーズになっていると感じる。

 〈何気ない誰かのふざけた声が あなたを攫っていった 当たり前に侵されていった なのにこの声は終わらなかったから〉と歌うサビへ。言葉にならない想いを乗せた歌詞と力強いバンドサウンドが相まって、はち切れそうな虚無感を表現している。〈叶うなら、あなたを忘れて手遠い場所へ なんて思いながら、動けない事の美しさを 誰かが描く、〉という歌詞で、主人公が現実と理想のギャップに苦しむ様子が描かれている2番。過去の記憶がフラッシュバックするきっかけへと導くのは、ピアノとともに流れる、過去を彷彿とさせる青春時代の声に近いサウンドエフェクトだ。

 同曲は、過去と現在を行ったり来たりする。最も主人公の心境の変化を伝えているのは、〈あなたが居た頃よりずっと 複雑で繊細になったよ〉。そこから、〈またいつか聞かせてね僕は変わらないから。〉という‟あなた”に対する変わらない愛情と未来へと続いていく言葉で曲はエンディングを迎える。まさに、残された人の思考は、止まることなく、過去と現在、そして未来を縫い合わせていく。その息吹を感じずにはいられない、たしかなひとつの愛というメッセージが託された1曲だ。


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