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コンビニで買える酒の肴を網羅した実用的すぎる同人誌「コンビニで呑む」。宅呑みを豊かにするワザを制作者に聞いてみた

 作者の並々ならぬ愛情と情熱、そして私財を注ぎ込んで生み出される同人誌――そこにはディープで、マニアックで、だからこそファンの心を掴んで離さない世界が広がっています。そんな世界の一端をしっかりと掘り下げながら紹介していくのが、ニコニコ発の企画「薄い本プロジェクト」です。

 そんなディープな同人誌を取り上げ、制作者にそのアツい思いをひたすら聞いてみる連載企画も、今回で第3弾。第1弾の「人工衛星に魅せられて”人工衛星本”を作ってしまった男」、第2弾の「童貞から集めた疑問に答える話題の同人誌」に続いて紹介するのは、お酒が好きな人たちの人気を集める同人誌「コンビニで呑む」シリーズです。

ローソンで呑む
画像はかるこーるぞくHPより

 何か欲しいと思えばすぐに足を運べる、私たちの生活を支える便利なコンビニ。そんなコンビニで気軽に買える酒の肴になりそうな商品を実際に購入し、ひたすらレビューするという同人誌です。

 最新号「ローソンで呑む」では、「スモークたらこ」や「直火焼バラチャーシュー」など、酒の肴やお酒をフルカラー写真付きで40種類以上も紹介。コンビニ各社のコロッケを徹底比較する特集も掲載するなど、盛りだくさんの内容です。

スモークたらこの魅力を細かく解説
画像はかるこーるぞくHPより
コンビニごとのコロッケの比較も!
画像はかるこーるぞくHPより
一風変わった特集ページも
画像はかるこーるぞくHPより

 いったいどんな思いを込めて、この同人誌を作成しているのでしょうか。お酒が大好きな制作者の「かるこーるぞく」さんに尋ねてみました。

取材・文/透明ランナー


フルカラー52ページ! 圧倒的な熱量の「コンビニで呑む」

――こちらの「コンビニで呑む」シリーズ、どういう同人誌なのか、簡単に教えてください。

かるこーるぞく:
 コンビニで買うことの出来る酒のツマミになりそうな商品をひたすら紹介していく本です。これまでにセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの3つのチェーンの本を出しています。コンビニのイートインスペースで呑む本かと間違えられて、ちょいちょい怒られることもあるのですが(笑)、コンビニで買った商品で「宅呑み」を豊かにすることを目指した本です。

――各号とも52ページフルカラーで、写真がふんだんに取り入れられていて、かなり豪華な構成ですよね。

かるこーるぞく:
 文章で熱く語る本も好きなのですが、同人誌即売会という「一期一会」の場で頒布するときには、そのアツい要素が数ページパラパラと確認するだけでは伝わりにくいと思っています。
 そのため、なるべく多くの写真を掲載し、文章に負けないような魅力のある写真と、どこから読んでも楽しめる雑誌のような多様性を持ったデザイン・構成を両立させることを基本コンセプトとしています。

――内容がとても濃く、読み始めるとどんどん引き込まれます。

かるこーるぞく:
 雑誌のような多様性を意識し、小さな写真で商品の魅力が分かりやすく伝わるように作成しました。例えば、商品のパッケージは小さく、調理後の写真を大きくして、商品を実際に買わなければわからない情報を視覚的に伝えられるようにしています。
 また、コンビニで売られているサラダチキンやポテトサラダなどの食べ比べや、変わり種商品の体験談などを企画ページとして掲載し、一度立ち止まって本を見てもらえるようにしています。

――取材で大変だったことはありますか?

