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死刑制度はいったい何のためにある? 元裁判官らが討論「死刑制度は人間の尊厳を正面から問うもの」

確定死刑囚の処遇、日本とアメリカの違いとは

森炎:
 まず、死刑執行について公開しないのは問題ですよね。無制限に公開しろと言ってるわけではないんですが、その場に被害者遺族を呼ばないのは問題があります。

小林:
 制度の存否と運用上の問題は、分けて考えるべきだと思います。

横溝:
 その運用の問題についてあまりふれられてないので、簡単にここで議論しておきたいと思います。運用上どのような問題があるのか。存続、廃止両方の意見を出して頂こうと思います。そのあとに制度としての存否についてしっかり議論したいと思います。

 まず運用について。番組の冒頭でアメリカとの比較もさせて頂いたんですけど、安田さんの方から問題点をお願いします。

安田:
 裁判を終えて死刑が確定した後の話をさせて頂きます。まず、死刑に関する情報がほとんど公開されていません。例えば本人に対していつ執行されるのかということが分からない。ある日突然執行されるんです。それが一番大きな問題です。

 それから、死刑という危険にさらされているのに、相談する人がいない。つまり弁護人をつける制度がない。もう一つ、死刑から一段軽い罪にしてもらえる、許してもらえる、そういう制度がない。その三つが一番大きな問題ですね。

 そしてもう少し細かいことを言うと、確定してしまうと社会から完全に隔絶されてしまう。親族など当局が認めた人以外とコミュニケーションできない。それが運用の大きな問題ですね。

横溝:
 番組で用意した資料がありますので出します。

確定死刑囚の処遇
・面会は、許可された親族と友人(およそ1、2名)のみ
・手紙のやりとりも同じ
・独房内では、座ってないといけない
・運動は、週に2〜3回、30分間、独りで
・入浴は、週に2〜3回、15分間、独りで
・冷暖房の有無は拘置所による
・虫歯の治療は順番待ち

安田:
 面会に関しては、会うことだけでなくて手紙もごく限られた人に制限されます。法律が改正されて少しは広がったんですが、まだまだ制限されていまして、親族とは面会できるんですけど時間も短い。1日15分、最大でも30分くらい。手紙も当局が認めた人しかできない。

 房内では24時間監視カメラ付きの「自殺防止房」というところに収容されています。運動、入浴も夏と冬に分かれるのですが週に2・3回。冷暖房に関しては基本的に認めていない。具体的に言うと東北地方では暖房が入ってますが、そんな暖かいわけではない。

 医療に関しては非常に貧困ですね。自由にいつでも診てもらえるわけではない。順番が来ないと診てもらえない。しかも十分な医療ではない。わざわざ「虫歯の治療」と書いてあるのは、特に充実してないからなんですね。というのは、歯は命に関係ないから。命と関係あることについてはケアするけれど、それと関係ないものについてはケアしない。というのが実情ですね。

横溝:
 今コメントで「全部、抜いちゃえば?」というのがありましたけど。でも実情として、長い独房暮らしで皆さん歯を悪くする。歯が無くなってしまうという方があるそうですね。

 アメリカに関する情報を頂いているのですが、グレードがAとBによって死刑囚の房内での扱いが違います。たとえばグレードBでしたら弁護士との手紙の検閲はない。面会もアクリル板越しに1日1時間程度認められている。

 運動に関してもかなり自由で、2日に1回5時間くらいできる。あと死刑の執行に関してもガスか薬物か選べるということです。挙げるときりがないんですが、処遇においてずいぶん違いがあるようです。森さん何か補足ありますか。

森:
 さきほど言いましたが、オウムの死刑囚6人、そして光市の彼。死刑が確定する前は、全員に会いに行ったり手紙を交換したりしてました。でも確定後は一切それができなくなりました。ここに書かれている通り、親族と友人ごく数名に限られるわけですよね。

 法務省はこの処遇の理由を「心身の安定を図るため」と言ってるんです。逆だと思います。色んな人に会う。話を聞く。ごく稀ではありますが、被害者遺族が面会に来て話を聞く。そういう瞬間もあります。

 そういった機会をもつことで自分の罪に向き合う、自分のやったことを考える。そんな機会を持てるわけです。それが全部遮断されてしまう。許可された親族と友人のみとなってますが、死刑囚の中にはこういう人がいない人が沢山います。

