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知れば知るほど深い『もののけ姫』の秘密――「モロが人間を嫌いなはずがない」宮崎駿がセリフ以外で描いたアシタカとモロの関係を評論家が解説

 毎週日曜日、夜8時から生放送中の『岡田斗司夫ゼミ』。10月28日の放送では、宮崎駿監督作品である『もののけ姫』解説の第二弾が行われました。

 パーソナリティの岡田斗司夫氏は、この中で「タタラ場を仕切るエボシ御前の秘密」や、「もののけ姫と呼ばれたサンは、実はエボシ御前の娘だった?」といった様々な説を展開しつつ、もののけ姫たちの暮らしている不思議な住居から、サンの育ての親である山犬モロの正体と、彼女が森を荒らす人間たちに対してどのような感情を抱いていたのかを解説しました。

岡田斗司夫氏

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もののけ姫達が暮らす不思議な住居の秘密

岡田:
 映画が始まってから1時間をちょっと越えた辺りに「傷を負ったアシタカが、モロ達のねぐらで目覚め、外に出る。すると、ねぐらの上に座っていたモロから話しかけられる」というシーンがあります。

 ここで、モロ達の暮らしている住処が出てくるんですけど。単なる山犬が住んでいるにしては、ちょっと不思議な感じの場所なんですよね。

 このモロのねぐらは、全てが岩で出来ています。それも、床、天井、壁が、それぞれ巨大な1枚岩で出来ていて、床も天井も水平なんですね。その上、横の壁もほぼ同じ角度に傾いています。

 次のカットでは、この不思議な岩で作られたねぐらの全貌が見えます。見て分かる通り、完全に1枚板の水平な岩が上に乗っていて、それを両側の岩が支えている。床の部分も張り出して、ベランダ状になっているんですよね。

 これと同じ形のものを、どこかで見た気がするんです。その答えは、大阪にあります。大阪府の交野市にある磐船神社の“天岩戸”です。これが、まあ、そっくりの構造をしているんですよ。

 だからといって、「別にサン達が暮らしていたのは大阪だ!」と言うつもりはないんですよ。そうではなく、これは“巨石文明の遺跡”なんです

 前回にも話した通り、アシタカが、もともと暮らしていた村も、青森の方にほんのちょっとしか遺跡が残っていないような“巨石信仰”のある村でした。縄文人達は、こういった巨大な岩みたいなものを、御神体として神様のように祀っていたと言われています。つまり、アシタカ達の集落というのは、そういった巨石文明の末裔なんですね。それに対して、モロがねぐらにしている場所はというと。

 劇中では何も解説してくれていないんですけど、こんなに水平な床や天井、全く同じサイズの岩で両側を支えていて、その上に水平な岩が乗ってるような洞窟なんて、自然状態で生まれるはずがないんです。これはもう、普通に考えたら巨石文明における神様の座である“石座”(いわくら)みたいなものなんですね。

かつての神である山犬モロは“忘れられた神殿”に住み続けている

 つまり、どういうことかというと、モロのねぐらは古代人の神殿なんですよ。古代の巨石文明の時代、日本には“本当の神様”が住んでいたんです。モロ達のような一族というのは、巨大な獣であり、おまけに人の言葉を話すことが出来たので、古代人達から崇められていた。つまり、本当の神様だったわけです。なので、神殿を作ってもらって、そこで祀られていたんです。

 しかし、今や、そんなモロの神殿には、誰もお詣りに来ない。これこそが「森が死んでいく」という言葉の意味なんですよ。

 にも関わらず、モロは今でもここに住んでいるんです。

 なぜかというと、モロは“犬の神様”だからです。犬というのは、人類にとって、一番古く、一番忠実な友なんですよ。そんな犬の神様だから、もう誰も訪れなくなった神殿に、今もなお、誰かが帰ってくるのを待ちながら、ずっと住み続けてくれているんです。

 これがわかった時、僕「うわーっ!」って思って、もうマジで、金曜ロードショーを見ながら涙が出そうになったんですけど。

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