誤解しがちな“震度”と“マグニチュード”の違い、「震度8」が存在しない理由などについてやさしく解説
今回紹介する動画は、ゆっくり防災インフォさんが投稿した『【ゆっくり解説】なぜない「震度8」~震度・マグニチュードの最大は?~』。
“震度”と“マグニチュード”の違い、震度7より大きい数値が存在しない理由などについて、音声読み上げソフトを使用して解説しています。
魔理沙:
阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)は日本の観測史上初めて震度7が観測された地震で、震源が神戸という大都市に近かったこともあり、甚大な被害が発生した。
霊夢:
高速道路が倒れたり、至る所で火災が発生したりとか、ものすごい 被害だったみたいね。ところで魔理沙、地震の震度って最大で7だったわよね。
魔理沙:
その通りだ。それがどうしたんだ?
霊夢:
調べているうちに、大地震の後に「震度8の地震に注意!」みたいな噂が広がったことがあるというのを見て、あれ? って思ったの。
魔理沙:
なるほどな。確かに震度は最大7までだが、震度8以上があると誤解してしまう理由はいくつかある。それでは今回は、震度とマグニチュードの最大について説明していくぜ。
霊夢:
よろしくお願いするわ。
■「震度8」が存在しない理由
魔理沙:
まず、なぜ震度8以上があると誤解されるかを説明しよう。ひとつ目の理由は、震度が全部で10段階あるからだ。
霊夢:
10段階? 最大で7なのに?
魔理沙:
そうだ。震度が10段階あるとだけ聞くと、震度1から震度10まであると思ってしまいがちだ。しかし、実際には震度5は震度5強と震度5弱に、震度6は震度6強と震度6弱に分かれている。また、震度1の下に、人間が(通常は)体に感じない「震度0」という段階がある。
霊夢:
1から7の7段階にこの3つを加えて、全部で10段階ということなのね。
魔理沙:
その通りだ。
霊夢:
何でこんな複雑な分け方になっているのかしら?
魔理沙:
震度5と震度6については、昔は弱と強に分かれていなかったんだ。しかし、色々な地震の被害を見ると、同じ「震度5」や「震度6」の中でも、被害に違いがあることが分かったんだ。
現在の震度の階級表(当時とは異なる)を見ても、震度5弱では「不安定な家具が倒れる」。震度5強では「ブロック塀が崩れ始める」とあって、受ける印象がちょっと違うな。
震度6も、弱では木造建物が倒れる「ものもある」だが、強では倒れるものが「多くなる」という風に違いがある。
霊夢:
なるほど。震度5や震度6は幅が広すぎたから弱と強に分けたのね。
それじゃあ、震度0はなぜあるのかしら? 0からじゃなくて1から始めることはできないの?
魔理沙:
震度0は、(通常は)体には感じないが、地震計には記録される揺れのことだ。揺れていることも分からないくらいの揺れだから、当然被害も起こらないので、地震速報で震度0の地域を伝える意味はほとんどない。
仮に今の震度0を震度1にしたうえで、防災上意味がないからと伝えるのを省略すると、地震情報で伝えられる震度は2からになってしまうから、「何で震度1はないんだろう? 」という疑問が出て逆に混乱することが考えられるな。
霊夢:
なるほどねぇ。
魔理沙:
というわけで、震度8以上があると誤解されている理由の1つ「震度が全部で10段階あるから」について説明してきた。もう1つの理由は、震度と違ってマグニチュードには8以上があるということだな。
2011年の東北地方太平洋沖地震や、2015年の小笠原諸島西方沖の地震など、マグニチュード8以上の地震は時々発生している。だから「マグニチュード8の地震」と混同して「震度8の地震」があると勘違いしてしまっている可能性はあるな。
霊夢:
なるほど。震度8はないけれど、マグニチュードには8があるのね。震度8がないというのは分かったけれど、仮にあったとしたらどんな地震になるのかしら?
