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『呪術廻戦』第0巻が”圧倒的傑作”な理由を現役漫画家が読み解く──乙骨憂太が背負った愛という名の呪いとは?

 『呪術廻戦』は『週刊少年ジャンプ』にて連載中の大ヒット漫画作品です。単行本のシリーズ累計発行部数は3600万部を越え、テレビアニメ化も果たすほどの絶大な人気を見せています。

 芥見下々氏によって描かれた本作について、ニコニコ生放送山田玲司のヤングサンデーにて、漫画家・山田玲司氏が、漫画家ならではの視点で解説を行いました。

番組出演者。左上段から山田玲司氏、奥野晴信氏。左下段から久世孝臣氏、シミズ氏。

 山田氏は大人気作品となっている『呪術廻戦』の第0巻に関して言及し、第0巻の主人公である乙骨憂太が背負った呪いについて考察。

 乙骨憂太の人物像や作品のテーマを第0巻のあらすじとともに、読み解いていきます。

※『呪術廻戦』のネタバレを含みます。また、本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。

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第0巻の主人公──乙骨憂太を取り巻く呪いについて

山田:
 『呪術廻戦』が2018年から始まっているんですが、2017年に『ジャンプGIGA』で、その前日たんのような連載があったんです。これが単行本1巻分の話があって、その主人公が乙骨憂太なんです。

 この0巻を読まなくても『呪術廻戦』を読むことはできるんですが、0巻を読んでから本編を読むと非常にいいんですね。泣けます。

 本編でも、乙骨ってすごいやつがいるらしいっていう話があって、そんな彼がじつは、0巻で主人公をやっている。『呪術廻戦』は乙骨君のストーリーから始まるというのがすごい大事だと思っています。

 僕が思うに、乙骨君は作者の芥見下々先生自身なんです。芥見さん本人が作品に登場し、彼の本音がいちばん出ていて、作中であまり大人の助言が入っていない。そして単行本1冊で終わっている。芥見さんの本質的な部分が全部出ている純度の高いものになっていると思います。最高でしたね!

画像は第186回『JUMP高専特級漫画家による傑作「呪術廻戦」〜完璧なジャンプメソッドの奥に潜む「東北魂」とは?』より)

山田:
 第0巻は冒頭から乙骨憂太君が、嫌なクラスメイトの3人の男にいじめられるところから始まります。そこで「やめてくれ」というモノローグが入ります。でも「やめてくれ」という言葉は、いじめっ子に対して言ってるということではないんです。

 そして、つぎに「里香ちゃん、出てきちゃだめだ」って言うんです。すると、乙骨君の後ろから巨大な化け物が現れて、そのいじめっ子を全員、狭いロッカーの中に閉じ込めて半殺しにしてしまう。

 じつは乙骨君は、亡くなったガールフレンドに呪われていて、彼がピンチになると死んだ彼女が現れるんです。しかも、その彼女はこれ以上ないくらい醜く描かれてて、すごい可憐な少女だったのに、死後はモンスターのような姿で描かれています。

画像は第186回『JUMP高専特級漫画家による傑作「呪術廻戦」〜完璧なジャンプメソッドの奥に潜む「東北魂」とは?』より)

山田:
 そうして乙骨君は呪われたまま、日々を過ごしていくんですが、呪いがあまりにも強すぎるせいで捕まっちゃうんです。さらに、死刑だと言われてしまう。「君みたいな危険なものを野放しにしておくとだめだから、君は死刑だよ」というふうに言われる。そう宣言したのは、五条先生なんですね。

 ここでキーポイントが、乙骨憂太君の言うセリフにあって、「君は呪われてるから死になさい」って言われたときに「いいです僕はみんなに迷惑かけたくないから、死んでもいいんです」と最初は受け入れるんです。

 でも、五条先生に「さみしくないか」と言われたら「さみしい」と答えるんです正直に。その後に「僕は誰かに必要とされたかった。僕みたいな人間でも、生きていていいんだって思いたい」というセリフがあるんです。