 ということは、誰にも会えないんです。会話もできません。死刑囚は運動も独りでやることが義務付けられてます。1日誰とも喋らない。1週間、1ヶ月、1年。誰とも会話しない。これはおかしくなりますよ。

死刑確定者と会ってきたと語る森さん。

日本は明治2年から処刑方法が変わっていない

 処遇のことは大きな問題だと思いますけど、これも含めて一番大きな問題は、情報公開が全くないことです。たとえば今ここで、野球が面白いか、面白くないか議論しているとします。でも誰も野球を見てないんです。どんな選手がいるのかもよくわからない。一般的にはもっとそうです。野球というゲームがどんなものなのか、全くわからない。

 その上で「野球がおもしろいかどうか?」アンケートを取りましょうと言っても、これは無理ですよ。だから野球を生で見ることは無理にしても、どんなゲームなのか、どんな選手がいるのか、どんなルールなのか。その程度はみんなが知らなきゃいけない。税金を使ってやってるわけですから。ところが、ほとんど情報は開示されていない。言い換えればメディアが動かない。

 なぜメディアが動かないのかと言うと、それは人々が求めないからです。その結果日本の死刑制度はずっとブラックボックスの中です。アメリカと日本は先進国でも例外的な死刑存置国と言われます。でも大きな違いはアメリカは情報を公開します。処刑の瞬間に、被害者遺族、加害者家族、州によって違いますけどメディアを入れる所もあります。

 そして色んなものが変遷します。一番典型的なのは処刑方法です。どんどん変わっていく。日本は明治2年以降、ずっと絞首刑です。変わってないんです。これは考えたらとんでもない話です。なぜ変わらないのか。これは誰も何も考えないからですね。情報がないからです。だから、まず存続・廃止の議論をする前に、情報をもっと知りたいし公開されるべきだと思ってます。

田口:
 僕は森さんの意見にまったくもって同調です。2014年の2月に私を含めた裁判員経験者で「死刑執行の停止要請」を法務大臣に提出しました。その中に死刑執行に関する情報公開の請求があります。

 その理由は、私達国民が裁判員として死刑判断に関わる時代になってるのに、死刑の情報が何もない。裁判長ですら、ごくわずかな情報しか持っていない。そういう中で死刑という判断を下さなきゃいけない。こんな恐ろしいことはないです。実際に死刑判決に関わった方も同調して下さってます。ただ、その後、社会は何も動いていないんですけど。

横溝:
 死刑のタイミングなどもよくわからない、ということですね?

森:
 近年まで法務省は、処刑したかどうかすら発表してなかったんです。それが十数年前から、処刑した日時は発表するようになりました。名前の発表はもっと後ですね。鳩山邦夫さんが法務大臣だった頃かな。ほんとにごく最近までずっと全て隠されていたと思っていいです。

安田:
 毎年、死刑囚の方の数が発表されるんです。その数をカウントして「執行があった」というのに気が付くという状態でした。

森:
 死刑存置の方の主張の一つが、死刑による犯罪抑止効果であるならば、矛盾してますよね。抑止効果を謳うのであれば、死刑をいつやったのか、どのようにやったのかをプロパガンダしないと意味がない。ところが抑止効果を謳いながらも隠してやっている。

小林:
 存在することが抑止効果になってますよ。誰かを殺そうと思った場合、自分の死という代償を覚悟しなきゃならない。それはすごい抑止効果があると思います。

 死刑制度の運用実態の情報公開はされるべきです。でも、情報公開がされてもされなくても、死刑制度というものがある、実際に何人か死刑に処された人がいるという事実、それで十分だと思います。

「死刑」が存在するだけで抑止効果があると語る小林さん。

森:
 それは、場合によっては冤罪によって処刑するリスクもあると意識した上で、成り立つ議論ですよね?

小林:
 意識した上でと言いますけど、僕らはそんなこと知ってるんですよ。

森:
 そりゃあ小林さんはご存知かもしれませんが。

小林:
 いや、ふつうに子供の頃からやばいことをしたら死刑になるんだって知ってますよ。別に高次元の話をしなくても、死刑制度がある限り知ってますよ。

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