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「平和主義のメッキが剥がれてきている」戦後日本が抱え続けた“平和主義と日米安保の矛盾”の歴史を解説【話者:白井聡】

米国の「自発的隷属」である日本

白井:
 55年体制を作った立役者のような人たち、それこそ岸信介の世代ですが、あの人たちはある意味、アメリカに取り入ることによって、首の皮一枚繋がって、それで戦後復権できた。だから彼らは、自分の命と引き換えに戦後日本をアメリカの忠良なる属国にしていったんだと。そういう意味だと「売国奴じゃないか」という見方もできるわけだけれども。

 しかし、複雑な面もあります。焼け野原からどうやって復興したらいいんだというときに、現実的にはアメリカの力を借りることは最も現実的な選択だった。だから、最大限好意的に見れば、対米従属を通じた対米事実という、難しいゲームを彼らは演じたとも言える。

 少なくとも言えることは、戦後当初の対米従属には目的があったんですよね。復興であり、いつか自立したいと。そのためにはとりあえず今、従属するしかないと。それとの対比で、「今の対米従属って、それによって何を目指しているですか?」 ということが問題です。対米従属の戦後レジーム【※】によってできあがった権力構造、ある種の利権の構造、これを要するに守るためだけに従属してるんですよね。だから、完全に自己目的化していますね。

※戦後レジーム
第二次世界大戦後に確立された世界秩序の体制、制度。

 それを続けるためにいわば「自発的隷属」っていうことをやっている。それを長年続けてきて、すっかり心が壊れちゃった人たちっていうのが今、大量に出てきてるというのが、僕の見方ですね。

日本に米軍が多いのは第二次世界大戦で負けた懲罰である

 ポスト対米従属路線の具体的な方法としては、とにかく敵を減らすしかないですよね。政策的な結論として、どういう結論になるのかっていうことは僕はあまり重要じゃないって思ってるんですよね。なぜなら、選択肢の数は多くないし、答えはわかりきっているからです。それ以上に、もっと重要なことがある。それはマインドセット【※】の問題なんですよね。

※マインドセット
組織、個人の両側における考え方の基本的な枠組みのこと。

 要するにあらゆる可能性を検討・検証して、そしてその結果として、日米同盟みたいなものが最も合理的であるという結論になるんだったら、これはおかしなことではないですよ。ところが現実はそうじゃないわけなんですよね。

 まずは日米安保体制っていうのは疑ってはならない前提であり、だからそれは戦後の国体なのです。初めに国体ありきであって、それを守るためにこれが合理的であるっていう理屈を後付けしていくっていうのが、現在のマインドセットです。

 米軍を全部追い出すのは簡単なことではありません。なぜなら、端的に言って、米軍がこんなに日本にたくさんいるのは、第二次世界大戦で負けたことに対する懲罰だからです。ドイツを見てごらんなさい、イタリアを見てごらんなさいっていうことですね。だから、そう簡単に追い出せるものではない。追い出せないからにはどうやって付き合うのかということにもなるんでしょうけども。

 そうすると米軍の駐留がなんらかの形で続くのかもしれない。だけど、大事なのはその結論に至るプロセスなんですよね。そして、そのプロセスを生むマインドセットであるところを入れ替えないと、僕はどうしようもないと思いますね。

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