魔理沙:
もし震度8があったら、か。実は震度というのは震度計の内部で小数点以下まで計算されている。この小数点以下の震度のことを「計測震度」と言って、計測震度を四捨五入したものが発表される震度だ。
震度0.5から1.5が震度1、震度1.5から2.5が震度2という感じだな。この考え方から行くと、震度8は計測震度7.5以上の地震ということになる。しかし、2022年までに日本で観測された地震では、計測震度7.5どころか7.0以上の揺れも観測されたことがない。
霊夢:
なるほど。震度8どころか、それに近い地震もこれまでに起こったことがないのね。
魔理沙:
そのとおりだ。また、地震の揺れを表す数字として「加速度」というものもある。震度8相当の揺れでは加速度は5,000ガル以上(投稿者による試算)となると考えられるが、現実には過去の地震で観測された加速度は熊本地震で1,600ガル、東北地方太平洋沖地震でも2,900ガルとなっており、震度8相当の揺れはこれらの地震を大きく超える、未知の揺れになることが考えられる。
このように、震度8(相当)の揺れは想像することはできるが、起こったときに実際どんな被害が起こるかについては実際の事例がなくてよく分からないんだ。
霊夢:
なるほど。仮に震度8を作っても「どんな揺れ」という表現ができないということね。
魔理沙:
その通りだ。また、現在の最大である震度7は、木造家屋や耐震性の低い鉄筋コンクリート造の建物が倒れるようなものすごい揺れだ。
したがって、震度7の揺れが観測されれば最大級の防災対応がとられるので、震度7より上の階級を作っても現状では防災上の意味がないというのも震度8がない理由と言える。
霊夢:
なるほど。震度8を作っても意味がないと考えられているのね。
魔理沙:
そうだ。ここまでの内容をまとめると、震度8があると勘違いされる理由は「震度が(0・5弱・5強・6弱・6強を含めて)10段階あるから」「震度と違ってマグニチュードには8があるから」の2つ。
震度8を作らない理由は「震度8相当の揺れが起こった時に何が起こるか分かっていないから」「震度7の時点で最大級の防災対応がとられるので、それより上を作っても防災上の意味が薄いから」の2点だな。
霊夢:
なるほどねぇ。ところで、マグニチュードには震度と違って8以上もあるのよね。マグニチュードは最大でいくつまであるのかしら?
魔理沙:
日本で観測された最もマグニチュードの大きい地震は、2011年の東北地方太平洋沖地震で、マグニチュード9.0だ。世界では、1960年のチリ地震でマグニチュード9.5が観測された例がある。これより大きなマグニチュードは、地震計による観測でも、地質調査でも発見されていない。
霊夢:
これまでの観測ではマグニチュード9.5が最大なのね。
魔理沙:
そうだ。ただ、震度と同じように、マグニチュード10以上の地震がどんなものかを想像することはできる。マグニチュードは1増えるごとにエネルギーの大きさがおよそ30倍(厳密には約31.6倍)になる。
地震のエネルギーの大きさが、「地震を引き起こす断層の長さ×幅×ずれ動いた量」で表されると考えると、断層の長さと幅、ずれ動く量が全部3倍になれば、エネルギーの大きさは3×3×3で27倍、大体30倍だ。
つまり、断層の長さと幅とずれ動く量が全部3倍ちょっとになると、マグニチュードが1増えると考えられる。
マグニチュード9の東北地方太平洋沖地震での断層の長さや幅を300キロから400キロ、断層がずれ動いた量を平均15から20メートルと見積もると、マグニチュード10の地震ではおよそ3倍して、断層の長さや幅がおよそ1,000から1,500キロ、断層がずれ動く量は40から50メートルとなる。
霊夢:
それは具体的にどんな地震になるのかしら?
魔理沙:
日本周辺で言うなら三陸沖から千島列島付近までの断層が一気にずれ動いた場合、あるいは東海道沖から南西諸島の沖合までの断層が一気にずれ動くような場合がマグニチュード10と考えられるな。東北地方太平洋沖地震や、想定されている南海トラフ巨大地震よりはるかに大きな地震だ。
霊夢:
途方もない地震ね……。
魔理沙:
そうだな。また、この考え方でさらに大きな地震を考えると、マグニチュード13では断層の長さや幅が3万キロから4万キロ、断層がずれ動く量が1.5キロから2キロとなる。4万キロは地球1周分の長さになるので、地球が真っ二つに割れて数キロ動いたらマグニチュード13になるということだな。
霊夢:
そんな地震起こりうるの?
魔理沙:
地球内部にそのような現象を起こすエネルギーはないので、そんな地震は起こらない。マグニチュード10の地震の方は絶対に起こらないとまでは言えないが、かなり広い範囲の断層が同時に動く必要があるため、起こる可能性は低いと考えられる。
まぁそもそもマグニチュードが9でも10でも私たちがとるべき対策は変わらないので、巨大な地震を想像して悲観的になってもあまり意味はないだろう。
揺れに強い建物に住み、食料や水・簡易トイレを備蓄し、いざという時には素早く逃げられるようにしておく。このような基本的な地震対策を日ごろからとるように心がけよう。
詳しい解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。
『【ゆっくり解説】なぜない「震度8」~震度・マグニチュードの最大は?~』