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『AKIRA』『Dr.スランプ』が起こした革命とは? 「パーツの描かれ方」で振り返る“ジャパニメーション”の歴史【語り手:マンガ家・山田玲司氏】

 『AKIRA』と『Dr.スランプ』が起こした“革命”によって、それ以前の絵は古いものになった? 『ラブライブ!』はあらゆる系譜の集約……?

 『Bバージン』、「絶望に効くクスリ」シリーズの作家として知られる、マンガ家・山田玲司氏@yamadareiji)によるニコニコ生放送「山田玲司のニコ論壇時評」が放送されました。

 先日掲載した記事では、手塚治虫や宮崎駿作品が中心に語られ、今回はそこから『ドラゴンボール』、『ワンピース』、『SLAM DUNK』にも触れていきます。
 「もちろん例外もたくさんある」と、早足での振り返りにエクスキューズを入れつつも、山田氏の直筆イラストでの解説は非常に興味深いものになりました。“ジャパニメーション”の歴史を一気に振り返る企画の完結編です!

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90〜ゼロ年代は、アツい話も“クール”に描く?

山田:
 いよいよ出てきました。

90年代からゼロ年代へ

乙君:
 うまっ!

山田:
 いよいよ90年代からゼロ年代になってて。

乙君:
 あれ? ゴムゴムの人いる(笑)。

山田:
 ざっくり割れるんですけど。要するに90年代だから、TKファミリー【※】がいるわけじゃないですか。

※TKファミリー
小室(Tetsuya Komuro)ファミリーを意味する造語。

乙君:
 うんうんうん。

山田:
 で、「どこまでも限りなく~♪」なわけじゃないですか(笑)。

一同:
 (笑)。

山田:
 そんな人たちはモリモリ、盛っていく方向で、キラッキラになっていくわけですよ。『少女革命ウテナ』なんか典型的にそうで、『ウテナ』から劇場版の『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』に至って、バロックの系譜で言うと、多分ピークになるんじゃない?

乙君:
 ああ。

山田:
 一方で、「週刊少年ジャンプ」で起こっていた“ひそかなクール化”というのがあって。

乙君:
 クール化?

山田:
 そう。男たちのバトルとか、熱い友情とかをやっているのに、俺は目がどうも「虚無」に感じてしまうわけだよ。「ドラゴンボール」とかもそうで、なんで瞳に光が入らねえんだ?っていう。【※】

※放送の前半では、虚無を“テン目”で表現する系譜があったと山田氏は言及。瞳をあえて描きこまないことで、ある種の情念の発生を避ける、というものだった。詳しい解説はこちらの記事を参考にどうぞ。

乙君:
 ああー。

山田:
 鳥山さんは、ここでもうすでに、絵に関して何かを投げてるんだよ。
 「アラレちゃん」の時は、キラキラしてるんだよ、まだ。だけどもう、ものすごい描ける人だからこそ、描かなくなっていくっていう。

乙君:
 なるほどね、達人がよくやるやつだ。抜き始めたんだ。

山田:
 そうそう。この人の抜き方って半端なくって、空もトーン貼らなくなっちゃうし。どんどん、白くなっていくっていう。髪の毛も白くなるじゃん、サイヤ人になると。【※】

※漫画ではサイヤ人の髪の毛は白く描かれている。

乙君:
 うん。

山田:
 だからそういう系譜があって、目に情念を入れないというのを、まんまゼロ年代で『ワンピース』が受け継いでるわけ。
 だから熱い話なんだけど、目は虚無っていう。この不思議なバランスみたいなものが、ゼロ年代に現れ始める。

乙君:
 だからそこまで押し付けがましくはない、と。

山田:
 その通りなの。押し付けがましくないような変化が起こってる。
 『ウテナ』は完全に押し付けてるの。

乙君:
 (笑)。「世界は革命するんだ!」って言って。

山田:
 そう! その間に多分こいつがいたんだと思うんだよ。

その影には、まる子がいたのではないかと言及する山田氏

乙君:
 えー?

山田:
 「やれやれ」って世の中見てるんだよ。この人。押し付けがましくないんだよ。

乙君:
 はいはい。

山田:
 『サザエさん』なんかも最初のころは「テン目」なんで、押し付けがましくないんだよね。ミッキーもそうだったんだけど。
 要はだから目がごちゃごちゃして、情念的になってくると見てる方が疲れるんだよ。

山田:
 だから疲れないように、顔の描かれ方がこのようにスライドしていったんではないかという説! これは説だから、ホントじゃない。もうわかんない。

乙君:
 ところで玲司さん、『ウテナ』だけなんか気合い入ってません?

山田:
 見てましたからね

一同:
 (爆笑)。

井上雄彦が「汗」に起こした革命

乙君:
 続いてこちら、バーン! でた!……あれ?

流川……じゃない?

山田:
 みんな大好き、IT革命の話ですね。井上雄彦(IT)革命の話ですけど。

乙君:
 藤真?

山田:
 藤真ではないです。髪の毛をベタにすれば、流川になります、これ。はい。トーン貼ると藤真になります。はい。それはいいんです。それはタケに言って下さい

乙君:
 わざわざ藤真を選ぶって、「なんて通な」と思った(笑)。

山田:
 違います違います(笑)。
 実は井上雄彦が描いた『SLAM DUNK』でのいくつかの手法が、後にものすごく影響を与えているという話ですね。

乙君:
 そうなんですか!?

