ノスタルジックな「寝台列車」はなぜ消えたのか? 時代の移り変わりと同時に衰退した歴史を解説
今回紹介する、敗北図鑑ゆっくりルーザーズさん投稿の『【寝台列車】なぜ衰退?寝泊まりできる夜行列車はなぜ消えたのか【ゆっくり解説】』という動画では、音声読み上げソフトを使用し、寝台列車が衰退した理由を解説していきます。
時代の移り変わりと同時に消えた寝台列車
魔理沙:
かつては多くのビジネスパーソンが利用した寝台列車だが、1980年代以降、次々に廃止となり、今や日本で毎日定期運行している寝台列車は、サンライズ瀬戸とサンライズ出雲の2種類だけなんだ。
霊夢:
一体どうして寝台列車はそんなに少なくなってしまったの?
魔理沙:
寝台列車が衰退してしまったことは、時代背景の変化が大きく影響しているんだ。そもそも日本における寝台列車とは、全国の鉄道網が一通り完成した明治時代中期以降に運行されるようになった夜行列車に端を発しているんだ。
霊夢:
夜行列車?
魔理沙:
その名の通り、夜に運行する列車のことを言う。当時のビジネス層は、国鉄が運営する夜行列車を利用して、出張先などへ足を運んでいたんだ。
霊夢:
そんな時代があったんだ。
魔理沙:
運行開始当初は座席車のみだった夜行列車だが、長旅を快適に過ごしたい利用者のニーズに応える形で、ベッドや食料庫を備えるになった。それが寝台列車だというわけだ。こうして1900年、山陽鉄道が日本発の寝台列車の提供を開始。
多少運賃は高いが、他の交通機関よりも早く目的地に到着する上に、乗り心地も快適。お金がかかってもいいからサクッと移動したいビジネスパーソンの需要にピタリとかみ合ったのが寝台列車だったんだ。1900年代中盤まで、多くの人が寝台列車を好んで利用したのにはいくつかの理由があるんだ。まずは電車の移動速度が遅かったことだ。
霊夢:
電車が遅かった? それがどう関係するの?
魔理沙:
寝台列車が運行開始した1900年当時、例えば東京―神戸間を直通列車で移動するには20時間以上もの移動時間を要したんだ。
霊夢:
現代なら3時間もあれば新幹線で移動できる距離だものね。
魔理沙:
さらに当時は宿泊施設の利用価格が今より高いこともあり、寝台列車を使うことで費用を割安に抑えられるというメリットがあった。
霊夢:
なるほど、高額な旅館やホテルに泊まらなくても、移動と宿泊がセットになっているのはビジネスパーソンにとってはさぞ魅力だっただろうね。
魔理沙:
また寝台列車の場合、ひとりあたりの占有スペースが当然座席よりも広い。これはビジネスパーソンにとっても嬉しいし、寝台列車で旅行することが目的の一般利用客からしても、旅情あふれる特別な空間の演出に一役買ったんだ。まとめると、寝台列車は安く快適で、便利で旅情もある、ラーメンで言えばトッピング全部乗せのような乗り物だったんだ。
ところが寝台列車は1984年以降、次々に廃止され、淘汰されていくことになるんだ。
霊夢:
どうして?
魔理沙:
寝台列車が次々に廃止された理由、それは最初に説明したとおり時代背景の変化によるものだったんだ。提供サービスに対して、運賃割高問題が挙げられる。 つまり昔は良かったものが、現代では他サービスと比較した際に、相対的に良くないサービスへと評価が覆ってしまったんだ。
時を経るごとに次々と現れる新交通機関、旅客機、高速バス、新幹線をはじめとする高速鉄道など、寝台列車に競合する交通機関が次々に台頭したことが寝台列車衰退の一因となってしまったんだ。
もともとは割安で時間を有効活用できることが売りだった寝台列車も、より安く早い移動手段として登場した競合交通機関には叶わなかった。気づけば、寝台列車は高コスト高価格だという評価を受けるようになった。この傾向は日本だけでなく、欧米、アジア、アフリカ、南米、オーストラリアなども同様で、寝台列車は世界的に衰退していくこととなってしまったんだ。
さらには格安ビジネスホテルチェーンの急成長、全国展開も相まって、わざわざ寝台列車を使わなくても目的地に早めに到着して前泊する方が、安上がりで楽というのも、ビジネスパーソンの寝台列車離れを手伝ったんだ。
霊夢:
まあ、出張でわざわざ寝台列車使うのは相当物好きな人だけだろうからね。
魔理沙:
もとより寝台列車のメイン利用客はビジネスパーソン。寝台列車はビジネス列車だともいえた。そのメイン利用者である出張客が乗らなくなった寝台列車に、もはや使命はなくなってしまったんだ。こうした時代の移り変わりによって、利用客は減少。採算が合わなくなった寝台列車は次々に廃止されていくことになってしまったというわけだ。
1986年には明星。1994年にはみずほ。2005年にはあさかぜ、さくら、彗星。2006年には出雲。2008年には銀河、なは、あかつき。2009年にははやぶさ、富士。豪華寝台列車の北斗星も2015年に廃止。定期運航を行う寝台列車はサンライズ出雲とサンライズ瀬戸の2種類のみとなってしまったんだ。
霊夢:
それにしても1980年以降になってからバタバタと廃止になったのには理由があるの?
