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日中同時配信の生放送CGアニメ『直感×アルゴリズム♪』はどうやって実現する!? NTTドコモの副島プロデューサーに聞いてみた

 8月17日(木)から生配信を開始する予定の日中共同制作のバーチャルアイドルプロジェクト『直感×アルゴリズム♪』。日本のNTTドコモと中国の中国移動(チャイナ・モバイル)のグループ会社「ミグ動漫」による共同制作で、ニコ生と「ミグ動漫」で2カ国語による日中同時配信がされる。しかもTwitterWeibo(微博)ともリアルタイムで連動し、ユーザーからのコメントにもリアクションをするというこれまでにない試みである。その生配信アニメの裏側、それによって見えてくる3DCGと生配信による新たなエンターテインメントの未来像とは? 制作プロデューサーであるNTTドコモ スマートライフ推進部 ビジネス基盤戦略室・ビジネス基盤戦略 インバウンドビジネス推進担当主査 副島義貴氏に伺った。

取材・文:サイトウタカシ


『直感×アルゴリズム♪』登場キャラクター
左がKilin(CV:鈴木このみ)、右がXi(CV:岩井映美里)

ドコモとチャイナ・モバイルという日中のモバイル事業者のコラボから生まれた生放送アニメ『直感×アルゴリズム♪』

──まず、今回の生放送アニメ『直感×アルゴリズム♪』の企画は、どういった経緯で始まったのでしょうか?

副島:
 今作に先立つ作品として2014年当時私が出向していたNOTTVという放送局で『みならいディーバ(※生アニメ)』【※1 以下、『みならい』】を担当していました。
 その『みならい』が終わった後の2015年の5月ぐらいに、当時のドコモ本体側の担当から、SCFAStrategic Cooperation Framework Agreementの略)というドコモの国際事業関連部門が取り組んでいる、簡単に言うと中国のキャリアと韓国のキャリアと日本のキャリアが共同して事業を生み出せないか、トライアル的なことをやる枠組みで、アニメのような日本発信のコンテンツを何か一緒に出来ないかという話があり、その時は、どちらかというと「KADOKAWAさんやアニプレックスさんなどの版権をお持ちの会社さんとお話をするのはどうですか? ついでに、こんなものもありますよ」という風におまけ的に『みならい』を紹介したのがきっかけでした。

1 『みならいディーバ(※生アニメ)』とは? 20147月〜9月までNOTTV、ニコ生、TOKYO MX2などで放送された史上初の生アニメ。出演声優の動きをモーションキャプチャーでリアルタイムに3DCGを動かすことで実現した。

『みならいディーバ(※生アニメ)』より
(C)(※ネタバレ注意) 最終回は生でライブやるかも委員会

 

──それが日中共同事業の中から、生アニメをやろうという感じになったんですね。

副島:
 そうなったんですけれども、まず、それを中国のパートナーである中国移動さんに持っていっても、生アニメが何なのか全然分からないという話になり……
 1年近く、中国移動さんに対して生アニメがどういうものなのかの説明をしたり、実際に動いていてくれたのは技術面を手掛けているセガさんで、中国から日本に来られるタイミングでデモを見てもらって、少し理解をしていただくとか、そういうことからプロジェクトはスタートしました。

生アニメは、ドコモのテクノロジーで実現する「新エンタメ体験」

──ものすごくていねいに始まったのですね。しかし、アニメ制作自体をドコモ主体でやろうというのは結構大変だったんじゃないかなと思うのですが?

副島:
 実はドコモ的には、「アニメ業界に参入する!」という意識は全然無くて…… このテクノロジーを使って、中国とどういうことができるんだろうという話し合いの中で、生アニメというコンテンツフォーマットで1回やってみましょう、ということなのです。
 なぜドコモが? という話につながっていくのが、実はこのタイミングになって、弊社もオリンピックや節目の時代となる2020年を目指して、「beyond宣言」というもの策定して、5Gを使ったいろいろなサービスの展開を考えています。その「beyond宣言」に掲げられているものの一つに「新エンタメ体験」というのがあり、テクノロジーの進歩を新しい体験を通して使っていただけるようしていこうという目標があります。

──技術的には現在の携帯やスマホは、既にお客さんのニーズを超えてしまっていますよね。

副島:
 通信速度がより高速化されていくなかで、、恐らく今のお客さんが求めていらっしゃるのは、単なるテクノロジーの進化だけでなく、そこから得られる経験、体験を通して、新しいテクノロジーを使っていただく、という流れになっているのかなと僕らは理解していて、この「新エンタメ体験」に、今回の生アニメが将来的に繋がるのではないかと思っています。 

『直感×アルゴリズム♪』制作プロデューサー NTTドコモ 副島義貴氏

──そうしたドコモのテクノロジーデモンストレーションという側面もあるのだろうかと思っていました。

副島:
 今のアニメ自体は、すごく色々な種類のものが沢山の数が、出てきていますが、その中でいわゆる完パケ的なアニメではなくて、僕らは、もうちょっとテクノロジーを使って、新しい体験をしてもらえるところが、今回の売りになる部分だと思っています。また今回の技術はライブやVRといったその先のエンタメにつながるテクノロジーの要素がたくさん含まれていてもっといろいろなフォーマットに発展させられる可能性もあるのではないかと妄想しています。
 ちなみに『みならい』の時も一応そのように考えていました。一緒にやっていたニッポン放送アナウンサーの吉田(尚記)さんや、もう一人の当時ご一緒させていただいた『けものフレンズ』を手掛けられたヤオヨロズの福原さんもあまりアニメの常識に縛られない考え方をされていたので「みならいディーバ」のような作品が生み出されたのではないかと思います。

──ビジネスモデルとして、体験でどうやって収益化するのか?が、今後の課題になるのでしょうか?

副島:
 そこは、ものすごく課題としてはありますが、僕らも手探りのところもあります。配信はあくまでもまだプロモーション的な位置づけとして考えて、純粋にアニメに閉じた形での回収ではない方法を模索しつつ、後はどうスケールを出していくかというところかと思っています。
 それと中国側がどちらかというと比較的、日本でいうクロスメディア戦略、彼らの言葉でいうと汎娯楽、 やはり市場が大きいので、ひとつのIP(知的財産)を育ててグッズやゲームに使ったり映画化したり、という展開をビジネスモデルとして考えています。ただ今回、日本と中国で始めて一緒にやるプロジェクトなので、いきなり大きなビジネスではなくそれにつなげていく為のトライアル的な要素が非常に強いと思いますが、そうしたところを狙っています。

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