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本当は子供に見せられない『もののけ姫』。無防備なサンとアシタカに何があったのか問われた宮崎駿「わざわざ描かなくてもわかりきってる!」

 毎週日曜日、夜8時から生放送中の岡田斗司夫ゼミ。10月21日の放送では、日テレ系『金曜ロードSHOW!』にて26日に放送される、宮崎駿監督作品『もののけ姫』の解説が行われました。

 この中で、パーソナリティの岡田斗司夫氏は、本編を見る前に押さえておくべきポイントとして、カヤやサンといった女性キャラクターとアシタカの「大人の関係」にまつわる演出技法を、具体的なシーンの紹介を交えながら語りました。

岡田斗司夫氏

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女性視聴者から反感を買った『もののけ姫』のシーン

岡田:
 アシタカが村から追い出されることになった後、村の出口で、自分を慕う少女のカヤに呼び止められます。ここでカヤは「いつまでもお慕い申し上げます」と愛の告白をして、黒曜石で出来た小さなナイフをアシタカに渡します。アシタカはそれを受け取ると、メッチャイケメンな顔でニッコリ笑いながら「私もだ。いつまでもカヤを思おう」なんて言います。

 この「これからもずっとあなたのことを思います」というセリフはどういう意味かというと、「この先の生涯、あなたの他に誰とも恋をしません」という意味なんですね。そんなことを、黒曜石の小さなナイフを受け取ったアシタカは、爽やかに笑いながら言うんです。

 でも、女の人の中には、このシーンが嫌いというか「アシタカのこういうところが好かん!」と言う人がかなりいるんですよ。

 なぜかというと、アシタカは、女の子にここまで言われて、イケメンな感じで微笑んで、大切な黒曜石の小刀を受け取っておきながら、後でその大事な小刀を、事もなげに別の女の子にプレゼントするからなんですよ。カヤと同じ石田ゆり子が声優をしているもんだから、ついつい好きになっちゃったサンに(笑)。これについて「なんじゃこのアニメは!」と、お姉さま方は怒るわけですね。

 確かに、怒って当たり前なんですよ。物語のラストで「私も、また時々、お前に会いに来よう」「ええ。来て来て」みたいな感じで、サンとイチャついてる暇があったら、呪いはもう解けたんだから、生まれ故郷の村に戻って、カヤに会ってやれよ、と。

 そんな「アシタカのこういうところが許せない!」という、女性ライターの方の怒りの声が、ジブリの公式本である『ジブリの教科書』にすら書いてあるわけです。まあ、怒る気持ちはよくわかるんですけど。

「カヤとアシタカの別れ」に隠された意味

 実はこの、村の出口でカヤに呼び止められるシーンというのは、そういう意味ではないんですよね。ここでの描写は、全て“象徴”に過ぎないんですよ。

 ここが『もののけ姫』を作る時に宮崎駿が取った「必要なことは全て描くけども、わかるようには描かない」という部分なんですね。

 村の外れに、夜中、女の子が偲んで会いに来て、そして「自分は生涯、恋をしない」=「貞操の印」というのを男に手渡したわけです。これ、どういう意味かというと2人は人目を偲んでセックスしましたっていう意味なんですね。だけど、宮崎さんは、そんな直接的なセックスシーンを描きたくないので、わざわざ「私はいつまでも貞操を守ります」という言葉と、小刀を渡すことによって、それをメタファーとして表現しているんです。

 本当は、ここでカヤとアシタカは、人目を偲んでセックスしている。だから、カヤの中には、ちゃんとアシタカの血筋が残ることになり、そうやって生まれたカヤとアシタカの子孫たちが、オープニングで映される土面の紋様として“アシタカ王の伝説”を語り伝えていくという話になっているんです。

 でも、宮崎さんって人一倍恥ずかしがり屋だから、こういうことを誰にでもわかるように描かないんですね。

本編内に隠されたもう一つの性描写

 これとは違う、もう1つセックスにまつわるエピソードが『もののけ姫』の中に入っているんです。それが、怪我を負い、サンに看病されたアシタカの傷が治って、何日も寝たきりだったところから起きるというシーンです。

 サンの暮らす岩屋の中で、アシタカは寝ているサンを見つめているんですけど。この時のサンは、かなり無防備な寝顔で寝ていて、おまけに脚も見えているんですね。このシーンのコンテを見てピンと来た鈴木敏夫は、「この時点で、2人はセックスしてますよね?」と聞いたそうなんですよ。

 宮崎駿って、こういうふうに作品について何かを聞かれた時には「いや違う」とか、「そうです」というふうに、絶対に何か答えるんですけど。この件に限っては、宮崎駿は一切答えようとしなかったそうです。そんな話を、鈴木敏夫はすごく嬉しそうにラジオで語っています。

 ちなみに、その後、鈴木敏夫が問い詰めた結果、宮崎さんは「そんなの、わざわざ描かなくてもわかりきってるじゃないですか!」って言ったそうなんですけど(笑)。

『もののけ姫』における宮崎駿の演出技法

 宮崎駿が『もののけ姫』で取った表現技法というのは、こういうものなんですよ。「女が夜中に男に会いに行った」というだけで、アシタカやカヤの部族では「関係があった」とみなされるわけですね。

 おまけに、カヤはそこで「私も連れて行って!」とは言わないし、アシタカが出ていくことに関してもグズグズ言わない。それはなぜかというと既に2人はセックスしていて、彼女は子供を貰っているからだという意味なんです。

 アシタカの血筋はこの村に残り、カヤがそれを受け継ぐ。つまり、宮崎駿に言わせれば「このシーンを見ておいて、そんなこともわからないようなヤツは、そもそも俺の映画はわからねえよ!」ということなんですね。

 ……「そんなもん、わかるはずがあるか!」と(笑) 僕も、この映画が公開した時、何度も映画館で見たけどわからなかったですし、その後、VHSで見てもわからなかったし、DVDで見てもわからなかったです。

 今回、この企画用にBlu-rayで見た時に、初めて「ああ、そういうことか」ってわかったんですよ。それも、あらかじめ、鈴木敏夫がラジオで語っていた「サンとアシタカはちゃんとセックスしている」という話を聞いた上で、このシーンを考えて、やっと気がつくことが出来たんです。

 これが、『もののけ姫』を作る際に宮崎駿が取った「必要なことはちゃんと描く」という、それまでの作品とは違った作り方なんです。つまり「こういう部族で、別れの夜に、男女が会っているということは、もう関係があったということだ」と。そんなふうに「関係があった」という事実はちゃんと描きたい。しかし、それを“表現”することはしたくないという、宮崎駿の描き方なんですね。


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