“肉の防波堤”とは? 米兵から日本の女性を守る国策──学校では教わらない敗戦&売春の真実に迫る【性風俗シリーズ第2弾】
6月20日、潜入ライターとして活躍するニポポ氏(@tongarikids)による「ニポポのニコ論壇時評」が放送されました。
前回の「遊郭の歴史」のエピソードに引き続き、今回は、戦後の日本で蔓延していたレイプ被害を食い止めるための国策「肉の防波堤」について議論。
廃墟愛好家であり、『ダークツーリズム・ジャパン』などの編集長を務める中田薫氏と、当時のレイプ問題について徹底解剖した内容をお届けします。
※写真提供・中田薫
―性風俗シリーズ―
【第1弾】
「性風俗」を語りませんか? 遊郭、ちょんの間etc..「花街の歴史」を貴重な写真とともに振り返る【性風俗シリーズ第1弾】
【第3弾】
トルコ風呂、おスペ、バイオレンスetc…現代性風俗の前身となった“性的サービス”発展の歴史【性風俗シリーズ第3弾】
売春施設「RAA」の設立
ニポポ:
僕が気になったものがあって、「国際売春施設」についてですね。いわゆる「RAA」というのが、僕は初耳だったんですけれど。
中田:
日本の買売春のターニングポイントは、やっぱり敗戦。戦争に負けるということなんですよ。戦争に負けると何が起きますか?
ニポポ:
経済の崩壊が起きるとかですか?
中田:
いや、凌辱が起きるんですよ。
ニポポ:
おお、そっちですね。
中田:
戦争に負けた国では、凌辱が起き始めます。日本の場合、沖縄戦です。沖縄に米軍の上陸を許すわけですけれども、上陸を許してからきっちり10か月後、混血児が産まれ始めます。
ニポポ:
悪いことをしちゃう人がどんどん出てくるわけですね。
中田:
だから、戦勝国がヒャッハー状態で乗り込んでくるわけですよね。
ニポポ:
そうですね。
中田:
だから、兵士のいる最前線というのは、法や権力の空白地帯となってしまう。そこで違法な殺人や、凌辱が起きたとしても、もう手の付けようがない。沖縄だけで1万人が凌辱されているという数値があるぐらい。
ニポポ:
すごいですね。
中田:
上陸すぐでですよ。
ニポポ:
それが楽しみでやってきた人もいたのかもしれませんしね。
中田:
日本より一足先に負けたドイツやイタリアでは、相当ひどいことになっています。戦勝国が乗り込んできて、国の婦女子が凌辱されるという。かつて、日本も中国大陸で同じようなことをしていたわけです。
ニポポ:
やっぱりあったんですね。
中田:
いわゆる戦場というのは、「強姦して殺す」というような、そういう狂気を生み出すわけですよね。
ポツダム宣言を受諾し、日本は無条件で降伏することとなる。そして、「統制管理のためにアメリカ軍が日本にやってくる」というので、日本政府としては、大変なことになると。日本の婦女子が、貞操が危ない。そのために、国策として売春施設「RAA」を作ると。米兵の相手をするための施設が必要だと。
ニポポ:
そうか、これは国民の娯楽施設という扱いではなく。
中田:
RAAというのは、「リクリエーション アンド アミューズメント アソシエイション」の略で、米兵のための施設なんです。
ニポポ:
なるほど。なぜ英字のイニシャルで書かれているものなのかなと思ったら、そういうことだったんですね。
中田:
終戦記念日の8月15日の3日後に、全国の都道府県に「日本の婦女子の貞操を守るために慰安施設を作るぞ」と内閣が通達を出しているんですね。
ニポポ:
じゃあ、次に起こることを予測して対策までしていたんですね。
中田:
ええ、それで敗戦から2週間後には、もうRAAの募集広告が出るんですね。その画像がこちらです。
これが、RAAの安浦ハウスですね。
ニポポ:
ちょっと待ってください。めちゃめちゃ並んでるじゃないですか?
中田:
これ、横須賀の安浦ですね。たくさんの米兵が並んでいます。
ニポポ:
女性はこの米兵を何人ぐらいをお相手していたんでしょうか?
中田:
女性ひとりあたり、8時間で23人の米兵の相手したと。
ニポポ:
すごい。これは大変なスケールですね。
中田:
8月24日に、米軍の第一陣が厚木に進駐してきます。それから、神奈川県下で一週間で1300人がレイプされているんですよ。アメリカ軍が上陸して、わずか10日で。
ニポポ:
すごい。
中田:
神奈川県下だけで、1か月で3500人。それだけ、性の無法状態が起きてしまった。
ニポポ:
1日100人ペースですからね。
中田:
ですから、彼らの性欲を満たさないと、えらいことになってしまう。ですから、この慰安施設というのは、日本政府にとっては天皇制が存続するかどうかよりも、急務の課題だったんです。
ニポポ:
ちなみにRAAの女性職員は、お給料はおいくらくらいいただいていたんですか?
中田:
当時の警察署長で150円。彼女たちは、350円だった。
ニポポ:
なるほど。
中田:
まあ、50円が今の70万とかだとしたら、350円というのは、160万相当。
ニポポ:
所長の2.5倍ぐらい出ていたわけですね。
中田:
だけど、最大の女性の供給地が、吉原とか、玉の井とか、遊郭街だったんですけれども、そこから、女性が供出できなかったんで、一般に公募するんですよ。ですから、戦争未亡人とか、貧農の娘さんだったりとか。ただ、記録を見るに、その半数以上が処女だったと。
ニポポ:
なるほど。いきなり初めてで、そのあと23人が来るわけですよ。これ、えらいことになりませんか?
中田:
えらいことですよ。だから、いわゆる日本政府としては、肉の防波堤が必要だと。
ニポポ:
肉の防波堤。すごい言葉が出ました。