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『ブレードランナー 2049』ネタバレ気にせず徹底解剖 「この映画は、キリスト教などの宗教に対する強烈な問題提起が入っている映画なんだ」

 11月5日に放送された『岡田斗司夫ゼミ』にて、映画『ブレードランナー 2049』についての特集が行われました。公開当初から、もしかしたら『ブレードランナー 2049』はイマイチかもしれないと語っていた岡田斗司夫氏

 今回は映画に込められたテーマを解説しながら本作の欠点を指摘、「ほんのちょっと変更を加えるだけですごく面白くなる」と語る岡田氏は、本作の改善案を提示しつつさらに深い考察を行いました。

『ブレードランナー2049』画像は公式Twitterより。

※本記事には『ブレードランナー 2049』『ブレードランナー』『エイリアン:コヴェナント』のネタバレが一部含まれます。ご了承のうえで御覧ください。

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寝てしまうほどイマイチな『ブレードランナー 2049』

岡田斗司夫氏。

岡田:
 僕は『ブレードランナー 2049』という映画をそんなに強く推しているわけじゃない。初めてこれを見たとき、僕は「あれ?」と思った。念のため今週の月曜日にもう一度見に行ってみたけれども、今度は上映時間の半分くらい爆睡してしまった。なのでやはりこの映画は面白くないと思ったんだ。

 そんなことを言っているのは僕だけなのかなと不安に思っていたら、Facebookの友達で『機動警察パトレイバー』を描いた漫画家のゆうきまさみさんも「『ブレードランナー 2049』、イマイチなんだけど」と書いていた。

 彼と繋がっているオタク界のそうそうたる重鎮の人たちは、『ブレードランナー』を守らなければならない秘密結社なのかと思うほどに「映像はいつまでも見ることができます!」とフォローに回っていたけれど、でも僕はゆうきさんの感覚がすごくよくわかるんだ。

 僕の評価が途中で寝てしまうくらい低いのかというと、やろうとしていることがキューブリック映画と同じだからなんだ。逆に言えばキューブリック映画だと思って見ると、セリフの多いサービス満点なキューブリック映画なので、これは『ブレードランナー 2049』の楽しみ方のひとつでもあるだろう。

 たしかに最初に太陽光パネルが無数に並んでいるロサンゼルスの郊外の上をスピナーと飛んでいくシーンなど、映し出される映像は全般的にかっこいい。ただキューブリック映画として見た場合、ちょっと画が弱い。キューブリックであればこうは撮らないだろうと思っちゃう画の弱さがあるんだ。

 では、なぜ前作の『ブレードランナー』が画として強く見えるのか。それは”かわいい”からなんだ。この”かわいい”は世界中でも日本人以外はあまり発見していない概念で、実はかわいいか否かというのは、映画がヒットするかどうかにすごく大きく関わっている。キューブリックの映画は、正直かわいくないんだよ。

『ブレードランナー』画像はAmazonより

岡田:
 ところが『スターウォーズ』にしろ『ブレードランナー』にしろ、ミニチュアを作って苦労して撮っている特撮映画はなんか”かわいい”んだ。前作『ブレードランナー』のビル街の中をスピナーが飛ぶシーンにしても実際にミニチュアを作って飛ばしているから、無理してる感じがかわいく見える。だからといって、『ブレードランナー 2049』は特撮じゃなくコンピュータグラフィックだからかわいくないのかというと、違う。

 『カーズ』にしても『トイ・ストーリー』にしても、ちゃんと”かわいい”と思いますよね? だから、CGだからだめという話でもない。このちょっとした色気みたいな”かわいさ”を画面に乗せるかどうかというのはすごく大きいと思う。例えば日本でもヒットしている『アベンジャーズ』シリーズなどのマーベル映画と、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』や『ジャスティス・リーグ』のようなDCコミックス映画を比べると、不思議なものでマーベルのほうはかわいいんだけども、DCコミックスのほうはかわいくない。

 僕は11月3日に公開された『マイティ・ソー バトルロイヤル』を見に行くことに決めてる。予告編でものすごい変な髪型をしたケイト・ブランシェットが笑って振り返るシーンを見たら、かっこいいと思うのと同時にちょっとかわいいと思ったから。そういうふうな画面全体に漂うかわいげは案外大事なんだ。

『マイティ・ソー バトルロイヤル』画像は公式サイトより

岡田:
 その意味で『ブレードランナー 2049』は、キューブリック的な映画を撮ろうとしたあまり、画面からかわいげがなくなってしまっている。特に苦労もなく思った通りの画面が作れてしまうわけだから。前作『ブレードランナー』は特撮だからなかなか思った通りの画が撮れないんだ。その点をミニチュアや合成でなんとか誤魔化しているところがかわいかったんだけど、今作はそのかわいげがなくなってしまっている。

 かわいげを見せないまま画を見せようと思うのであれば、キューブリックのように時間をかけて撮るしかない。僕はキューブリックの映画を見ていても寝ない。彼の映画は構図ひとつについて何日もかけて考える作り方をしないといけないんだ。それをハリウッド的なスピードで撮ってしまったので、かわいげはない、キューブリック映画に見られる左右対称や非人間的な構図もない、どっちつかずの画だったのが寝てしまったところなのだと思う。

