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自らもコスプレする“オタクすぎる“現役地方議員に、「なぜコミケで同人誌を出したのか?」聞いてみた

 作者の並々ならぬ愛情と情熱、そして私財を注ぎ込んで生み出される同人誌──そこにはディープで、マニアックで、だからこそファンの心を掴んで離さない世界が広がっている。そんな世界の一端をしっかりと掘り下げながら紹介していくのが、ニコニコ発の企画「薄い本プロジェクト」。

 そんなディープな同人誌を取り上げ、制作者にそのアツい思いをひたすら聞いてみる企画。今回は、現職の東京の大田区議会議員が制作した『地方議員の日常本vol.2』なる同人誌を紹介。これまで人工衛星に魅せられて”人工衛星本”を作ってしまった男」、「童貞から集めた疑問に答える同人誌」、「コンビニで呑むことにこだわりまくった本」、「秋葉に住むなどディープすぎる世界をお伝えしてきたが、今回も負けず劣らずの知られざる世界が広がっていた──。

 「地方議員の生活を分かりやすく解説したかった」と語る制作者・おぎの稔議員に、オタクすぎる制作の舞台裏、地方議員の活動内容、そして「議員さんが同人誌を作って販売しても大丈夫なの?」など、気になる質問を直撃した。

取材・文:我妻弘崇
編集:サイトウタカシ


オタクの道から地方議員の道へ 同人誌制作に至るまでの経緯とは!?

——現職の大田区議会議員である おぎのさんは、なぜ自ら同人誌を作ろうと思ったのでしょうか?

おぎの:
 マンガに携わる仕事をしたくて、高校卒業後はアミューズメントメディア総合学院という専門学校の漫画学科に2年間通っていました。その後、2年間ほどマンガを描くお手伝いなどもして、コミケにも通ったり…… 要するに根っからのオタク気質だったんですよね(笑)。2015年4月、私が29歳のときに初めて当選させていただいたのですが、政治に関心がない人にも議員が何をしていて、どういう存在なのか知ってほしいなって。それから自分の政策や地方議員の日常をマンガで表現するようになり、同人誌として制作する運びとなりました。

おぎの稔大田区区議会議員。2010年より議員秘書として経験を積み 2015年、大田区区議会議員に立候補し、当選。

──漫画学科出身ということは、おぎのさんにとってマンガやアニメは身近な存在だったんですね。

おぎの:
 世代的に『赤ずきんチャチャ』『神風怪盗ジャンヌ』『セーラ―ムーンR』などが流行っていた時代だったので、それらの作品はよく見ていましたし、もちろん『週刊少年ジャンプ』『週刊少年チャンピオン』などの少年誌も大好きでした。専門学校に進んだのも、マンガに関わる仕事をしたかったからです。議員になる前は、東方Projectの東方紅楼夢というイベントでコスプレもしていたり、けっこうなオタクライフを送っていたと思います。

──ビジネスオタクではない、と(笑)。

おぎの:
 私は議員になる7年くらい前からPixivのアカウントも持っていますので、ビジネスオタクではないと断言できるはず(笑)。

『地方議員の日常本 Vol.02』より

議員さんが同人誌を作って販売しても大丈夫なの?

──そもそもの話なのですが、議員さんが同人誌を制作・販売しても大丈夫なのでしょうか? 

おぎの:
 国会議員の方でも書籍を出されている方がいると思うのですが、普通に確定申告をすれば問題ありません。仮に、政治活動の一環となる場合は、政治資金の収支報告書に載せて、きちんと処理すれば大丈夫です。ただし、無償で配布すると“寄付”と判断される恐れがあるため、違反になってしまう可能性があります。

──松島みどり元法務大臣がお祭りでうちわを配って辞任した騒動がありました。

おぎの:
 有償で販売しても、きちんと処理を行えば問題ないのですが、「地方議員の日常本vol.2」を無償で配ってしまうとアウトになります。ちなみに私は政治活動ではなく、会社を作り、売上げとして計上しています。経理をしっかり行うことで売上げの入口と出口が明確になる。政治家の金銭事情って、“違法じゃないけど不適切”的なことも問題視されがちなので、我々は全部クリアにしようと。

