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ボカロ動画『ワールドイズマイン』絵師のredjuiceさんが『ギルティクラウン』『虐殺器官』キャラ原案を手掛けるようになるまで

イラストレーター転身で一時は収入激減

——2008年5月にsupercellの動画「ワールドイズマイン」、8月にビクターから発売されたlivetune「Re:package」でそれぞれイラストを担当。後者はメジャーデビューの仕事となりましたが、どんな気持ちでしたか?

 個人的には、メジャーだ、同人だっていう線引きはないですね。強いて言うなら、お金をいただいてやるかどうかの差です。

『Re:package』のジャケット写真
画像はAmazonより

——この時期、一気に活動の幅が広がりましたが、いちニコニコ動画ユーザーだった時期に、こうなることは予想できましたか?

 ボカロPとコラボして絵を描くのは楽しそうだな、そのうち自分もやりたいとは思っていたんですよ。ただ、イラストレーターのことを、それだけで生活できる仕事だと認識していなかった。当時supercellのryoさんに「イラストレーターを仕事にする気はないんですか」って聞かれて「プロになる気はない」って答えたのを覚えてますね。

——当時はどんなお仕事をされていたのでしょうか。

 わりとFlash全盛の時代だったので、WEB制作会社でFlashサイトを作っていました。 普通にサラリーマンとしての収入があったので、専業になったところで辛い思いをするのが目に見えていた。でも、気づいたら沼にハマって、抜けられないところまで来ていたっていうのが実感です。

——仕事が増えたと実感したのはいつ頃ですか?

 livetune「Re:MIKUS」(2009年3月ビクターから発売)のジャケットをやっていた時期ですかね。その頃に雑誌のイラストや小説の表紙のお仕事をいただくようになって。

 この時点でも、イラストだけで食べていける自信は無かったのですが、覚悟を決めて、とりあえずは踏み出してみよう、と思い始めた時期です。ある時期から完全に専業にスイッチしたというよりは、徐々にイラスト仕事のウェイトを増やしていった感じでした。

『Re:MIKUS』のジャケット写真
画像はAmazonより

——仕事が増え始めたのは何がきっかけだったのでしょうか・

 やっぱりニコニコ動画とpixivが大きかったですね。業界の人がpixivを見てて、当時ランクが上位だった絵師さんは、今でもプロでやってる人が多い気がします。もともとプロの方が投稿していたっていうのを差し引いても、ここが登竜門だったかな、と。

 ぼくもpixivにアップするようになって最初の頃はぜんぜんランクが上がらなかったんですよ。トップ3に入るのを目標にしてスキルを上げていったので、pixivのおかげというイメージは強いです。

——ランクを上げるために、どのような工夫をしていたのでしょうか?

 技術の積み重ねはもちろんですけど、ひとつ気にしていたのは“快楽主義”というか。数値化はできないんですけど、感動値を高めるために「なんとなくいいな」じゃなくて、絵を見た瞬間に泣いちゃうくらいの衝撃や感動を感じてほしいんです。それを感じられるような一瞬のストーリーを絵に込めるために、構図、色使い、キャラの配置を考える。そういうのは意識していました。

 ラフを作る前に資料を集めて絵のバックグラウンドをしっかり組み立てたり、詩的な意味や思いも込めるんですけど、それを一つ一つ絵のパーツとして目立たせて、見る人に押しつけない。わかる人が見ればわかる、ぐらいの暗喩はあってもいいんですが、画面の隅々まで細部に拘りすぎると、元々圧倒的な描き込みで魅せるタイプでは無いので、絵としての感動が分散されてしまうんです。

 まずは全体をぱっと見たときに、誰が見てもいい絵だと感じてもらいたい、というのを意識してますね。

——これらの絵柄や技術を体得するまでに、影響を受けた人物はいますか?

 これ、聞かれるたびにけっこう考えちゃうんですよね。ルーツをたどれば、永野護先生とか、鳥山明先生。「ファイブスター物語」はぼくが中学生くらいの時からずっとやってて、すごい好きでした。まさか、今でも永野先生が「ファイブスター物語」を連載しているNewtype誌の表紙を飾ることになるなんて、想像もしてなかったですよ。
 他には三輪(士郎)さんももちろんだし、同時期にウルトラジャンプで「天上天下」を連載していた大暮維人先生。“画力で殴るスタイル”というか、この方たちには非常に強い影響を受けましたね。

ファイブスター物語
画像はAmazonより

 世界観でいうと、ゲームの「クロノ・クロス」がすごい好きでした。結城信輝先生のキャラデザと、アイリッシュなケルト音楽も大好きでしたね。
 大暮先生とか三輪さんは、常に進化してるので、「どこまで行くんすか……」って感じで眺めてます(笑)。

——三輪さんは、息抜きに絵を描くくらいなので、どんどん進化するわけですね。

 あの人は、もう息をするように絵を描いてますね。今はiPadで描くことが多いみたいですけど、電車の中でも一目を気にせずラクガキしてるらしいですよ。

——「自分は手が早いわけではない」とおっしゃっていました。

 いやいや、だったらぼくらは遅すぎってことですね(笑)。三輪さんは描くの超絶早いですよ。

——DeviantArt【※】のアカウントもお持ちですが、海外活動への意欲も高いのでしょうか?

 海外と垣根なくやっていきたいという気持ちは、常にあります。最近は、海外のイラストレーターさんが台頭してきていて、pixivでも上位に入る方が増えてます。多いのは韓国と中国のゲームデザイナー系の方たち。

 中でもキム・ヒョンテさんやヒョンテさんの奥さんでもあるKKUEMさんには影響を受けています。日本のアニメやゲームキャラクターの「かわいい、かっこいい」スタイルを取り入れながら写実的な描写で魅せる、キャラクターアートの新しい方向性を見せてくれた方々だと思います。

※DeviantArt
世界最大のオンラインアートコミュニティサイト。登録ユーザーはイラストや写真、動画を投稿できる英語中心のサービス。

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