5分でわかる『ブレードランナー 2049』ネタバレ

岡田:
 『ブレードランナー 2049』がどんな話なのかというと、ライアン・ゴズリング演じるKというレプリカント【※】が主人公なんだけれども、このKはレプリカントでありながら逃亡したレプリカントを捕まえて殺すという汚れ仕事をやっている。そして仕事を終えて帰る家には、レプリカント用のおもちゃである、バーチャルリアリティで作られた架空のガールフレンド、ジョイというAIがいて、彼は仲間を殺すことで貰ったボーナスでジョイをバージョンアップして喜んでいる。

※レプリカント
劇中に登場する人造人間の総称。

 まずはこうした舞台説明から始まる。この導入部はなかなか上手い。そんな中、自分が処刑したレプリカントが隠していた別のレプリカントの骨みたいなものを見つけた。それを調べてみたら、骨には子どもを出産したような痕跡があったんだ。レプリカントがなぜ出産なんかしたんだと思ってさらに調べてみると、昔逃げたというある女性型レプリカントの話に行き着く。

岡田:
 ここで前作の『ブレードランナー』を見ていた人には前作の最後で逃げたデッカードとレイチェルの二人の間に、どうやら子どもが生まれたらしいということがわかるようになっている。Kの雇い主である警察としては、レプリカントが子どもを作れるかもしれないことが明らかになれば世間は混乱するだろうから困る。なのでKに対してデッカードの抹殺を依頼する。

 しかしレプリカントを作っている会社の社長にしてみれば、安く数を増やす方法というのはぜひとも知りたいことだ。もしレプリカント同士がセックスして子どもを作れるのだとすればとても都合がいい。人類がより他の星に行くために多くのレプリカントが必要だけれども、従来通りにレプリカントを作ろうとするとコストがかかって難しいからだ。

 この秘密を探るためにデッカードを見つけて来いとKに依頼する。矛盾した命令の間でKは悩むわけだ。警察の上層部と、レプリカントを作っている会社、さらに反乱を企てるレプリカントたちによる組織という3つの勢力が、それぞれ違った目的のためにデッカードを探そうとKに近づいてくる。その上Kは、この3つの勢力とは別の理由でデッカードを探したいと考えていた。

 これについては映画の中にもいろんな証拠が出てくるのだけれども、K自身がそのレプリカントから生まれた子どもというのは自分のことなんじゃないかと思っているからなんだ。ここまでが映画の中盤までの話。このように自分はレプリカントから生まれた子どもなのではという謎を提示することによって物語を前に進めていくためのトルクを作っている。

最大の欠点は主人公Kの感情の動きが見えないこと

ハリソン・フォード演じるデッカード 公式サイトより

岡田:
 Kはその後ラスベガスあたりでデッカードを見つけるんだけれども、会社側にもデッカードの居場所がバレてしまう。せっかく見つけたデッカードを奪われ、さらにKはレプリカントの息子でもなんでもないと知らされる。実はKの記憶自体があとから植えつけられたものだった。Kは、ただでさえレプリカントという人間の偽物なのに、自分の記憶だと思っていたものすら偽物だったなんて自分はとことん偽物なんだと悩む。

 ここらへんは、現代人が抱えるどこまでが本当の自分の記憶なのかわからないといったテーマが入ってきている。そしてKは、奴隷的な境遇の中で人類と戦って独立を勝ち取ろうとしているレプリカントの反乱組織の人から、こんなことを言われる。

 「人間というのは大義のために命を捨てることができる者のことだ。例えレプリカントだったとしても、自分のためじゃなくもっと大きな目標のために命をかけることができれば、俺たちも人間と同じじゃないか」と。こでKは初めて人間に対しての反乱。つまり人間と同じ存在になることを決意するんだ。

 このへんまで見て、Kは人間になりたかったのかと僕は驚いた(笑)。そこまではそんな描写はないんだ。人間から差別されてつらそうな場面はあったけれども、俺も人間になりたいと言っている描写はなく、それどころかレプリカントという存在が、差別を受けてつらいという感情を持っているのかどうかもわからないと描いていた。

岡田:
 つまり、この映画の最大の欠点は、主人公のKがなにを感じて、なにを考えているのかよくわからない圧倒的な説明不足なところなんだ。画面的な説得力だけは出しておいて、キャラクターに関する説得力を出すのを忘れている。そこは俳優の演技力におまかせするというような感じでやっている。

 だから、Kが反抗を決意するシーンを見て、そんな描写なかったぞと思ったんだ。その後、Kはデッカードを奪い返してレイチェルとの間に生まれた本当の娘に会わせてあげるんだけど、そのときの戦闘でKは死んでしまう。最後は前作で使われていた懐かしい音楽が流れ、雪が降ってきて、おしまいと。

 これが5分くらいで話せる『ブレードランナー 2049』のネタバレストーリー。こんなにネタバレしていいのかと言うよりは、これくらいネタバレしないと映画館に見に行ってもよくわからない話になっている。

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