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“なんでもあり”な『ドラクエ3』RTAがヤバい。「ファミコンを合計350台購入」「ホットプレートで本体の温度管理」──ついにはラスボスのゾーマを倒さずにクリアするチャートが開拓される

3人の出会いは『ドラクエ3』なんでもありRTAのDiscord

──現在、『ドラクエ3』のなんでもありRTAに挑んでいるみなさんですが、初めて『ドラクエ3』を知ったときのことって覚えてらっしゃいますか?

ばくぜろ:
 僕はものごころついたときにはファミコンが家にあって、小学校に入って「あいうえお」を勉強し始めたころに『ドラクエ3』で初めてRPGに触れました

 そのころはゲームシステムやストーリーについてはよくわかっていませんでしたが、敵を倒してレベルが上がっていく感覚は楽しかった覚えがあります。

ひっしー:
 当時、『ドラクエ3』は社会現象になっていた気がします。ひとつ記憶に残っているのが、父親が『ドラクエ3』の発売日に「これも勉強だ」と平日の午前中に連れ出していっしょに買いに行ったんですよね。

 ──すごいお父さんですね。

ひっしー:
 当時は、「うちの親大丈夫か?」と思ったものですが、今になって思い返すと貴重な社会勉強だったなと。

ピロ彦:
 小さいころは特定のソフトをどっぷりハマるようなことはありませんでしたけど、『ドラクエ3』は父が遊んでいるのを後ろからよく見ていました

ひっしー:
 自も兄がプレイするのを見てました。それでストーリーは全部知っている状態でプレイすることになるんですが、それでもすごく楽しかったです。年に1本、2本しかゲームを買ってもらえなかったので、全裸縛りなどいろいろな方法で遊び尽くしました。

ドラクエ3 なんでも RTA インタビュー ホットプレート ゾーマ
(画像は「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」より)

──RTAを知ったり、実際にご自身で走るようになったのはどのようなきっかけが?

ばくぜろ:
 2007年くらいからニコニコ動画で動画を見るようになって、ゲームのやりこみ動画を投稿されていたboxさんという方が生放送で『ロマンシング サガ3』のRTAをやっていたんですよね。

 RTAを見たのはそれが初めてで、最初は何をやっているのかわかりませんでしたけど、何かすごいことをやっているなという印象でした。

 それから3年ぐらい経った後に自分でもRTAをやってみたくなって、ニコニコで自分のコミュニティを作ってRPG制作ゲームの『RPGツクール3』に収録されていたサンプル作品のRTAをやったんです。当時『サガ』シリーズのRTA大会があって、そこに参加するためにゲームボーイの『Sa・Ga2 秘宝伝説』のRTAを始めました。

ひっしー:
 RTAを知ったのは2009年ごろで、綿棒さんという人が『スーパーマリオワールド』のRTAをやっていたのを見たのが最初ですね。自分の知らないバグ技とかも駆使してすごい早さでクリアしているのを見て、この人はヤバいなと。それからほとんど毎日見るようになったんですけど、当時は仕事が忙しいのもあって見る専門でした。

 でも2017年の2月ごろにスーパーファミコンのゲーム大会を開くというので誘われて、種目のひとつに『ストリートファイター2』があったから出場したんです。タイムアタックとスコアアタックを組み合わせた、RTAっぽさもある種目で優勝したんですよね。

 そこで「RTAにも挑戦してみれば?」と言われて3月くらいにRTAを挑戦し始めて、コツコツやっていたらいつの間にか海外の記録を超えていました。なのでRTAを始めたのはかなり遅いほうですね。

ピロ彦:
 僕は最初TASから入っていて、SDA(スピードデモアーカイブ)というサイトの動画を見ていたのが最初ですね。

 小さいころからバグが好きで、とくに『ゼルダの伝説 夢をみる島』は“スクロールバグ”と呼ばれるようなもので遊んでいました。その『ゼルダの伝説 夢をみる島』のTASを見て更新できるんじゃないか、と思ったのをきっかけにTASを触り始めて、そこからRTAも走るようになっていった感じです。

 そうすると今度は「RTAでこのTAS技を再現するにはどうしたらいい?」みたいな相談を受けるようになって、人力ではむずかしいと思いつつもこうやったらできるかも、と答えたらそれを実現してくれる人がいたんですよ。その影響はけっこう大きくて、おかげでギリギリできるかわからないようなことにも挑もうと思えている部分はあります。

ドラクエ3 なんでも RTA インタビュー ホットプレート ゾーマ
(画像は「ゼルダの伝説 夢をみる島」より)

──お話を聞いていると、3人それぞれRTAへの入りかたが違いますが、みなさんの交流ってどんなきっかけで始まったんでしょう?

ひっしー:
 僕は元々ばくぜろさんのリスナーだったんですけど、去年の9月ごろにやわらかさんという方が、『ドラクエ3』なんでもありRTAのDiscordを作ってくれて、そこにみんなが入ってきて顔合わせたという感じでした。数人規模のコミュニティなのですが、情報交換をはじめ密度の濃いやりとりをさせてもらってます。

──情報交換はライバルを強くすることにもつながると思うのですが、そのあたりは気にされないのでしょうか。

ばくぜろ:
 情報交換をしても、ほかの人のチャートをそのまま再現するのは不可能なケースが多いんですよね。

ピロ彦:
 本当に、ひとりひとり本体によって事情が変わってきますし。

ひっしー:
 むしろお互いに情報を出さないと何もとっかかりがないので、逆につらいと思います。誰かのアイデアから閃きが生まれることも多いので、情報交換は大事ですね。