山田:
 特に、ご存知のように、この点汗の描き方。それまでは、たらーりっていう汗だったんだけど。

乙君:
 え? 初めてやったの?

山田:
 初めて。タケが、初めて。

乙君:
 マジっすか?

乙君:
 「刃牙」の表紙でもあったんですよ。メチャメチャ点汗でっていう、気持ち悪っ! ってやつ。

『グラップラー刃牙』25巻の書影より、「刃牙」シリーズの点汗の一例
(画像はAmazonより)

山田:
 あの2人は、実は繋がりがあって、以前対談で、刃牙先生からものすごく褒められたって井上言ってたから。

乙君:
 へえ。

山田:
 うん。だから刃牙先生は井上の漫画大好き。で、あともう1つ、この眉毛が斜線で描いているのと、タッチが入るというね、このね。
 あと問題1番の問題点は、ここですね。目の“ふち”のところに縁取りが入るというね。これは91年の『SLAM DUNK』以前にもなくはないんだけれども、こんなになかった。

 これはさりげなく入れているんだけれども、もっとぐいっと入れると永井豪になっちゃうんですよ。『デビルマン』の明君なっちゃうんです、ぐいっと入れ過ぎちゃうと。

乙君:
 なるほど。

山田:
 さりげなくここまでで抑えていたというのと、目の下の部分に影を入れるのも井上が初めて。ガーっとシルエットが入ると、ふつう目は白く抜くんだよ。それを抜かずに、全部暗くするという。
 『バガボンド』あたりですごく何度もやっているやつだけれども、目の斜線で、目を光らせないで、全部マットに影にしてしまうというのも井上の革命で、これらがアニメの世界でも続いていく系譜になります。

 あとは、ほっぺたの線も影の段階では縦に入っていない。横に入る。俺もそうだったけれども、90年代の最初はみんなこういう感じだったんだ。

「ちば・セザンヌ・てつや」の登場

乙君:
 続いて。

山田:
 お願いします。

セザンヌとは

乙君:
 こ、これは……。

山田:
 「ちば・セザンヌ・てつや」先生の話ですね。

乙君:
 え、ちょっと初耳なんですけれども、その方は(笑)。

山田:
 セザンヌ、ミドルネームはセザンヌです。

乙君:
 「ちば・セザンヌ・てつや」というんですか?

山田:
 そうです。ミドルネームがセザンヌ。セザンヌですね。

乙君:
 新説来ましたね(笑)。

山田:
 なぜかと言うと、“正面から見た口”が横から描かれているからです。本来は口、こういうふうになりませんね、横から見た場合。

乙君:
 なるほど。

山田:
 つまりレイヤーとして口が貼り付けられているわけです。「これ、OKじゃね?」とやっちゃったのが、ちば先生あたりから始まります。ちば先生だけではないかもしれませんが、これもひとつ。
 あと、鼻の描き方ですけれども、完全に上を向いて、こういう形なんですよ。

乙君:
 穴どこにあんのやろ?

山田:
 そう! 穴どこにあんのやろ、なんです
 みんなそう思うんだけれども、穴は描かれません。

乙君:
 描かれない。

山田:
 正面向いても鼻筋がある。鼻は常に横の形になっていて。それはだからセザンヌだからです。もう3D諦めているんですよ。むしろ、3Dのことを頭に入れていないからできる

 この髪型ですね、いわゆる丈の髪型。いつ見ても横分け。どの角度でも横分けで、それを『行け! 稲中卓球部』でからかっていますけれどもね。
 後々のギャグになるんだけれども、あれは『鉄腕アトム』の角みたいな髪の毛が重ならないのと同じで、それが2Dのルールなの。

前回の記事より、山田氏によるアトムのイラスト

乙君:
 「アトム」そうなんだね。

山田:
 完全に2Dルールに振り切っているとこうなるわけですよ。これ良かったよねという残像を、みんなどこかで持ってるわけ。なんでかと言うと、これまともに横に描いたときに表現の幅が狭くなるから。あとは独特の魅力みたいなのがあって。
 これがゼロ年代復活していくわけですよ。

乙君:
 へぇー!

山田:
 萌えアニメとかの系譜で時々、いまだにこれを見るけど、あれはあえてなんだよ。知っている人たちがあえてこれをやるという。

乙君:
 もうひとつのテクニックになっちゃていると。

山田:
 そう、多視点というテクニック。こんなのハリウッドじゃ絶対ないわけ。ディズニーのアニメーションって、結構早くから動き取り込んで、やったりとかする。

 形は3Dで考えますというふうにやっているわけ。“鼻問題”をこのあとやるけれども、それに関してもラプンツェルとか、どの角度から見てもOKなモデルが作ってあるから、そのまんまフィギュアにできる。

ラプンツェル
(画像はディズニー公式サイトより)

 だけど、日本の漫画はフュギュアにできないんですよ。フィギュアにするときにすげえ苦労するのが日本の漫画という。それは要するに3Dと。
 丈のフィギュアもあるんだよ。だけど、角度によってはこんな丈見たことないという丈が。

一同:
 (笑)。

山田:
 これが面白い。これは浮世絵の系譜なんだよ。浮世絵はフィギュアになんないんだよ。そこが面白くて、絵の魅力というものに特化する方向で進んでいったのが“ジャパニメーション”でもあるという。
 だから、変わっているだよ。やっぱり。極東で生まれた変わった文化であるという。

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