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「ミクと一緒に踊る夢」を叶えた男――話題の動画『自分を3Dスキャンして遊んでみた』作者に話を聞いてみた

 2017年2月21日に投稿され、再生回数16万以上、ニコニコ技術部ランキング1位を記録した「【Unity】自分を3Dスキャンして遊んでみた。」という動画をご存じだろうか?

 自分の全身をスキャンしてPCの中に取り込む様子が流れた後、作者の姿をまとった大小さまざまな3Dモデルが画面内を動き回る「1人進撃の巨人」風映像や、固まった表情のまましなやかに動く手足が何ともシュールなダンス映像など、インパクトに溢れたこの動画は大きな話題となり、また、同日に「踊ってみた」カテゴリに投稿された「【一緒に踊ってみた】初音ミク×俺で「ビバハピ」」では、なんと(!!)ミクと画面の中で夢の共演まで果たしてしまう。

 この二つの動画の投稿主であるkohack_v(こはっく)氏こと坪倉輝明氏。実は、数々の受賞歴を誇り、つい最近も「VRクリエイティブアワード2017」にて審査員特別賞を受賞、『ソードアート・オンライン』の世界を体験できるVRイベントに関わるなど、気鋭のメディアアーティストである。そんな次代を担うクリエイターが、1ユーザーとしてニコ動に作品を投稿した真相を探るべく、編集部では坪倉氏の制作現場に伺い、インタビューを敢行。

 坪倉氏が語る、ニコ動の魅力、メディアアーティストとしてのアイデアの源、今後作りたいものとは――。

取材・文:我妻弘崇
編集:サイトウタカシ

「【一緒に踊ってみた】初音ミク×俺で「ビバハピ」」 より

「自分を3Dスキャンして遊んでみた」で、初めて3Dモデルを作った

――最初に、坪倉さんがどんなお仕事を手掛けているのか教えていただいてもよろしいでしょうか?

坪倉:
 まずメディアアーティストとして、自分で作品を作って活動をしています。その一方で、フリーランスになる前に、株式会社ワン・トゥー・テン・デザイン(1-10design,Inc.)という広告やデザインなどを手掛けるクリエイティブエージェンシーで、エンジニア/テクニカルディレクターとして働いていたため、現在も広告代理店からの依頼の技術面の相談に乗る仕事に携わっています。海外ではそういう仕事をクリエイティブ テクノロジストと呼ぶため、自身の名刺には、「メディアアーティスト」「クリエイティブ テクノロジスト」と書いています。

――広告代理店などのクライアントから、「こういうものを作りたいんだけど」と相談を受けたときに、坪倉さんが技術的な面で可能か不可能かというようなことをアドバイスしていくと?

坪倉:
 そうですね。僕は基本的に広告の仕事は、問題解決だと思っています。お客さんを集めたいとか、ブランドの認知度を高めたいとか要望は様々ですが、その客層に見合った〇〇というテクノロジーを使うと良いと思いますというように、一番ふさわしい技術を提示していく。僕の場合は、テクノロジーの相談に乗るという立場ですが、前職がエンジニアだったこともあり、そのまま開発を担当することがほとんどですね。

メディアアーティストとして活躍する坪倉輝明氏

実は大学時代からニコ動に動画を投稿していた

――そんな多岐にわたって活躍されている坪倉さんが、なぜニコ動に動画を投稿しようと思ったのですか?

坪倉:
 僕は、オタク文化ってすごいと思っていて……。何か一つのものに熱中している人たちが作り出すものにはエネルギーが溢れていて、ニコ動にはそういったエネルギーが集まっている。ニコ動は、一個人が作るものにはエネルギーが溢れていると再認識させてくれる場所だなぁと。 初めて投稿したのは大学時代でしたが、当時はひっそりと音MADやAR(Augmented Reality:拡張現実)をテーマにした動画を投稿していました。

 最近は仕事が忙しくてなかなか投稿できなかったのですが、久々に「自分を3Dスキャンして遊んでみた」を投稿してみたところ、大きな反響があってビックリしました(笑)。

――動画の中では制作工程も解説されていますが、改めてどのような経緯であの動画は誕生したのでしょうか?