『ドラクエ3』のRTAなのにドラクエ以外のゲーム画面が見られる

──そんな3人が今回の「RTA in Japan Winter 2021」で出走する『ドラクエ3』RTA“Any%任意コード実行”って、ひと言で表すとどんなレギュレーションなんですか? 「なんでもあり」と何が違うのかいまいちわからなくて。

ばくぜろ:
 簡単に説明するのがむずかしいのですが、先ほども話に出た通り、ファミコンのCPUが読みとるコードをどこかに用意して、それを実行させるのが任意コード実行です。

 今回のRTAは何かしらの方法でコードを作成して、ほかのバグで生まれるバグアイテムを使うことでそのコードを実行してゲームをクリアする、というものですね。

ピロ彦:
 基本的になんでもありなんですけど、事前に作ったデータを利用するのだけはナシになっています。だからクリアデータを用意して読み込む、みたいなことだけが禁止で、リアルタイムにやるぶんには何をしてもいい感じですね。

ばくぜろ:
 『ドラクエ3』のエンディングフラグはカートリッジ上のデータにあるんですけど、「電源ON/OFFバグ」でいじれるのは本体側のメモリで、カートリッジ側のデータは自由には動かせないんです。それを無理矢理書き換えるために、いろいろな工程が必要になってくるんです。

ひっしー:
 セーブデータ、ぼうけんのしょを書き込むような場所にフラグを保存せざるを得なかった、という『ドラクエ3』の仕様上、ほかのゲームに比べて書き換えが難しくて。

ピロ彦:
 電源ON/OFFバグが使えないTASの場合、ルビーバグとして有名な棺桶バグを利用して任意コードを調整することも可能ですが、それだと時間がかかりすぎるので『ドラクエ3』の任意コード実行TASの制作は構想だけのものになってました。

 それで電源ON/OFFバグを利用すればRTAなら速くクリアできるのではと思った次第ですね。

──なるほど……とにかく「データを事前に仕込むのはなしだけど他はなんでもありで最速を目指す」ってことですよね。では最後に、今回のRTA in Japanでここに注目して見るとより楽しめるよ、的なポイントとがあれば教ていただけないでしょうか。

ばくぜろ:
 僕がやるのは最初期のチャートで、さっきも話に出た『ドラクエ3』以外のソフト3本を使ってクリアするチャートです。

 当日もカメラで映すと思いますが、いちばんタイムを分けるポイントになるのはカセットを交換するスピードですね。僕のチャートはソフトを計4本使うので、『ドラクエ3』のRTAなのにたくさんのゲームの画面が見られるのが見どころだと思います。

ドラクエ3 なんでも RTA インタビュー ホットプレート ゾーマ
(画像提供:ばくぜろさん)

ピロ彦:
 僕とひっしーさんは『ファミリーベーシック』を使ったコード入力を行うので、タイピング速度がタイムに関わってくるポイントではあります。

 『ドラクエ3』のRTAでタイピング速度っていうのも変な話ですけど……(笑)。これは本当に練習しないとですね。

 あと、ファミコンで出来るかわからなかった禁断の技に成功してしまったので、本番をお楽しみください。

──禁断の技……!! 楽しみなような怖いような……。

ひっしー:
 僕は、やることのベースはピロ彦さんと同じなんですけど、僕の場合は使用する機材が多いんです。“電撃ボタン”と呼んでいるコントローラーを使って、特定のタイミングでショートさせることで本来起こり得ない挙動をさせてイベントをスキップするので、そこがピロ彦さんとの違いであるので注目してもらえるとうれしいです

 僕はプログラム的な部分は一切わからないので、神であるピロ彦さんから伝えられた聖典を紐解いて、そこに人間の知恵を入れて戦っている感じですね(笑)。電撃ボタンって何だ、というところに注目してもらえればと。

ドラクエ3 なんでも RTA インタビュー ホットプレート ゾーマ
(画像提供:ひっしーさん)

──なるほど。三者三様の走りで画面はカオスになりそうですね。

ひっしー:
 今回は、4͛S͛T͛さんと姫榊みみさんに解説を担当していただくので、そちらも楽しみにしていただければと。

 ちなみに、『ドラクエ3』のなんでもありRTAに関しては4͛S͛T͛さんが完全に元凶なんですよ。4͛S͛T͛さんが視聴者から情報をもらったバグの検証動画を上げて、そこからみんなRTAいけるじゃん、ってなっていったんですね。その元凶たる4͛S͛T͛さんが実況ということで、そこもおもしろいんじゃないかなと思います。

(了)


 ゲームのRTAになぜホットプレートが使われているのか。取材を通してその原理や経緯についてはある程度理解できたつもりだ。

 しかし、それを知ってなおホットプレートの上で焼かれている(正確には焼かれていないが)ファミコン本体の景色は非常にシュールなものであることに変わりない。

 しかし、ホットプレートを使ったRTAはいまや過去のもの。

 温度管理という概念から解脱し、『ドラクエ3』以外のカセットを入れ替えたり、ファミリーベーシックでコードを入力したり、さらにカオスなテクニックを駆使し、最速でゴールを狙う。

 これにより、ラスボスのゾーマを倒さずにクリアするチャートが開拓された。つまり『ドラクエ3』なんでもありRTAの世界線ではもうゾーマは倒されないわけだ。さよならゾーマ、そして安らかに眠れ……。

―「やりこみゲーマー列伝」シリーズ―

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2022年1月「〇〇動画応援月間」のテーマ・ジャンルは「RTA(ゲーム)」

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