──売上げの分だけ納税する、または政治資金の収支報告書に記載し然るべき処理を行う、このどちらかであれば問題ないわけですね。

おぎの:
 猪瀬元都知事の5000万円献金問題も、収支報告書に記載していなかったことが問題なのであって、「5000万を借り入れし、これに使いました」ときちんと処理していたら話は違ったわけです。

──なるほど。ちなみに差し支えなければ「地方議員の日常本vol.2」はどれくらいの販売数なのか教えていただけると……

おぎの:
 前回の夏コミでは600冊持ち込んで、400冊ほどお手にとっていただきました。ありがたいことです(涙)。議員になる以前に、東方の同人誌などを友人と制作していたことがあったのですが、そのときはいつも島中……ところが今回は初のお誕生日席! テンションが上がりました(笑)。

──マンガ自体はおぎのさんご自身で描くこともあるのですか?

おぎの:
 『地方議員の日常本vol.2』では、専門学校時代の友人や気心の知れた作家の方に描いていただきました。私自身、漫画学科だったので時間があれば描けるのですが、『地方議員の日常本vol.1』で醜態をさらしてしまったので……。

『地方議員の日常本vol.1』より

──衝撃的ですね……。味がありすぎるというか、こういうタッチをあえて狙ったのかな? といいますか……。

おぎの:
 ホントに時間がなかったんですよ! AVGゲームというか、『メモリーズオフ』や『ときめきメモリアル』のような昔の恋愛ゲームにありがちな顔アップばかりのコマ割りになってしまい、自分でもがく然としてしまいました…… ですが本気を出せば 時間さえあればこれくらいのものは!(とスマホの画像を見せる)

おぎのさんの本気デッサンPixiv より

──おお! 上手い! 逆に、「vol.1」はどれだけカツカツだったんだという(笑)。

おぎの:
 面目ないです(苦笑)。当落はまだですが、冬コミへの参加の申し込みも完了済みです。より読み応えのある“地方議員あるある”ネタを織り込んだマンガを制作中ですので、ご期待ください!

──それにしてもどうして おぎのさんは、オタクの道から地方議員の道へ?

おぎの:
 2010年の非実在青少年【※1】騒動が転機でした。それ以前にも児童ポルノの法規制【※2】が問題視されていて、二次元の創作物に対する規制が強化される機運が高まっていたこともあり、コミケなどでは反対を唱える署名運動などが展開されていました。

※1 非実在青少年
2010年3月、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の改正にあたって東京都側が改正案で提示した「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」を指す。

※2 児童ポルノ規制法
2008年、与党が単純所持・創作物への規制を含んだ改正案が提出。アニメ、マンガ、イラスト、ゲームなどの実在しない児童を描いた創作物に対する規制も含まれていた。

──『ドラえもん』のしずかちゃんの入浴シーンがNGになるなどと叫ばれていたときですね。

おぎの:
 そうです。結果的に、マンガ・アニメなどに関する部分が削除された改正案が提出され成立するのですが、現在、しずかちゃんの入浴シーンはぼかしが入っています。現実問題として、表現の幅は段々と窮屈になってきています。当時、僕は署名運動のお手伝いをしていて、どういったやり取りがあったかなども近いところから見ていました。「地方議員の日常本Vol.2」でも描かせていただきましたが、マンガの中にあるようにセリフはほぼ事実です。「悪人のように描く必要があるのか?」などのご意見も寄せられたのですが、実際に耳を疑うような発言が多かった。

『地方議員の日常本vol.2』より

おぎの:
 反対を表明している政治家の方々と近しくなり、そういった活動をサポートしているときに、「秘書になって勉強してみないか?」と声をかけていただき、そこから政治の世界に身を投じることになりました。この運動に関わらなければ、政治の道と出会うことはなかった。専門学校に通っている自分に、「10年後、大田区で議会議員をしている」と伝えてもまったく信じないでしょうね。

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