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森友学園騒動の「本当の問題」とはいったい何か――東浩紀・津田大介・茂木健一郎が籠池氏証人喚問の夜に語り合った

無責任社会が問題の本質

茂木:
 僕が一番気持ち悪いと思っているのが、忖度(そんたく)っていうことで日本の社会が動いているっていうこと。だから今回はおそらくあずまんが言うように、何の違法性もない形で決着する可能性があるじゃないですか。わかりやすく例えれば、政治家がお金もらって、攻め寄っていたり。

津田:
 誰かしらこの国有地払い下げ問題というのが明らかに問題があるというのは、これは与野党わかっている中で、誰か責任を取らない限りは大変なことになりますよ。

茂木:
 今日、自民党の議員が「あの価格は、決して安すぎることはない」ようなことを言っていましたよ。

津田:
 それでも自民党はのりきれる。押し切れると思っているっていうことですかね。

茂木:
 日本の統治機構って結局なんかその明確なルールとか理念がなくて、みんながいろいろ忖度して勝手に動いているっていう印象があるんですよ。その実態が今回明らかになっただけであって、特に森友学園が特別な事例というよりは、普段からそういうことをやっているわけでしょ。そこの気持ち悪さ。それを優秀な人たちが官僚で、その官僚の中で、組織の中であがっていく人たちは、そういうことを優秀にできることの方が僕は気持ち悪い。

津田:
 つまり、茂木さんの問題意識の中には無責任社会、無責任構造になっているっていうことに対して、それが表面化したことに対して「ああやっぱり日本ってこうだよね」っていうそういう感想?

茂木:
 そうですね。だから、安倍さんが嫌いなわけでも、安倍昭恵さんが嫌いなわけでもないし、どちらかというと日本のそういう統治機構を別に普通だと思っている人たちが気持ち悪い。

安倍昭恵さんは被害者? 加害者?

津田:
 質問を変えます。安倍昭恵さん、僕も何度か会って話もしたことがあるし、一緒にお仕事も一緒にしたことがあるけど、安倍昭恵さんがこの問題でこういうふうに動いたことがきっかけになっているということに対しての評価はいかがですか?

茂木:
 僕も安倍昭恵さんと何回も会っているし、津田さんと同じところで会ったこともあるけど、基本的にこういうふうに利用されちゃう可能性がある人ですよね。

津田:
 つまりは、被害者論ということですか。

茂木:
 加害者だとは思っていないですよ。安倍昭恵さんに明確な悪意があって動くような結果、こういうふうになったとは僕は思ってないですけど、結果として利用されたというか、良かれと思って動いてしまってその結果、さっきのように官僚機構が忖度して結果として森友に有利な政策決定が行われた可能性があるんじゃないですか。

津田:
 そこのところでひとつポイントになるのは、安倍昭恵さんは少なくともあの幼稚園に行って名誉校長を打診されて、籠池さんは「一秒考えて引き受けてくれた」と言っている。しかしながら安倍昭恵さんはそんなことないと否定しているから、真っ向から対決している。だからどっちかがウソをついているんですよね。

茂木:
 名誉校長とかそういうのを騒いでいるのは、あずまんも言うように、全く意味がないと思っていて。

津田:
 そうではなくて、問題は名誉校長を受けようが受けまいが、全くどうでもいいんですよ。だけど今日の国会審議で言えばFAXが出てきたということで、だけど「今これで認可をやっていただきたいと思っているんだけども、うちは金もなくてなかなか経営が厳しくてということで……」とそういう話をしたときに、「じゃあ私がちょっときいてあげますよ」っていう、そのこと自体が口ききなのかどうなのか、そのことが結果的に忖度しているかどうか。

茂木:
 そりゃ、忖度しているでしょ?

津田:
 でも、その引き金をひいた安倍昭恵さんにはなんらかの同義的責任、おそらく法的責任はとれないんだけども、そういうものがあるかどうか。

日本の社会は実質で物事を見ない

茂木:
 官僚が勝手に忖度して動くという日本社会がありますよね。僕は津田さんが嫌いな上杉隆のNO BORDERの編集長というメールが一個来て、俺が引き受けたとか言って、それで上杉の……。

津田:
 私も被害者だっていうことを言いたいんですか?

茂木:
 正確に言いたいんですよ。上杉隆のスタッフが批判的なコメントか何かを削除したのかな? そういうことがあって「俺がNO BORDERの編集長だから責任取れとかコメント出せ」とか言うメールがワッと来たことがあったんですよ。そのときに僕は思ったんだけど、実質で見ないのが日本の社会の特徴なんですよ。僕は報酬ももらっていないし、そもそもNO BORDERのスタッフにも会っていないし。だから上杉からメールが来て、NO BORDERの編集長というのをやってくれって言われて。

津田:
 実質的には編集長だったわけじゃないですか?

茂木:
 編集長やってない。何もやってない。

津田:
 やってないけれども、上杉さんと友達なのは事実ですよね? それで、そのメールが来たのは事実であると。だけれども編集長というのを許可した覚えはないけれども……。

茂木:
 許可はしました。そうじゃなくて、実質どういうことをその人がやっているかじゃなくて、表面上の肩書とかで判断して、いろいろなことが動いていくのが日本だと僕は認識しているのね。それがおかしい。だから、名誉校長ってほとんど意味が無いことでしょ?

