「ニラ」と間違えて「スイセン」を食べてしまった一家の悲劇! “絶対に食べてはいけない毒草”による事故を解説
今回紹介する、ゆっくりするところさん投稿の『【2014年島根】「絶対に食べてはいけない草」で夕食を作ってしまった主婦 【ゆっくり解説】』という動画では、島根県で発生した「スイセン」の誤食事故について解説を行っていきます。
ニオイがしない「ニラパスタ」、実はスイセンだった
魔理沙:
今回はリクエストの中から植物に関する事例を紹介する。今回は非常に一般的かつ、身近な草に関する話だ。
今回も例によってその紹介の一部でショッキングな表現をせざるを得ない部分がある。それにこれはあくまでも事故の概要を伝えるものであり、全ての事柄を詳細に正確に解説する動画ではないので、以上のことを理解し、了承できる人のみ視聴を続けてくれ。
島根県中東部にある「出雲市」。北部は、島根半島、中央部は出雲平野、南部は中国山地で構成されている地域で、県内では2番目に人口が多く、東部には宍道湖、西部には神西湖があり、海はもちろん山・川・湖など、多彩な自然に恵まれた豊かな場所だ。
そんな出雲市に住む女性Aさん。彼女は夫と今年91歳になる父親と3人で暮らしていた。2014年5月、Aさんはいつも通りに家事をこなし、夕方になると父が管理していた畑から野菜類を収穫し、夕食の支度を始めた。
この日の献立はスパゲティー。畑でとれた新鮮なニラと、トマトソースを絡めた味付けで、父や夫にも好評だった。
霊夢:
へえ、ニラとトマトかあ。考えたことなかった組み合わせだけど、おいしいかも。
魔理沙:
ニラは香りが強い野菜だし、ニンニクなんかとも合うからな。しかしAさんはこのスパゲティーを食べながら、「思っていたよりも香りが弱い」と感じ、もっとニンニクなどの香辛料類を足せば良かったと考えていた。
このニラも自家栽培したものだったため、この時はあまりうまく育たなかったのかなと思い、特に気にせずに食事を続けていた。だが、さっきから妙に胸の辺りがムカムカして、胸焼けしたときのように気分がよくない。それは次第に強くなっていき、Aさんは我慢ができずにトイレに立った時、食べたものを戻してしまった。
霊夢:
どうしたの……。
魔理沙:
彼女がトイレからリビングに戻ると、父や夫も同じように胸をさすりながら青白い顔で気持ちが悪いと訴えていた。これは食中毒か何かが起きていると考えたAさんは、すぐに救急に通報し、助けを求めた。
霊夢:
判断が早い!
魔理沙:
ああ。高齢だった父がいたためだろう。それから数分ほどで、すぐに救急車が到着。そのころには父や夫も激しく嘔吐を繰り返しており、病院に搬送される間もずっと苦しそうな様子だったという。病院到着後、すぐに3人は処置を受け、数時間後には回復していったが、父親はそのまま入院。
完全に回復するまで丸1日以上の時間を有したが、命に別条はなかった。Aさん夫婦も回復まで激しい頭痛や腹痛、嘔吐などを繰り返していたが、後遺症などもなく3人は無事に家に帰ることができた。
霊夢:
よかった。
魔理沙:
病院での検査の結果、3人はアルカロイド系の毒素によって中毒症状を起こしていたことが分かった。
霊夢:
アルカロイド系ってよく聞くわよね?
魔理沙:
アルカロイドというのは、「アルカリに似た化合物」という意味で、一般的に天然由来の有機化合物の総称として用いられる。これは微生物、植物、両生類などさまざまな生物によって生産される物質で、その生産者以外にとっては非常に強い毒性を持つことが多い。
彼らは食中毒と思われる症状で運ばれていたため、3人が口にしていたものなどが調べられた。そして夕食に食べていたスパゲティーから、植物アルカロイドである「リコリン」という成分が検出された。これは園芸品の「スイセン」という花に多く含まれる毒素だった。
霊夢:
スイセンって、あの細長い綺麗な花?