かるこーるぞく:
 コンビニってどこも商品の入れ替わりがものすごく早いんですよ! 本の制作中に掲載したかった商品が販売終了となり、写真を取り損ねてしまって掲載出来なくなったことも何度かありました……。
 そのせいで、短い期間で制作する必要があり、制作期間は平均すると3ヶ月くらいです。制作費は掲載されている商品を購入する費用の2倍くらいはかかっているのではないかと思っています。打ち合わせや打ち上げの際も呑みにいくので、そのぶんの飲食費が高くついています(笑)。

――読者やネット上の反応はいかがだったでしょうか。

かるこーるぞく:
 自分の好きなことをやるのが同人誌ですが、好きなことでこれだけの反響があるとは夢にも思っていなかったので、いまだにただただ驚いています。即売会などで会う方々から自分たちが知らなかった新たな「オススメ」を教えてもらえるのが楽しいですし、この活動をやっててよかったなと思います。

お酒好き3人が集まってできた同人誌

――とても面白いコンセプトだと思いますが、そもそもどのようなきっかけでこのコンセプトを思いついたのでしょうか。

かるこーるぞく:
 きっかけは、セブンイレブンで売られている「炙り辛子明太子」との衝撃的な出会いでした。このサークル「かるこーるぞく」のメンバーは全員サラリーマンなので、「1杯引っ掛けたいんだけれども、もう終電が近い……」というときにしぶしぶと宅呑みをすることがあります。メンバーで打ち合わせと称して呑んでいるときに(笑)、セブンイレブンの「炙り辛子明太子」が手軽に買える上に美味しいと話題になり、それぞれのお勧め商品を紹介し合っていたのが、こうして本の形になりました。

画像はかるこーるぞくHPより
炙り辛子明太子の紹介
画像はかるこーるぞくHPより

――どんなメンバーなんですか?

かるこーるぞく:
 メンバーは機長、こひのき、涼雨の3人です。学生時代からの同級生で、もともとはそれぞれでさまざまな活動をしていました。機長はオーディオドラマの脚本や成人向け漫画家・クリムゾン先生やアニメ脚本家・雑破業先生の作品ガイドなどの同人活動。こひのきは、ダーツなどのグッズデザイン。涼雨はニュースサイトの運営などをやっていました。
 2014年ごろから同人活動を始め、「かるこーるぞく」として初めて参加した即売会は2014年夏のコミックマーケット86です。

――皆さんお酒を呑むのが好きという共通点があったわけですね。

かるこーるぞく:
 その通りです。呑んでいるときにふと、それぞれが得意分野で協力することで同人誌が作れるのでは? という話になり、この活動が始まりました。

――どんなお酒が好きで、普段どんなふうにたしなんでいらっしゃるんですか?

かるこーるぞく:
 お酒全般好きですが、やっぱりビールが好きです。ビールは家でもよく呑みますが、「ブルーパブ」を巡るのも好きです。ブルーパブとはお店と同じ場所でビールを造り提供するお店のことで、そのお店でしか呑むことができない作りたてのビールに出会えます。最近はブルーパブのお店が増えているので嬉しいです。

各コンビニチェーンの味の違いに注目

――今まで3チェーンを取り上げてきましたが、どんな違いがありますか?

かるこーるぞく:
 どの店舗にも工夫をこらした特徴があり、それぞれに好きな点があります。

 <セブンイレブン>:パッケージのままレンジでチンができるパッケージなど、さまざまな新しいチャレンジが楽しいですね。

 <ファミリーマート>:以前展開していた男性向けのスイーツ「俺のシリーズ」、「たっぷり食べたい!丼プリン」など、好きな人にはたまらない唯一無二な商品が魅力です。

 <ローソン>:多くの種類を展開するチーズ商品や、クラフトビールでおなじみのヤッホーブルーイング社のビールなど、こだわりの商品が魅力です。ビールや日本酒などひとつの商品のラインナップを数多く取りそろえる傾向があるように感じます。

――同人誌を読み、コンビニに足を運んで各自の好みに合ったチェーンを見つけることで、宅呑みがグレードアップするということですね。

かるこーるぞく:
 その通りです! 「コンビニで呑む」シリーズを作っていく中で、各コンビニでこんなに違う点があるんだと初めて知り、驚きました。
 また、それぞれのコンビニが食品会社と共同開発をすることがあります。ファミリーマートとローソンがそれぞれ株式会社サラダメイトFMC社とポテトサラダを共同開発しているのですが、どちらの商品も全く方向性が異なる商品になっています。ぜひ食べ比べてみてください!

ポテトサラダの違いにもこだわりが
画像はかるこーるぞくHPより

――ポテトサラダの味が違うなんて、知りませんでした。しかも共同開発しているメーカまでチェックしているなんて……! さすがです。


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