魔理沙:
1987年4月1日から国鉄が分割民営化されたことがきっかけとなっているんだ。
霊夢:
どうして民営化されると寝台列車が廃止になるの?
魔理沙:
国が運営しているうちは、寝台列車がいかに採算の合わない商売だとしても見過ごされていた。しかし民営化されて利益を求める一般企業が運営するとなると話が別で、利益を生まない寝台列車は事業縮小に向かうしかなかったんだ。
霊夢:
資本主義の厳しい競争にさらされてしまったんだね。
魔理沙:
そういうことだ。実は国鉄時代から寝台列車の存在は過大視されていたらしく、運輸省は1979年の時点で国鉄に対して寝台列車の廃止検討を指示しているんだ。 採算の合わない寝台列車を廃止しつつ、当時42万人余りが在籍していた国鉄職員を7万人削減することを意図した指示だったそうだ。
霊夢:
恐ろしい話だね。でも、いくらホテルが安くなったり他の交通手段が便利になったりしたからといって、寝台列車には寝台列車の良さ、旅情があるわけじゃない? それでもダメだったの?
魔理沙:
実は霊夢の指摘通り、1987年の分割民営化以後、各地の電車の運営が国鉄からJRに切り替わった際、JRは判断を行った。その判断とは、これまでのようにビジネス列車として寝台列車を売り出すのではなく、渡航目的の客をターゲットとしたサービスに切り替えることだったんだ。
霊夢:
なるほど、確かにそれはありだね!
魔理沙:
これまで以上に料金を高く設定する代わりに、設備を強化。移動手段としてのサービスではなく、旅情を存分に味わう移動体験を提供するサービスに切り替えたんだ。
霊夢:
頭が良いねJR。
魔理沙:
そうして生まれたのがJR東日本のカシオペア、JR西日本のトワイライトエクスプレス、JR九州のななつ星in九州などだ。
霊夢:
すごく豪華な寝台列車!
魔理沙:
価格競争によって各種交通機関で安く移動できるようになった現代、寝台列車を残すためには高速バスや格安飛行機ではなく、寝台列車を選ぶだけのサービスが必要と考えたJRは、その方向へと舵を切った。その結果、成功だ。
霊夢:
すごいな。せっかくだから豪華な寝台列車乗ってみたいな。
魔理沙:
試しに予約サイトを見てみるか?
霊夢:
……って、109万円!? どういうこと!? しかも5日間って!?
魔理沙:
さっきも言っただろう?豪華寝台列車の目的は移動ではない。乗ること自体が目的なんだ。かつての寝台列車とは違い、富裕層向けのツアー専用臨時列車なんだ。
霊夢:
クルーズ旅行の列車版って感じなのかな。
魔理沙:
まさに豪華寝台列車は「クルーズトレイン」とも呼ばれている。一流のサービスを楽しみながら、観光地を巡る豪華寝台列車は、数十万円以上という超高額だが、予約がとれないほど人気なんだ。
霊夢:
そうか。寝台列車はもはや庶民の乗り物じゃなくなっているんだね。それでも移動手段として毎日運行している寝台列車もまだあるんですよね?
魔理沙:
そう。何度か説明したとおり、サンライズ出雲とサンライズ瀬戸の2種類は未だ日本で残っているんだ。
霊夢:
そのふたつはなぜ生き残っているの?
魔理沙:
これらは1998年に運行開始したんだが、航空機や新幹線の空白時間に移動できるようにダイヤを組んだことで、ニッチで安定した利用者のニーズをつかんだのが勝因だと言われているんだ。
霊夢:
へぇ、そんな生き残り策があったんだね。
魔理沙:
このふたつの寝台列車がいつまで続くのかは分からないが、時代の流れによりビジネスの形を変化せざるを得ない中でも、工夫ひとつで好評を得ることが可能だと示しているのがこのふたつの寝台列車なんだ。
霊夢:
でも改めて寝台列車って風情があって魅力があるよね。
なんとも旅情あふれる寝台列車。時代とはいえ、衰退していくのは寂しいですね。ぜひ興味がある方は乗車してみてはいかがでしょうか。解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。
『【寝台列車】なぜ衰退?寝泊まりできる夜行列車はなぜ消えたのか【ゆっくり解説】』