坪倉:
 今後、仕事や作品で利用するかもしれないと思い、カメラを何十台も並べて撮るフォトスキャンを試してみたいと思ったんですね。いざ仕事という時に、初めて新たなテクノロジーを利用することはリスキーですから、僕は必ず事前に個人で試してみることを心がけています。

 調べてみると、品川にSUPER SCAN STUDIOという84機のカメラによる高解像度テクスチャーを取得できるスタジオがあったので試してみようと。とはいえ、ただ撮影するだけではもったいない。せっかく自分のモデルが出来たんだからアニメーションのように動かしてみようと思ったんですね。そのこと自体、初めてのチャレンジだったんですけど。

「【Unity】自分を3Dスキャンして遊んでみた。」の制作過程 より
モデル制作協力:SUPER SCAN STUDIO

――えっ? 初めての試みだったんですか!?

坪倉:
 初めて3Dモデルにボーンを入れました。でも、フリーソフトがたくさん揃っているので、方法はグーグル先生に聞けば分かるだろうと。練習がてらに作ったとは言え、せっかくだからプロセスを動画にまとめて公開してみたんです。個人的な今後の制作面の実験として、「これは使える」「これは使いづらい」ということを把握しておきたかっただけなのですが、予想以上に反響が……改めてニコ動ってスゲーって思いましたね。

嫁が画面から出て来ないなら、自分から画面の中に入る

――そして次は初音ミクと踊ってみようと。

坪倉:
 ボーンを入れて躍らせてみたところ面白い画になったので、夢の共演をさせていただきました(笑)。仕組みは「自分を3Dスキャンして遊んでみた」と同じですから、制作期間は1日かからないくらい。 近い将来、誰でもミクと踊れるような装置が誕生していると思いますね。

――動画の紹介文には、「嫁が画面から出て来ないなら自分から画面の中に入るスタンス。」と。元々ミクも好きだったんですか?

坪倉:
 ミクが大好きなんですよ。ミクさん、いいですよね。

――ミクという存在が、坪倉さんの中では相当に刺さるデジタルアート作品なのでしょうか?

坪倉:
 初めてヴァーチャルアイドルという存在自体を日本人が作り上げた。それは日本のクリエイターが作った文化みたいなものなので、そういう意味で初音ミク大好きですね。

 僕は、オタク文化みたいなものがすごく好きで、いろいろなオタクの方、アイドルオタクの方とか鉄道オタクとかいらっしゃるんですけど。そういうものに熱中している人達が好きなんですよね。

 普通の人は、あまりそこまで熱意を持って色々なことをやらないと思うんです。けれども、凄く熱意を持っている人には、何でも作るエネルギーがどんどん出てきている。ニコニコ動画とかが正にそれで。「作ってみた」みたいなものが、結構投稿されているじゃないですか? やっぱり、みんな熱意で好きだから、このキャラクターが好きだからこういうのを作ってみたという方が多くて、そういうのが面白いなと思って。

――初音ミクの作品と言えば、坪倉さんがニコ動にもUPしている(初音ミクの)パンツが見える夢のメガネ「Delta Glass」もあります。

坪倉:
 昔から、男子の夢のアイテムとして「服が透けるメガネ」ってあるじゃないですか。あれを実現するテクノロジーはないかと、大真面目に考えてみたんです。僕と似たようなスケベな思考を持ったエンジニアと二人で、なんとか実現できないかと激論を交わしながら熟考しました。その結果、ハーフミラーを使った反射型のスタイルを考え付いたんです。

「パンツが見える夢のメガネを作ってみた【Delta Glass – デルタグラス】」 より

――直接見えるのはよろしくないと?

坪倉:
 直接見ることができたら最高ですけど、発明者であると同時に犯罪者になってしまうので。あと、せっかく作るのだからバズらせるために、“謎のテクノロジー”みたいな理解が難しい演出がほしかったんですよね。テクノロジー系のネタをバズらせるためには、無駄に複雑な方がいいんです(笑)。本当は偏光板のような3Dメガネみたいなもので作ることもできたのですが、それだと興味を引きづらい。

 そこで周波数に合わせて点滅させる方式、いわゆる“アクティブシャッター方式”と呼ばれている3Dメガネにしようと。120ヘルツ(1秒間に120回点滅させる)に合わせた点灯のタイミングで、メガネのシャッターを切る方式にして“謎の技術感”を演出することにしました。

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