 俺は、この言葉は芥見先生の本音だと思います。要するに「死ぬのはわかってる、だけど正しく死にたいんだ」ということですね。この正しく死ぬとは何かと言えば「必要とされる人間でいたい」ということなんです。

 この直後に、呪術高等専門学校に入ってからの流れは『呪術廻戦』につながっていきます。しかし、ここでもうひとつ作品のポイントがあって、最強の呪いは愛だというふうに出てくるんです。

愛という呪いに気付いた乙骨憂太──本当に呪っていたのは誰か

山田:
 最終的に、第0巻のバトルで乙骨君は窮地に追い込まれます。しかし、その戦いの中で里香ちゃんを怨霊に変えてしまったのは、自分の愛のせいだったということに気が付くんです。

 乙骨君が加害者で、彼女を愛してしまったがゆえに、彼女は成仏できなくなったんだと。こんな深いテーマを入れてくるところがすごいですよね。

 この深いテーマがある中で、ふたりいっしょに敵と戦っていきます。そこでグロテスクな怨霊の里香ちゃんが敵を指して「憂太、あいつのこと嫌い?」って聞きます。

 それで乙骨君が「あいつのこと嫌い」と答えると、里香ちゃんは「じゃあ、あたしも嫌い」と言って戦ってくれるんですよ。もう最高すぎる、このくだりだけでもグッときます。

(画像は第186回『JUMP高専特級漫画家による傑作「呪術廻戦」〜完璧なジャンプメソッドの奥に潜む「東北魂」とは?』より)

山田:
 ここで僕が『呪術廻戦』の中でいちばん好きなシーンが出てきます。醜いモンスターになった彼女に向かって「巻き込んでごめんね。僕のせいでこんなことになって、ごめんね」と乙骨君が謝るんです。

 里香ちゃんが6年間も怨霊となっていたことに対して、乙骨君が謝るんですよね。しかも謝った後に、愛の告白をするんですよ。そして醜い姿になった彼女にキスをします。

 彼女の外面ではなく、彼女のモンスター化した内面を受け入れて口づけをするんですよ。そして、モンスターになった怨霊の彼女のリアクションがこうだったんです。こうなります!

(画像は第186回『JUMP高専特級漫画家による傑作「呪術廻戦」〜完璧なジャンプメソッドの奥に潜む「東北魂」とは?』より)

山田:
 里香ちゃんが「大大大大大大好きだよおおお!!」となるんです。名シーンですよ、こんな名シーン知らないよ。この絵は描いてて楽しかったですね。だから芥見先生も、このシーンは楽しんで描いてたと思いますよ。

 その後の敵は、彼女が戦ってくれるもんだから、やばいじゃないですか。それで憂太に向かって「この女たらし」と言うんですよ。その女たらしという言葉を受けた憂太は「失礼だな、純愛だよ」と答えるんです。こんなイケメン見たことねえよ!

 そして戦いが終わった後に、乙骨君は自分が里香ちゃんを呪ってたんだということを理解して「僕は彼女といっしょにあっちの世界に行くんだ」と言い始めます。つまり、自分が死ぬことによって、彼女が成仏するというようなことを言い出すんですね。

 そうしたら、里香ちゃんへの呪いが解けるんです。そこにモンスターはいなくて、死ぬ前の姿をした里香ちゃんが立っているんです。もう、ここだけで「見事!」と思いますね。

 それから彼女は憂太をハグして「怨霊になって、あなたといっしょに暮らしていた6年間は、それまでの人生よりもずっと幸せだった」と言うんです。それで「そんな早くきちゃだめだよ、私のところに」と笑って消えていくんです。

(画像は第186回『JUMP高専特級漫画家による傑作「呪術廻戦」〜完璧なジャンプメソッドの奥に潜む「東北魂」とは?』より)

山田:
 これは本当に見事な0巻です。この0巻の後、乙骨君がどうなっていくかというと、なんと主人公が入れ換わるんですよ。ここでまたジャンプマジックが起こるんです。このジャンプマジックが起きた、このふたりの話から限定放送は続きます!


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