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「ウチはまだ安全」実はハザードマップが逆効果と語る地震学者に対して、夏野氏が活用法を提唱「危険度を不動産価格に反映させよう」

 2011年の東日本大震災をきっかけに、その内容が大きく見直されることとなったハザードマップ

自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図

出典…ハザードマップ|国土地理院

 3月7日に放送されたニコ生『三陸町でフィールドワーク』では、東日本大震災による津波の被害が大きかった南三陸町より、地震学・災害情報・防災教育等を専門とする慶應義塾大学環境情報学部 准教授・大木聖子氏の研究室のフィールドワークに同行させていただき、その様子を中継しました。

 市民へ防災行動を促すためのハザードマップが実は逆効果になっていることが研究により判明。では、「どのように活用すれば、防災行動へ移すことができるか」について、同じく同行した夏野剛氏と語った。


ハザードマップは逆効果?

大木:
 ハザードマップって地図を黄や赤に塗るじゃないですか。赤い地域に住んでいる人は地図を見て「危険だ」と思っているけど、そう思っているだけで防災行動を何も起こしていないということがわかったんです。黄色い地域に住んでいる人にハザードマップを見せると「なんだ、うちは安全な方じゃん」と言って、防災行動を起こさなくていいという判断になるという。

 つまりハザードマップで危機感を与えてもどのみち行動には移せていないし、黄色い人にとってはそれをもらったことでかえって防災意識が下がるという。実際には黄色い地域でもそうじゃない地域だって、日本はどこでも地震は起こるわけで……というのを学会で発表しました。

災害の種類によってさまざまなハザードマップがあり、被害の予測規模によって地図が色分けされています。(画像はハザードマップ|国土地理院より)

夏野:
 ハザードマップの粒度が粗いんだよね。

大木:
 いや、粒度を細かくすればするほど、「ここまで津波が来るからうちは大丈夫」って言って……。

夏野:
 それもあるんですけど、不動産の価格に反映させるのが一番効果的で、そうすると途端に「そっちは安いとこじゃん」ってなるじゃん(笑)。

大木:
 (笑)

夏野:
 安いところに住んでいるのってみんな嫌なので、資産ができれば引っ越したいと思うんです。だからとにかく地価を下げていくっていうのがすごくよくって。ただこれに対しては実は住んでいる人が一番嫌がっている。「知りたくない」「知らなければいい」でもそれは一番よくないことだから、やっぱりハザードマップの粒度をあげて……。

ハザードマップを公開して嫌がるのは住民ではなく不動産屋だった!

大木:
 一番最初にハザードマップを出すときに是か非かってなったんですよ、住民が嫌がるだろうと。そしたら嫌がったのは住民じゃなくて“不動産屋さん”だったんだんですよ。住民は「どうせ危険だってわかっているなら教えてくれ」というふうに。

夏野:
 不動産屋さんって買い手に情報をあまり与えないで買わせちゃうのが一番得なので。買い手はすごく調べるので。買い手に対して一区画ごと、要は区役所とか市役所が持っている住宅地図のレベルでハザードマップを作ってあげると誰も手を出せない。

大木:
 そこまで細かいマップを作れる実力がまだ誰にもないっていう問題が……。

夏野:
 まあね……。粗くてもいいから一応、Google マップにオーバーレイ【※】すれば建物形状まで出るので、「粗いんだけどうちの地区全部赤じゃん」みたいな。そうすると全部そこの土地は地価が下がると、それがいい。

※オーバーレイ
重ねる、上に被せる

大木:
 東京とか一番下がりますよ?

夏野:
 全然いいよ! 東京も地層とか谷になってるところとか。渋谷あたりとかものすごい高低差があるんですよ。もうお金でやるしかないんですよ!

一同:
 (笑)

夏野:
 経済合理性に直結するから、そうすると手放そうとする人が出て、調べないで買う人が増えて、買った後に地価が低いことを知るとか。不動産って本当にインフォメーションアシンメトリー【※】の世界だから。

※インフォメーションアシンメトリー
情報の非対称性。市場において、買い手と売り手の間で互いの情報が共有できていない状態のこと。

大木:
 世界的に日本の地価が暴落しそうなんですけど(笑)。

夏野:
 世界的には……大丈夫! 日本の人しか買わなくなるだけだから。海外の人はマンション買うから大丈夫ですよ(笑)。

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