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杉田水脈議員の『LGBT差別発言』は“人権の理解”が足りてない証拠?「基本的人権は何らかの対価で得られるものではない」

💡ここがポイント

●杉田水脈議員が『新潮45』8月号に掲載した記事について議論。
●記事の内容は「『LGBT』支援の度が過ぎる」と、非常に差別的なものだった。
●これを受けて、小飼弾氏は「基本的人権を理解していない発言」とコメントした。

 自民党の杉田水脈議員が、『新潮45』8月号に掲載した「『LGBT』支援の度が過ぎる」という記事で多くの反感を招き、話題となりました。

 これを受けて、8月5日の『小飼弾のニコ論壇時評』で、書評家の小飼弾氏とフリー編集者の山路達也氏が、国民の代表である国会議員のリテラシーの低下と、そもそも人権とは何なのか? その本質に迫りました。

左から小飼弾氏山路達也氏

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そもそも“人権”とは何か

山路:
 自民党の杉田水脈議員が、『新潮45』に発表したところで、LGBTに対して非常に差別的なことを言っているというので、大変に話題になっているということなんですね。

小飼:
 この人、頭を差別されすぎたのかな(笑)。

山路:
 「LGBTが生きやすくすることに、わざわざ支援しなくてもいいんじゃないか」というような趣旨のことも言っていたりもするわけですね。

小飼:
 でもこの人は、何だったっけ? 秘書の人に「このハゲー!」って言っていた人?

山路:
 豊田真由子さん?

小飼:
 そう。豊田さんの精神的双子の姉妹みたいなものなので、こういうキチガイもおるわな、みたいな。

 そして、実はこれよりももっと恐ろしいことを言ってる人がいるんですよ。

山路:
 誰です?

小飼:
 「フルスペックの人権は、この人たちに与えるのはダメなので」と言った人が、世耕弘成議員です。この人よりもずっと立場が上の人ですよ。“フルスペック”という言葉が出ること自体、ずっと恐ろしいですよ。

山路:
 よく問題発言をする議員さんの言う人権は、「何かをすると得られる権利」みたいに思っている節があるというか。

小飼:
 そういったものは“特権”というんです。

山路:
 いわゆる基本的人権というものは、何らかの対価で得られるものではないわけですよね?

小飼:
 ないんです。

山路:
 言ってみたら、それこそフランス革命くらいになるんですか。そういう基本的人権というものがあると考えて、「みんなで社会を作っていきましょう」みたいな前提の上で、人権という概念を作って、それによって社会を作っていこうとしたわけですよね。

小飼:
 なんですけれども、もっと涼しい顔をして「フルスペックの人権が……」みたいなことを言う人たちがいるんですよ。

山路:
 フルスペックじゃない人権があるのか、みたいな。

小飼:
 これは別に自民党だけではないです。維新のみなさんなんか、もっとひどいですよね。

山路:
 維新の議員さんたちは、人権のことについて、一番きちんと意識を持ってなきゃいけない人が、こう言ってることの怖さというのはありますよね。

小飼:
 そうなんですよ。

山路:
 憲法に書いてあるわけですよね。

基本的人権 ≠ 特権

小飼:
 日本で育てられると、そういう基本的人権が、実は特権に思えてしまうというような育てられ方はしてると思いますよ。

山路:
 議員さんとかで、納税とかを果たして初めて人権が得られるみたいなことを言ってる人がいましたよね。

小飼:
 何かとセットになっているものというのは、特権なんですよ。だから特権と人権というのは違って、もちろんこの水脈さんにも人権はあります。だから当然、彼女の人権を奪うようなことというのをやるのは、やり過ぎで人権侵害なんですけれども、この人の発言は、議員という特権を持つには値しないでしょう。

山路:
 つまり、それは議員を辞めるべきだという(笑)。

小飼:
 フルスペックの人権に戻って下さい。

山路:
 日本だとそういうふうに特権と思いがちと言っていたじゃないですか? それはなぜなんですか?

小飼:
 小中学校とか見ていれば、当然、そう思い込むでしょう。だって未だに、「前にならえ」とか組体操とかやっているわけでしょう。

山路:
 軍隊式というか、上からの強制によって動くのが当たり前だと思ってしまう。

小飼:
 そういう育て方をしてるんですよ。だから、誰も教えてくれない。親も基本的人権を特権と誤解したまま、子供を持ち、その子供を基本的人権というのを理解していない、誤解している学校に入れているわけですよ(笑)。

山路:
 「血を流して勝ち取ったものではないからね」ってコメントが。

小飼:
 いや、それはちょっとどうなのかな? 血を流して勝ち取ったものというのは、まさに特権なわけじゃないですか? 実は、人権は基本的なものなのか、特権なのかというのは、民主主義国の中でも決着はついてない問題でもあるんですよね。

 ちょっと極端な例ですけれども、『スターシップ・トゥルーパーズ』という映画の世界では、兵役についたことのない人というのは、投票できないんですよね。

『スターシップ・トゥルーパーズ』
(画像はAmazon | スターシップ・トゥルーパーズ [DVD]より)

山路:
 制度的に古代ローマ帝国の市民権みたいなノリにちょっと似ていましたよね。兵役について初めて一人前と認められるみたいな。

小飼:
 そうそう、実は基本的人権の中に、「政治参加は含まれてるのか?」というのは、まだ結論がついてないんですよ。でも、今のところ、ほとんどの国では、それは基本的人権パッケージの中に入れてるんです。ただし、それは基本的に「国民に限る」なんですよね。基本的人権というのは“基本的”というだけあって、別に日本人だろうが外国人だろうがある、という立場を日本もとっています。

山路:
 杉田水脈議員のこの発言で業が深いなと思ったのは、この人女性なわけじゃないですか? 日本で女性の参政権が実際に認められたのって、1945年くらいだから、言ってみたらこの人が議員になれているのは、そういう歴史の上にあるわけじゃないですか?

小飼:
 その通りです。

山路:
 そういうことを全然理解してないんじゃないのかな、という残念さもありましたけどね。

小飼:
 理解してないというよりも、今日本の女性議員のみなさんというのは、名誉男性ばかりですよね?

山路:
 なんか男性ホルモンは多そうだというか(笑)。

小飼:
 オヤジの本音を代弁してる人ばっかりじゃないですか(笑)。

山路:
 そういう人でないと、政治の世界で上ってこれないっていうことにもなってるんだろうなというのは、ちょっと想像させるものがありますね。いやこれ、LGBT発言なんかというのは、結構世界のニュースなんかでも報道されてたりするですけども、日本はかなり差別的で、前近代的な国だと思われ始めているんじゃないかなという気がしてならないですけどね。

小飼:
 いや、そう思われてるじゃなくて、もはやそうですよね? だっていまだに組体操をやらせてるくらいだし。

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