魔理沙:
そう。あのスイセンだ。Aさんが家の畑から採ってきてスパゲティーに使っていたニラは、実はニラではなく、このスイセンの葉っぱだったんだ。
霊夢:
じゃあ毒草をそのまま料理に使って食べてたってこと?
魔理沙:
ああ。3人が夕食に食べていたのは毒草のスパゲティだったんだ。
霊夢:
いやああああ!
魔理沙:
スイセンはヒヤシンスやチューリップと同じく球根を持つ植物だが、この2つとは違い、非常に生命力が強く、その辺に適当に撒くだけでも勝手に成長して花を咲かせる。おそらくだが、どこか近くで栽培されていたスイセンが、Aさんの家の畑に入り込み、そこで成長してしまった。
そして運悪くそこにはスイセンに似た食用のニラが栽培されており、Aさんはこの2つを見間違え、スイセンの方を収穫し、料理してしまったんだろう。
霊夢:
確かにこれなら間違えちゃうかも。
魔理沙:
このスイセンには「リコリン」「タゼチン」というアルカロイド系の毒素が含まれており、誤って経口摂取してしまうと、嘔吐、胃腸炎、頭痛、めまいなどさまざまな症状を引き起こし、最悪の場合は意識不明に陥り、そのまま亡くなってしまうこともある。
この時はAさんによって、すぐに通報され、比較的早期に治療を受けることができたし、食べていた量も少なかったため、3人とも無事生還することができたが、もっと大量に摂取していたり時間が経っていたら、危なかったかもしれない。
実はこのスイセンの誤食による中毒事故は、わが国でも昔から非常に多く発生しており、現在でもニラと間違えて販売されたり食べてしまったりする事故が後を絶たないものなんだ。食用のニラに似ていることと、スイセンの生命力が強いことが災いしているんだろう。野生化していることも少なくないものだからな。
それに、その美しさや栽培難易度の低さからも、園芸用として採用しやすい種でもあるため、日本全国どこに行っても見かけることができる。しかも多年草で種類も多いからな。
この事故が起こるのは山菜などが豊富に取れるようになる春先に発生しやすい。これはニラに似ているだけではなく、「ノビル」などのネギ系の山菜にも類似しているためだと思われる。
霊夢:
似てるわね。見分け方ってあるの?
魔理沙:
ああ。一応それも紹介しておこう。まず、ニラに比べてスイセンの葉っぱは幅が広く、厚みがあり、全体的に大きなものになっている。茎の太さもニラの倍以上太く、色味は少し薄めだと言われている。
霊夢:
見分けるの難しくない?
魔理沙:
ちょっと見た目だけで判別するのは難しいかもしれない。だがこの2つには最大の違いがある。それは「におい」だ。ニラやノビルの場合は、ちぎったり葉っぱに刺激を加えると、特有の強い香りが漂うが、スイセンには全くこの匂いがない。
霊夢:
だからAさんがスパゲティを食べてたとき、香りが足りないかもって思ってたんだ。
魔理沙:
そういうことだろう。彼女はニラの出来が悪いと勘違いしていたが、見た目で見分けるのは正直、専門家じゃないと難しい。もし家庭菜園などでニラやノビルを栽培している人がいたら、収穫する際に少しちぎって匂いをかいでみたほうがいいかもしれない。
一応、見分け方などを紹介させてもらったが、過信は禁物だ。山菜採りなど野生のものを採取しに行った時は、必ず専門的な知識がある人に判別してもらおう。こういった間違いやすい毒草というのは、案外私たちの身近にたくさん存在しているものだからな。
霊夢:
私も他人事だと思わないようにしないと。
スイセンとニラを間違えて口に入れてしまう事故が春先になると増えてくるそうです。口に入れる前に十分に確認をして、気をつけたいところです。解説をノーカットでご覧になりたい方はぜひ動画をご視聴ください。
『【2014年島根】「絶対に食べてはいけない草」で夕食を作ってしまった主婦 【ゆっくり解説】』
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