津田:
 名誉編集長じゃなくて、編集長ですよね。編集長というのがどういう仕事をするのか流石に茂木さんも知っているでしょ?

茂木:
 いやだけど上杉も悪い。だから俺に実質的に編集するという役割がないのにも関わらず、デジタル的に言うと何ビット分かの情報でしかないわけよ。そういうことに意味があるという上杉も悪いけど、そういうのに意味が無いとわかってて攻撃してくる世間もおかしいと思うよ。

東:
 そんなの、OKしなきゃいいだけじゃん。

津田:
 僕もそう思いますよ。

茂木:
 俺、そうか?

津田:
 僕も言ったらそうですよ。新潟日報の特別編集委員ってやっていますけど、編集委員というのはコラムを書く人なんですよ。コラムを書く人としての意味しかないけど、一般の人はもちろんそんなことは知らない。かつ、特別編集員というのは外部コラムニストという意味でしかないけど、しかも新潟日報の坂本さんという人がしばき隊にいて。暴言をたくさん吐いていたことで結局それが明るみに出て、やめたときに僕のところにもすごいいろいろ来ましたよ。

茂木:
 言う方がおかしいでしょ?

津田:
 言う方がおかしいけれども、それは引き受けた僕のリスクとコストですよ。それだったら、茂木さんも引き受けた以上は編集長なんだもん。編集長が読んでくださいと言われたら、やっぱり……。

茂木:
 俺はそういう話がもしあったら「津田さんは新潟日報でなにやっているんですか? コラム書いているんですね」という限りにおいてしか判断しない。

津田:
 そうなんだけど、やっぱりNO BORDERに名前を貸しただけでというんだったら、編集長っていう肩書を引き受けるべきではなかったということではないですか?

茂木:
 まあいいや。それは俺も悪いことだと思ったから。

津田:
 変な流れになっちゃったけど。

安倍昭恵名誉校長自体は問題ではない

茂木:
 安倍昭恵名誉校長ということについては、僕もあずまんと同じ感じで重視してないです。

津田:
 別に名誉校長もいいんですよ。そんなの籠池さんは名前が欲しかっただけに決まっているんだから。だけれども、すごく明示的なやり取りがあろうがなかろうが、ああいう人は勝手にそういうふうに名誉校長と言うタイプでしょうと。だけど安倍昭恵さんに関して言えばウェブページあるでしょ? あそこの塚本幼稚園と新しく作る小学校の当時名誉校長と言って、すごくトップページの目立つところでドンと顔出しでやっているわけで、それがなんだかんだで確認はあったと思うんですよ。

茂木:
 例えば、安倍昭恵さんがある学校の校長をやっているからって、その学校への評価って変わらないけどね。

津田:
 そうではなくて、もしあれが安倍さんや安倍昭恵さんが勝手に名前を使われただけだと言うんだったら、ホームページとかで大々的に挨拶して写真もきれいに載せていたら。それは法的措置取るべきですよ。

茂木:
 そういうことがあったらね。

津田:
 おそらくは、何らかしらのカタチの合意はあるわけですよ。別にそれ自身が問題だと言っているわけではなくて、それを隠そうとしている。かつ、その中で安倍昭恵さんが、少なくとも払い下げてお願いするときに財務省に対して、安倍昭恵さんを通して連絡をしていて断りがあるということがある。そのプロセスがそこから先に進むかどうか、それを関与していると取るか、関与していないと取るのか? というのが、人によって変わっているということですよね。要は、してないと言う人は関与していない。叩きたいと言う人は関与しているって話で。

茂木:
 あずまんは、どう思う?

東:
 僕に何を聞いているんですか? 僕は、茂木さんがオッケーと言わない限りしゃべらないつもりなんですけど。いじめないでよ。

一同:
 (笑)

茂木:
 いじめてないよ。オッケーです。

東:
 僕に何を聞いているんですか?

茂木:
 いまの名誉校長の話。あそこを叩く人いるじゃん。いっぱい。

肩書を引き受けた時点で責任は発生する

東:
 肩書を引き受けたら責任はある程度は発生するでしょ? ただ問題は違法かどうかということでしょ? 僕はさっきからそれしか言ってない。

津田:
 だから、違法性というところで言えば安倍首相夫妻というのはおそらく関係ないんでしょうと。関係ないし道義的責任というのを問うのはどうかと言うのはあるんだけれども、結局のところメディアにしても野党にしても安倍夫妻の違法性を掴めると思ってどんどん掘っていったんだけれども、違法性というところでどうにもクビを取れる程にはなってないということですよね。

茂木:
 質問なんですけど、なんで世間はこんなに盛り上がっているの?

津田:
 世間は盛り上がってないですよ。メディアが盛り上げてるだけですよ。

茂木:
 世間は盛り上がってないの?

津田:
 どう思いますか?

茂木:
 タクシーの運転手さんとか、みんなその話するよ?

東:
 だから、みんな馬鹿だからでしょ?

一同:
 (笑)

茂木:
 メディアに踊らされているってこと?

津田:
 テレビでこれだけやっているからじゃないですか?

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