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「そもそもExcelは文字入力には向いていない」現在も利用され続ける“ネ申Excel”の利便性と問題点を大学教授&プログラマーと解説

 ビジネスシーンで活躍する表計算ソフト『Microsoft Excel』に、“ネ申Excel”と呼ばれるものがあります。

 セル結合機能を有した表計算ソフトで、縦横の幅を同程度の狭幅に設定したセルを、方眼紙に見立てた様式のもので、現在でも多くの企業で使用されています。

 これを受けて『小飼弾の論弾』では、ゲストに立命館大学教授の上原哲太郎氏を迎え、“ネ申Excel”の現在と問題点について、小飼弾氏山路達也氏が解説します。

Microsoft Excel。画像は公式サイトより

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罫線びっしりな“ネ申Excel”

左から上原哲太郎氏、、小飼弾氏、山路達也氏

山路:
 ネ申Excelの話題に入る前に、そもそもみんなスプレッドシートや表計算、Excelなど使っているのだろうかということで、アンケートを取ってみました。

山路:
 おお、やっぱりExcel多いですね。6割の方がExcel。Excel以外のスプレッドシートも、やっぱりGoogleスプレッドシートだったりするのかな。

小飼:
 LibreOffice派もいたみたいですよ。awk派もいたみたいですけど。

山路:
 awk派の方は、CSVファイルなどをawkで処理している、という方なのですかね?

小飼:
 CSVは、実はawkを処理しやすいフォーマットではないです。TSVは処理しやすいんですけどね。

山路:
 普通のビジネスマンでもExcel使わない人もいるんじゃないかなという気がしますけれども。そもそも“ネ申Excel”という言葉をみなさんご存知ですか?アンケートを取ってみましょう。

上原:
 この“ネ申”を「ネ、申す」と呼ぶのか「神(かみ)」と呼ぶのか、と、いろいろ聞かれるのですが、一応ネタとしては、ペーパーの紙と掛けているので、“神”と呼ぶ方がいいのかな?

山路:
 もともとネ申Excelっていう言葉ができたのは、2013年でしたかね。

小飼:
 意外と最近。

山路:
 「Excelが変な使い方をされている」というような論文が出て、それから“ネ申Excel”という言葉が使われるようになったと思うのですが、そもそも“ネ申Excel”とは一体どういうものなのかを、説明していこうと思います。

上原:
 要するに“Excel方眼紙”という言い方をされる方もいらっしゃいますが、Excelを紙のように使って、罫線の豊富なワープロとして使っておられる。その結果、“帳票”を、紙からPCにそのまま置き換えたようなExcelというのを、“ネ申Excel”と呼んでいるんですけど。

小飼:
 これは方眼紙というよりもExcel原稿用紙。

上原:
 そうですね(笑)。まあいろいろな言い方があると思うのですが、これに入力しようとすると、大変苦労をさせられるわけです。

山路:
 これって、1マスに1文字入れる感じですか?

上原:
 そうです。カタカナで書いてある口座名義のところは、1マス1文字に書くわけです。そのくせ電話番号や所属、氏名など書かれている部分は、入力しようと思うと、まず上下のセルの結合から始めないと、まともに入力ができないという、なかなか素晴らしい作りになっているんですけれども。

山路:
 堅い論文のタイトルに、スラングの“ネ申”という字が入っているのが、なかなかインパクトがありましたね。

上原:
 はい。2013年のことなんですが、情報処理学会の中に、教育関係の情報教育研究会というのがございまして、そちらでやっているシンポジウムの中で、その情報教育がこんなところに行っちゃって大丈夫なの? みたいな文脈でちょっと語られたのが、きっかけだと思います。

“ネ神Excel”は役所の長きパートナー

山路:
 このネ申Excelというのは、かなり使われているんでしょうか? あと、どんなところで使われているのかな、という。

上原:
 私は、霞が関で働いていた経験があるんですが、役所にいると、ものすごくよく見ますね。特に役所で飛び交っている、いわゆる『帳票』というのがあるんですけれども、これがだいたいExcelで作られていて、それが細かい罫線の山になっている、ということが多いですね。

山路:
 ひとつひとつのセルが方眼みたいになっていたりするのは、入力に手間がかかるじゃないですか?

上原:
 はい。

山路:
 入力したデータを再利用するのも、手間がかかるじゃないですか、どうやって役所ではそれを利用してるのかなと。

上原:
 ほぼ紙のように使っているので、印刷したものがデータのまま流通することがそもそも少なくて、印刷、押印され、郵送されたものを受け取った人が、また入力するというのを延々繰り返している感じですね。

小飼:
 だから、国税局でも領収証が手書きでOKということになったのか。

 結局そういうことにつながってくるんですよね。公文書をどれくらい保存するのかって、1年とかいって、「ふざけんな!」 みたいなことを言っておりましたけど、確かに紙のまま保存したらとんでもないことになりますよね。

山路:
 これが全部、その膨大なネ申Excelで作られたものを紙に印刷し、そこに人はペンで記入をし、それが戻される、という。なんというか、表計算ソフトとして全然使われてないわけなんですね。

上原:
 そもそもExcelは言うまでもなく、表計算ソフトなわけで、文字をセルに入れるというのは、必ずしも向いているわけではなく。

小飼:
 でも、なぜここでWordなどが使われずに、Excelを使うようになったんですか?

上原:
 ひとつ大きいのは、Wordの罫線が使いにくいと、よく言われることがあります。みなさんご経験あるかもしれませんが、表を作っておいたつもりが、いつの間にかレイアウト機能でどっかにすっ飛んでいってしまって。

山路:
 ああ、ありますね。

上原:
 本当は幅も固定できるんですけど、いつの間にか縦の高さがどんどん変わっていっちゃったりするとかですね。そんなことを嫌った人達が、一度、罫線を引いちゃったら、絶対に動かないExcel側に寄っちゃったんじゃないかなと思いますね。

 特に日本の場合、最初にワープロというものが、事務屋の間で使われるようになった時に、最初に流行ったワープロ、例えばOASYSや書院の罫線機能がよくできてまして。自由に線を紙の上に引くような感じで罫線が引けた。

 一太郎なんかもそうでしたね。その名残で、こっちの方がいいとなってしまったんじゃないかなと思うのですが。

ワープロソフト『一太郎』。画像は公式サイトより

山路:
 そもそも、なぜ昔からそんなに罫線をよく使ったのかなというのが、ちょっと不思議なところでもあるんですけれどもね。罫線機能にしても、紙の表を再現するということがメインの目的だったって感じなんですかね。

上原:
 そうですね。そもそも帳票にほとんど罫線ないですよね? 例えば、入国書類など見ておられるとわかると思いますが、アメリカの役所に提出する書類なんかは、ベースラインは引かれていても、罫線はないですよね。

 それに比べて日本は、やたら枠で囲いますよね? 文化の違いとしかいいようがないのかなという気がしますけどね。

山路:
 それがコンピューターに移り変わる時に、そのまま再現しようとして、今に至る。

上原:
 はい。

小飼:
 確かに、紙のアナロジーというのは、ネ申Excel以外でも、英語圏でもいっぱいありますよね。未だに電子メール、Webページと呼びますし。

山路:
 ただ、そのまま再現して使おうというのは、英語圏の発想では少ないといえば少ない。

上原:
 そうですよ。メールにしたって、いわゆるレターヘッドが付いたペーパーを、電子メールで再現しようなんて人はいないじゃないですか。

山路:
 紙の文化をそのまま再現しようとしたというのはPDFくらいですかね。

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